太田述正コラム#915(2005.10.19)
<ガーディアンの靖国神社ブログ(その1)>
(昨夜遅くから本日にかけて、急にメーリングリスト登録者数が増えたのですが、一体どうしたのでしょうか。)
1 始めに
小泉首相の靖国神社参拝を受け、英ガーディアン紙が17日に靖国問題に関するブログ(http://blogs.guardian.co.uk/news/archives/2005/10/17/not_bowing_to_pressure.html)を立ち上げ、活発な議論が展開され始めていたのを見て、私も今まで何回か投稿をしました。
私はおよそ今まで、掲示板的なものに投稿をしたことがないので、初体験を楽しんでいます。
そこで、私の投稿を中心に、どんな議論が行われているのか、ご紹介したいと思います。
(靖国問題に関心があって英語のできる方は、直接このブログ全体にざっと目を通されることをお勧めします。)
2 私の投稿(邦訳)
(1)一回目の投稿
靖国神社は、連合国によって処刑された人々を含め、戦死者を称えているところです。
日本国民の総意に基づいて行動した指導者達も処刑された人々の中に含まれています。
日本は、第二次世界大戦の期間中を通じて機能していた民主国家であったことを思い出してください。戦死した人を含め、成人男子は国会議員を選ぶ一票を各人が持っていたのです。
従って、日本のいかなる市民であれ、その信仰の自由を行使して、靖国神社を訪問してこれらの人々に敬意を払うことは、しごく自然なことと言うべきでしょう。
こういうわけですから、中共が小泉さんのこの神社訪問を非難するのはばかげています。なぜなら、中共には民主主義も信仰の自由もないのですから。
また、韓国による非難は、日本による朝鮮半島の植民地化に対して、この機会をとらえて文句を言っているだけのことです。
(2)二回目の投稿
Seymourさん。誤解のないように申し上げておきますが、私自身は靖国神社を訪問することは余り気乗りがしません。
それはそれとして、あなたは、第二次世界大戦に参戦した国は、全て戦争犯罪を犯したということを認識されるべきでしょう。
残念なことに、基本的に勝者の側だけが第二次世界大戦中に、敗者の側の戦争犯罪人または無実な人間を、正義の名の下で復讐のために処刑したのです。
いずれにせよ、客観的に申し上げれば、計画的かつ組織的な民間人の殺戮は、米国に比べて日本ははるかに少ししか行っていません。<米国は、>1945年3月の東京の戦略爆撃で10万人の民間人を殺害し、広島と長崎には原爆を投下した、という例を挙げるだけで十分でしょう。
もっとも日本も米国も、ナチスドイツがユダヤ人に対して行ったようなジェノサイドは行っていないという点は救いです。
(3)三回目の投稿
Seymourさん。<日本が米国に攻撃をしかけたとおっしゃいますが、>イラク戦争はどうなのです?サダム・フセインは米国か英国に攻撃をしかけましたっけ?米国側が最初に攻撃したことははっきりしていますよね。
だからどうだと言うのですか。
<イラク戦争開戦にあたって>米国はいくつかの国連安保理決議を援用しようとしましたが、うまく行きませんでした。
しかし、仮にそれが1941年のことだったら、米国のやったことは自衛権の発動として、私も全面的に支持することでしょう。
まさに、それを日本は1941年に<米国に対して>やったのですよ。
ところで、あなたはいわゆる太平洋戦争について、奇妙だと思いませんか。
米国はファシスト(でかつ腐敗していた)中国国民党、中国共産党、そして共産主義のソ連とぐるになって民主日本に勝利したわけですが、その結果と言えば、米国はそれまで日本がやってきたこと、すなわち、北東アジアにおいて、中国国民党を相手にせず、中国共産党や共産主義のソ連と対決するということ、をそのまま続ける羽目に陥ったのですから。
となると米国は、毛沢東の下での数百万人の農民の死、朝鮮戦争による荒廃、そして金王朝下の北朝鮮の人々の悲惨な毎日、について責任がある、ということになるのではないでしょうか。
(4)四回目の投稿
LarryUSさん。日本政府は、植民地支配の歴史と兵士が犯した戦争犯罪について謝罪したのです。米国・英国・フランス・オランダ等もこれに倣うべきでしょう。
どうして欧州諸国や米国は日本が戦争犯罪者を称えることに対し沈黙(許容)しているのかですって?
それは、戦争を企画し実行する者は戦争犯罪者ではないからです。にもかかわらず、連合国は彼らを戦争犯罪者として処刑しました。これが米国等が沈黙を保っている理由だと私は思っています。
LJPさん。あなたに、米国がフィリピンを植民地にする際に数十万人に原住民を殺害したことや英国がインドを統治している間に数百万人の人々を餓死させたことを思い出して欲しいものです。他方、日本が朝鮮半島と台湾を統治してい間には、ただの一人も餓死者は出ていません。
Sho-chanさん。連合国の軍事法廷で有罪とされたすべての日本の人々は、日本が主権を回復した直後に、日本の国会で、一人の反対票もなく赦免されていることを知ってください。彼らや彼らの家族はそれ以来、恩給を給付されています。
LJPとJGさん。私自身は靖国神社に行くことに余り気乗りはしないということを再度申し上げておきます。しかしながら私としては、この神社に行くことに対し、非論理的な、あるいは間違った反対がなされることは放置できないのです。
(最後に小さなことかもしれませんが一言。小泉さんはこの神社に若いときから訪問を繰り返してきています。ですから、彼がたまたま首相になったからといって、その信仰の自由を奪われて良いはずがありません。中共は単なる閣僚だったらご自由にこの神社を訪問してよろしい、と言っています!)