太田述正コラム#1086(2006.2.19)
<今年中にも対イラン攻撃か(続)(その2)>
3 攻撃計画
1月28日、イラクの革命防衛隊の司令官は、もしイランが武力攻撃を受けたら、ミサイルで反撃すると言明するとともに、英米がイラン国内の叛乱分子を支援していると非難しました(注4)。
(注4)1月24日には、イランのクゼスタン地方のアフワズ(Ahwaz)で爆弾が爆発し、8人が死亡している。
イランのシャハブ3(Shahab 3)ミサイルの射程は1,200マイル以上あり、イスラエルや湾岸地域及びイラク内の米英軍の基地はすべて一応射程圏内にあります。
なお、革命防衛隊はイラン国防軍と並列の軍事組織であって、イランの最高指導者のハメネイ師(Ayatollah Ali Khamenei)の直接指揮下にあります。
(以上、http://www.nytimes.com/2006/01/29/international/middleeast/29iran.html?pagewanted=print(1月29日アクセス)による。)
こうした中、ワシントンのシンクタンクのhttp://www.latimes.com/news/opinion/commentary/la-oe-luttwak10feb10,0,4441945,print.story?coll=la-news-comment-opinions。2月11日アクセス)
multinational empire)であってかつてのソ連と似ている。しかし、ソ連ではロシア人が多数を占めていたが、イランではペルシャ人は半数ちょっとしか占めていない。
そして、イランでは、ペルシャ人だけはイランに強い愛着を持っているものの、その他の民族はペルシャ人が支配的なイランにほとんど愛着を持っていない。
東に居住するバルーチ(Baluch)(人口の2%)、西(クゼスタン地方)に居住するアラブ(3%)、北西に居住するクルド(9%)の間では、叛乱ムードが燻り続けている。
これらの少数民族は、いずれも核施設への空襲を歓迎するだろう。
ただし、少数民族とは言っても、トルクメン(Turkmen。2%)ラー(Lur。2%)やギラキ・マザンダラニ(Gilaki・Mazandarani。計6%)は、ペルシャ語の方言を用いていることから、ペルシャ人寄りの可能性がある。
しかしもう一つ大きな少数民族がいる。ペルシャ系だがトルコ語を用いている北のアゼリ(Azeri)だ。テヘランに居住するアゼリの多くはペルシャ人に同化してしまっているが、北に行けば行くほどそうではない。国境のすぐ向こう側のアゼルバイジャンがソ連から独立してからというもの、アゼルバイジャンを自分達の祖国だと思うアゼリが増えている。
これに加えて、イスラム革命以来のシーア派原理主義にその他の宗派の人々が辟易しているという現状がある。
バハイ・キリスト・ユダヤ・ゾロアスター各教の信者は、全部併せても人口の2%を占めるのみだが、人口の9%を占めるスンニ派は無視しがたい。何と言っても、100万人ものスンニ派が居住するテヘランで、専用のモスク一つつくることさえ認められていないのだから。
2月13日には、英国のブラッドフォード大学のロジャース(Paul Rogers)が、概要次のような論考(http://www.taipeitimes.com/News/world/archives/2006/02/14/2003292995。2月15日アクセス)を出版しました。
米国かイスラエルがイランの核施設を突然空襲したならば、イランの軍人の死者は数千人、民間人の死者は少なく見積もって数百人と予想される。
これは、イランの核施設が人口密集地に多く設置されていること、核開発の技術的支援部門やミサイルのインフラ部門も攻撃する必要があり、これらの施設(工場)がやはり人口密集地に多いからだ。
空襲の対象となるのは、テヘランの研究用原子炉・ラジオアイソトープ生産施設・各種核関連研究所・カラエ(Kalaye)電力会社のほか、イスファハン(Isfahan)とナタンツ(Natanz)にある施設や、ブシェール(Bushehr)に建設中の原子炉だろう。この最後の原子炉は2006年に完成するが、それから空襲したのでは、イラン内はもちろん、湾岸諸国やサウディの湾岸一帯が放射能で汚染されてしまいかねないので、やるとしたら、それまで、ということになる。
空襲は、同時並行的に一挙に実施され、それにより、できるだけ多数の技術者を殺害しようとするだろう。
イランの防空能力は弱体であり、かかる大規模空襲に対処するすべはないだろう。
4 所見
一体、イランの核施設の武力攻撃はいつ頃になり、また、それを実施するのはイスラエルか米国か、はたまた両国の共同でということになるのか、その場合、シャハブ3は発射されるのか、更にその場合、米英軍とイスラエルの対ミサイル防衛がどの程度功を奏するのか、いずれにしても、イランの人々には大変お気の毒ながら、われわれとしては、興味津々高見の見物をする機会がそう遠からずやってきそうですね。
(完)