太田述正コラム#11032006.3.3

<中共経済の脆弱性(その3)>

 (中共内の経済格差について、最新の国連開発計画報告に基づいて補足しておく:中共の都市の住民は平均年1000米ドルの所得があるが、農村の住民は平均300米ドルの所得しかない。都市の住民は農村の住民より平均寿命が5年以上長い。北京・上海・天津等の主要都市の住民の識字率は97%以上だが、チベットでは約半分に過ぎないし、女性の文盲率は男性の2倍以上に達する。http://www.atimes.com/atimes/China_Business/HA05Cb06.html。1月5日アクセス))

5 経済の異常性のよってきたるゆえん

 カーネギー国際平和財団のペイ(Minxin Pei)は、以上のような中共経済の異常性は、共産党支配とコインの裏表の関係にあるエセ資本主義(crony capitalism)の必然的帰結である、としています。

 私に言わせれば、中共は、カースト的な、共産党員・都市住民・農村住民、の三つの階級からなっています。

 7000万人の共産党員(http://www.epochtimes.jp/jp/2005/05/html/d72469.html。3月2日アクセス)、5億人弱の(共産党員以外の)都市住民、そして約7億5000万人の(共産党員以外の)農村住民(注4)(http://searchina.ne.jp/business/005_002.html、及びhttp://www.president.co.jp/pre/20020930/001.html(どちらも3月2日アクセス))です。

 この共産党員からなる中国共産党が、中華人民共和国(中共)政府そのものであることはご承知のとおりです。

 (注4)中共では人は原則出身地(戸籍のある場所)にしか住めず、両親が別の戸籍である場合には、原則母方の戸籍となる。戸籍を変えることも原則できない。だから、農村住民と都市住民は隔離されている、と言える。1980年代末には、農村住民75%・都市住民25%だったが、現在ではそれぞれ60%弱、40%強となっている。

 2003年のデータを見ると、政府は、第一に固定産業資産の56%をコントロールし、第二に最重要産業である金融サービス・銀行・テレコム・エネルギー・製鉄・自動車・天然資源・運輸各産業において、内外民間企業に対する侵入障壁を設けることによって独占的プレヤーあるいは支配的プレヤーとして君臨し、第三に長期銀行融資や土地利用の認可を通じてほとんどの投資プロジェクトについて実質的な決定権を持っています。政府は、規制が廃止された醸造・卸売・繊維産業においても強い影響力を持っていて、66の株式会社携帯の卸売企業のうち、民間企業は1つだけですし、そもそも国内外の証券取引所に上場している1520の中共企業のうち民間企業は40だけしかありません。

 党は、国有企業のトップの81%と上級幹部全員の56%を任命します。そして任命される者の多くは党員です。2001年のデータによれば、6275の大中規模の国有企業で株式会社化したものの70%において、当該企業の党委員会メンバーが取締役会のメンバーを兼ねています。結局、2003年のデータによれば、530万人(全党員の約8%、そして都市住民たる党員についてはその約16%)の党員が国有企業の幹部の職に就いているのです。

 また、民営化された国有企業の60%は、旧経営陣に売却されており、そのため、民間企業のオーナーの30%は党員です。

 こんなことだからこそ、世銀の調査によれば、1999年から2000年にかけての中共での投資に係る意志決定の三分の一は不適切なものだったということになるわけですし、銀行には不良債権の山が築かれるわけですし、鉄鋼産業等が軒並み過剰生産設備を抱え込むことになってしまうわけです。

(以上、特に断っていない限りhttp://www.foreignpolicy.com/story/cms.php?story_id=3373&print=1前掲による。)

(続く)