太田述正コラム#11332006.3.19

WBC・米韓での反響(その3)>

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

――その後の米国メディアと朝鮮日報の報道ぶり――

 WBCについて、ロサンゼルスタイムス電子版が、18日付で掘り下げた記事(http://www.latimes.com/sports/la-sp-wbc18mar18,0,1106125,print.story?coll=la-story-footer。3月19日アクセス)を掲載しました。

米国に有利な仕組みやルールについては、一言も触れていませんが、WBCが興行としては成功であったとしています。アメリカンフットボールやバスケットボールに人気の点で後れをとりつつある野球に対する関心を、中南米系米国人等参加国系米国人の間の野球人気の喚起や、海外における野球人気の喚起を通じて回復するという目的が達成できそうだ、というのです。

19日付の朝鮮日報の日本語電子版は、WPC一色と言っても良い感じです。

韓国の健闘の理由については、日本のプロ野球と米国のメジャーリーグで韓国人選手がプレーし、それぞれの野球の良いところを吸収して韓国に持ち帰った(http://japanese.chosun.com/site/data/html_dir/2006/03/18/20060318000025.html、及びhttp://japanese.chosun.com/site/data/html_dir/2006/03/18/20060318000023.html。どちらも3月19日アクセス)ことが挙げられています。

日本と比べて韓国では野球プレー人口が極めて少ない(http://japanese.chosun.com/site/data/html_dir/2006/03/18/20060318000026.html。3月19日アクセス)にもかかわらず、ここまで健闘できるまでになったのですから、トリノ冬季オリンピックでの好成績もそうですが、韓国人の運動能力の高さに改めて驚かされます。

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

19日の決勝トーナメント(準決勝)における日韓の対決の結果は、三度目の正直というか、日本の快勝(6対0)に終わりましたhttp://www.mainichi-msn.co.jp/sports/pro/06wbc/news/20060319k0000e050039000c.html。3月19日アクセス)が、WBCにおける日韓両国の健闘を、日韓二カ国、更には日韓台三カ国、旧大日本帝国諸国の相互理解と友好の一層の増進の契機にして欲しい、と切に願っています(注5)。

5日韓「台」と言ったのは、日本チームの監督が台湾籍の王貞治氏(http://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%8E%8B%E8%B2%9E%E6%B2%BB。3月18日アクセス)だからだ18日付の台北タイムス(英語紙)電子版は、AP電のWBC記事を掲載するにとどまっており、残念ながらこれまでのところ、王監督の「活躍」について触れた記事は掲載していないが、王監督は、サッカーの日本代表を率いるブラジル人のジーコ監督の場合とは異なり、生まれも育ちも日本であって、人生のすべてを日本で送っており、それでいて、自分自身も元日本人の奥さんも、そして子供達も台湾国籍だ。王監督は、まさに日台間の架け橋というべき存在だ。

WBC参加国チームには、キューバを除けば、必ず現役か元のメジャーリーガーがいますが、日本のプロ野球の現役や元の選手もいるのは韓国チームだけです(典拠省略)。しかも、韓国チームの野球は、日本の野球同様の守りの野球です(注6)。

(注6)朝鮮日報は、韓国の野球人は、「米国では自発的な訓練を、日本では顕微鏡をのぞくかのような分析野球を、まるでスポンジのように吸収していった」(http://japanese.chosun.com/site/data/html_dir/2006/03/18/20060318000023.html上掲)と指摘している。

米国チームの敗軍の将であるマルティネス監督も、「米国<は>・・投手を中心に基本に忠実な守りの野球をする韓国や日本を見習う必要がある」(http://www.mainichi-msn.co.jp/sports/pro/06wbc/news/20060319k0000m050109000c.html。3月19日アクセス)と語っているように、日韓両チームの活躍は、日本的野球の長所が発揮された、と受け止めつつ、そんなことは胸中にしまって、ここは一つ、日本人みんなで大いに韓国の健闘を称えたいものです(注7

 (注7)韓国を訪問した福田康夫元官房長官と中曽根康弘元首相らに対し、3月16日、韓国の盧武鉉(ノ・ムヒョン)大統領が、小泉首相の靖国参拝を改めて批判しつつ、靖国神社の展示施設「遊就館」について「周りに止められたが、実際に行ってみたいと思っている。日本側が承知してくれれば行きたい」と述べた(http://www.asahi.com/politics/update/0316/008.html。3月17日アクセス)ことは、もっと注目されてしかるべきだ。

     このノ発言について、小泉首相は「ぜひとも行っていただきたいですね。歓迎しますよ」というピンボケのコメントをしている(http://www.asahi.com/politics/update/0317/012.html。3月18日アクセス)が、ノ発言の真意は、「遊就館」(コラム#698919920)の展示内容の見直しか、「遊就館」の靖国神社からの切り離しだろう。そうすれば、小泉後継の靖国参拝を受忍する、と婉曲的に言っているのだ。後継と目される安部晋三官房長官や、靖国神社当局の適切な対応が望まれる。

(完)