太田述正コラム#11382006.3.22

WBC・米韓での反響(完結編)(その2)>

 ここで、ご参考までに、英BBCの報道ぶり(http://news.bbc.co.uk/sport2/hi/other_sports/baseball/4828204.stm)も紹介しておきましょう。

 BBCは、日本の優勝と決勝戦の試合経過、そしてイチローのWBCにかけた熱い思い、更には日本の野球ファンの喜びの声等をていねいに報じた上で、最後をキューバチームの監督(Higinio Velezの次のような言葉で締めくくっています。

 「このキューバ・日本戦は歴史に長く残ることだろう。これは最初のWBCのしかも最終戦だからだ。それに日本が勝ったことにわれわれはおめでとうと申し上げたい。彼らのプレーぶり、勇気、そして試合運び(the type of game they playedは、まさにおめでとうという言葉にふさわしい。」

 ロサンゼルスタイムスの取り上げ方にはやや違和感を感じるものの、ロサンゼルスタイムスやこのBBCが報じたところの、試合終了後のキューバチームが日本チームを祝福したという話が、ざっと見たところ日本のメディアの電子版に見あたらないのは残念です。

3 韓国

 朝鮮日報の英語電子版では、22日には、WBC関係の記事はほとんど姿を消したのに対し、日本語電子版では、依然沢山の記事が掲載されています(注3)。

 (注3)日本語電子版は早朝更新されるが英語電子版の更新は夜であることからも、朝鮮日報が日本語電子版に力を入れていることが分かるが、どうやらこれは、在日の読者を当て込んでいるためらしい。英語電子版にはほとんど広告が載っていないのに、日本語電子版には、広告が沢山載っており、しかも広告主は日本の企業ばかりだ。いずれにせよ私は、抽選日報のホンネは日本語版ではなく、英語版にあらわれると見ており、今後とも英語版中心の講読を続けたい。

まず英語版ですが、22日朝の時点では掲載されていたけれど、既に削除されている記事があります。

サッカーのワールドカップ並にWBCを扱い、準決勝に進んだだけで、選手全員の徴兵義務を免除したことに対し、不公平だとして陸上競技の選手等から抗議の声が挙がっていることを報じる記事(http://english.chosun.com/w21data/html/news/200603/200603210010.html。3月22日アクセス)です。

次に日本語版ですが、沢山の記事から三つだけご紹介しましょう。

まずWBCそのものに関する記事です。

「野球の辺境韓国は母国米国、アジアの盟主日本を負かし、中心部まで進軍した。韓国は今大会を通じて世界野球の潮流に触れたほか、位相を向上させた。それでは、ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)が韓国野球に残したものは何だったのか。大きな収穫はスモール・ボール(small ball)だ。読んで字のごとく小さな野球、基本に充実な野球が功を奏した。手堅い守備、安定感のあるマウンド、機動力、相手の弱点に付け込み、チームプレーを重視するスタイルだ。これまでスモールボールはつまらない野球、スケールの小さな野球と見下されてきた。しかし、集中力を生かし、チャンスをものにする野球のスモールボールは、野球の版図を塗り替えた。韓国や日本など細かなプレーに強い国がいい印象を与えた。これに反し、これまで米国が誇ってきた伝統的な野球は徹底的にくだかれた。米国をはじめ大リーグの選手たちが主軸をなしたメキシコ、ベネズエラ、プエルトリコは最後まで混乱が続いた。」(http://japanese.chosun.com/site/data/html_dir/2006/03/21/20060321000019.html。3月22日アクセス)

これは、韓国中心的偏向がありますが、何のことはない、日本流の野球が米国流のベースボールに勝利した、と言っているわけです。

前述のようにサンフランシスコクロニクルも「スモールボール」という言葉を使っており、また朝日新聞(http://www.asahi.com/sports/update/0321/205.html)も、「足や小技を使って相手を攻略する「スモール・ボール」というキャッチフレーズを、王監督は<WBCに臨むに当たって>いったん掲げ、すぐに打ち消している。「選手が窮屈になってはいけない。ストロング・アンド・スピーディーでいこう<。しかし、実際に王監督がやったのはやはりスモールボールだった。>」というエピソードを紹介しているところを見ると、日本流の野球のことを意味するらしい「スモールボール」という言葉は、以前から世界の野球関係者の間で使われていたようです。

そして日本に関する二つの記事です。

「日本はメジャーリーグなど世界各国のプロスターが参加した今大会に優勝し、名実共に世界一となった。」(http://japanese.chosun.com/site/data/html_dir/2006/03/21/20060321000053.html

「<韓国チームの>金寅植(キム・インシク)・・監督は・・テレビでWBC決勝戦を視聴した後、「日本はもともと実力がある上に、今回は運まで伴い結局優勝した。8回で投手を代えるタイミングを逃し追撃を許したが、やはり立派な戦力を持ったチームだ」と感想を述べた。」(http://japanese.chosun.com/site/data/html_dir/2006/03/22/20060322000003.html

4 感想

 以上から、米国を代表するメディアとは言い難いサンフランシスコクロニクルの報道ぶりはさておき、米国のメディアと韓国のメディアは、今次WBCについて、そして日本の優勝について、対照的な見方をしていると言ってよいでしょう。

 言うまでもなく、韓国のメディアの見方は大方の日本人の見方とほぼ一致しているのであって、WBCのおかげで、こと野球に関しては日韓(そしてキューバ?)枢軸が形成されるに至った、と言っても良さそうですね。

(完)