太田述正コラム#12692006.6.1

<サッカーで日本ドイツと引き分け>

1 始めに

 スポーツがからきしダメな私の唯一の自慢は、東京千代田区の永田町小学校(既に廃校)6年の時、クロールの50m競泳で全校二番になったことです。カイロ時代に、長い夏の間、毎日のようにスポーティングクラブの屋外プールで泳いでいたおかげでしょう。

 カイロ時代に小学校の体育の授業で時々行われたサッカーの試合では、へたくそだったので、いつもボールに触れることさえできず、面白くない思いをしていましたが、一度だけ、敵のゴールの横に手持ちぶさたに立っていたところ、偶然ボールが自分の所にころがってきたので、足でちょっと触ったらゴールに入って誉められた、という経験があります。

 海外にいた期間が長く、小学校時代、キャッチボールすら一度もやらなかったこともあって、私は、野球にはほとんど関心はないのですが、ほんのちょっとはやったサッカーにはそれなりの関心があります。

 5月30日にドイツで行われた日本とドイツのW杯チームの親善試合での日本の健闘は、日独はもちろんですが、その他の国でも大きな話題になっています。

 今回はそのあたりをご紹介しましょう。

2 各国の報道ぶり

 練習試合とはいうものの、これが真剣勝負であったことは間違いありません。

 ドイツチームの反則すれすれのチェックによって、この試合後、日本チームから怪我人や休養者が4人も出たこと(http://www.mainichi-msn.co.jp/today/news/20060601k0000e050012000c.html。6月1日アクセス。以下同じ)がそのことを物語っています。

 その試合で、最新世界ランキング18位の日本が、前回のW杯に準優勝し、地元開催の利もあって今回も優勝候補のドイツに引き分けたのですから、大変です。

 ドイツの有力紙のフランクフルター・アルゲマイネ・ツァイツングの電子版は、当然、大きな記事(http://www.faz.net/s/RubC3501523C6F14E7489EB5D87354539E7/Doc~E63CDED4CD9A947E190F322D9AF4F4154~ATpl~Ecommon~Sspezial.htmlを、一面に見出しを掲げる形で掲載しましたが、注目されるのは、その同じ一面で、この試合で引き分けたことについて、読者の意見を選択肢の中から選んでもらう投票を行っている(http://www.faz.net/s/homepage.htmlことです(注)。

 (注)面白いのは、隣国の、これまたサッカー大国のフランスの有力紙フィガロの電子版が、一面でフランスのW杯チームについての記事の見出しを掲げておりながら、そのW杯特集ページにおいてさえ、この試合について完全に黙殺していることだ(http://www.lefigaro.fr/)。これは、後述する英国のメディアの対応とは好対照だ。

 ドイツが受けた衝撃の大きさが推し量れます。

韓国の有力紙である朝鮮日報でも、その日本語電子版で、きっちり「日本、金星のがす <ドイツ2?2日本>」という見出しの記事(http://japanese.chosun.com/site/data/html_dir/2006/06/01/20060601000009.html)を載せています。

しかし、何と言っても一番注目すべきは、英国のメディアの反応です。

 BBC電子版は、フランクフルター・アルゲマイネ・ツァイツング並の詳細な記事(http://news.bbc.co.uk/sport2/hi/football/world_cup_2006/5032108.stm)を掲げましたし、ガーディアンに至っては、ブログ(http://blogs.guardian.co.uk/news/archives/2006/05/31/host_of_problems.html#more)を開設してしまう、というはしゃぎぶりです。

 ドイツの鼻が明かされるとどうして英国は大喜びするのか、私のコラムの長年の読者であれば、よくお分かりですよね。

3 ガーディアンのブログの投稿から

 (1)イギリス人のホンネを示すもの

 「みんなそう思ってんだろうけど、万歳!」

 「日本は<W杯で>勝つだろうし、アンゴラも勝つかもしれない。結構なことじゃないか。うぬぼれているスタープレヤーだらけのチームが勝つより、目先が変わってずっといいや。」

 (2)ガーディアン読者の水準の高さを示すもの

 「アジアとアフリカからやってきた偉大なチームよ。・・日本とチュニジアが<W杯で>いい試合をすることは、これではっきりした。」

 「日本と引き分けたということは、ドイツチームが激しい練習をしてき<て疲れてい>たこと、そして日本が世界の一流チームであること、を示しただけのことだ。(高原は、今年に入ってからのイギリスの選手のどのゴールよりも素晴らしいゴールだった。)」