太田述正コラム#1295(2006.6.14)
<中共の恥部(その1)>
1 始めに
それが経済高度成長のひずみか、一党独裁制の弊害か、はたまた古来の病弊か、等々をぜひお考えいただきたいところですが、現在の中共の恥部をいくつかご紹介しましょう。
2 エゴイストの社会
(1)寄付をしない人々
米コンサルティング会社のマッケンジーが行った調査によれば、中共における慈善目的の寄付はGDPの0.05%に過ぎないことが分かりました。インドの0.09%、英国の0.82%、米国の3.94%に比べてその少なさは際だっています。
そもそも、中共は巨大な人口を擁しているというのに、実質的に活動している非営利団体の数は500から800しかありません。
中共の人も企業もカネをいくら儲けても他人には決して分け与えない、という考えのようです。
(以上、http://news.ft.com/cms/s/e40b443a-ec00-11da-b3e2-0000779e2340.html(6月4日アクセス)による。)
(2)知識人の堕落
中共の博士号保持者を対象に行われた調査によれば、その6割が、他人の研究成果を盗用したことがあり、同じく6割が、学術雑誌に自分の論文を掲載してもらうために賄賂を使ったことがあることが判明しました(コラム#1237参照)(http://www.taipeitimes.com/News/front/archives/2006/03/16/2003297586。3月17日アクセス)。
知識人がこの体たらくでは、平均的な中共国民の堕落ぶりはどれほどのものなのでしょうか。それとも、知識人の方がひどい、と見るべきなのでしょうか。
(3)忘れられつつある「孝」
中共では、介護施設に入っている80歳を超えるお年寄りは1%しかいません。
これに対し、米国では20%が介護施設に入っています。
これだけを見ると中共ではまだまだ「孝(filial piety)」の精神が生きているように見えます。
しかし、都市の住民を中心に、中共の親子関係は急速に希薄化が進んでいます。
このことを裏付けるのが、「孝」の精神を喚起するためのあらゆる方策が中共でとられていることです。
例えば、上海のある町会では、親の家を3ヶ月に1回以上訪問しない者の名前を掲示板に張り出すことにしましたし、同じく上海のある老人会は、親を支那の旧正月に自分の家に招待しない者に5米ドルの罰金を科することにしました。そして中共政府は、何と、親(義理の親に対するものを含む)に対する扶養義務を果たさない者は最高5年の懲役とする法律を制定したのです。
以上は賞罰の罰の方ですが、賞の方も盛り沢山です。
中共の各地では、親孝行を賞金付きで表彰することが大流行です。
このほか、中共政府のお声掛かりで、TVでは親孝行奨励広告が流れ、親孝行ドラマが何本も放映されています。
(以上、http://www.latimes.com/news/nationworld/world/la-fg-piety15apr15,1,6330960,print.story?coll=la-headlines-world(4月16日アクセス)による。)
親子関係の希薄化は、中国共産党のかつての儒教批判の成果なのか、文化大革命の「成果」なのか、一人っ子政策による核家族化のせいなのか、それとも単に中共社会が「近代化」したためなのか、あるいはこれらの複合によるものなのか、つまびらかにしませんが、中共の現在の老人向けの社会保障制度の不備が透けて見えるような話ですね。
(続く)