太田述正コラム#12972006.6.15

<中共の恥部(その2)>

3 荒涼たる国土

 (1)水不足

 現在、中共には農村部を中心に飲料水に困っている人が3億人もいます。また、全国の三分の二にあたる400都市が慢性的な水不足に悩んでいます。

 そもそも、中共には世界の水資源の7%しかないのに、人口は世界全体の21%もいるため、中共の一人当たり水資源は世界平均の四分の一程度であるところにもってきて、工場がどんどん増えるために水の消費と水質汚染が進み(注1)、かつ都市生活が水多消費型に切り替わりつつある一方で社会政策上水道代の値上げが抑えられているため、水不足の状況は深刻化するばかりです。

 (注1)中共の主要な河の40%は、ひどく汚染されていて工業用や農業用にしか使えない状況だ。

 そこで現在、水が余っている南部の揚子江から不足している北部へ3本の運河で水を運ぶ大国家プロジェクト(南水北調)が進行中であり、着工済みの東と中央ルートはそれぞれ2007年と2010年、そして最後の西ルートは2050年頃の完成を予定しており、最終的には黄河の水量に匹敵する年間448億立方メートルの水を運ぶ計画なのですが、中央ルートが取水する揚子江中部の水質汚染は甚だしく、運河の通過地域や到達地である北部地域における汚染の拡大が心配されている、という悩ましい状況になっています。

(以上、http://news.bbc.co.uk/2/hi/asia-pacific/4754519.stm(6月3日アクセス)、http://www.guardian.co.uk/china/story/0,7369,1648633,00.html20051123日アクセス)、及びhttp://www.sankei.co.jp/news/morning/25iti001.htm2005年6月25日アクセス)による。)

(2)土壌流出

 中共は、上述したように世界の21%の人口を抱えていますが、世界の10%の広さの耕地しか持っていません。

 その中共で、年間16億トンの上土(125,000平方kmの地域における厚さ1cmの土壌に相当する)が流失しています。この土壌流出は、中共全土の37%にあたる360万平方kmの地域で起こっているのです(注2)。

(以上、http://www.cnn.com/2005/TECH/science/12/27/china.soil.erosion.reut/index.html20051228日アクセス)による。)

(注2)その原因については、後述の砂漠化の原因とかなりオーバーラップする。

このままでは、中共が食糧の巨大輸入国に転落することは必至であると思われます。

(3)砂漠化

 この土壌流出の影響もあって、中共北部の中央部では、毎1,500平方マイル・・ほぼ米国のロードアイランド州の面積に匹敵・・のペースで砂漠化が進んでいます。

 このため、黄砂の砂嵐も毎年ひどくなってきており、北京等の北部の建物や道路を汚し、住民の健康を蝕んでいます。

 原因は、中共当局が1950年代末の大躍進政策以来推し進めてきた耕作地の拡大・森林伐採・灌漑・埋め立て、です。

 ですから、砂漠化を食い止めるためには、乾燥地帯につくった耕作地の放棄と入植者の撤退、そして南部の水を北の乾燥地帯に持ってくるためにつくった灌漑用水路の閉鎖が不可欠なのですが、中共当局はその決断が下せないでいます。

(以上、http://www.nytimes.com/2006/06/08/world/asia/08desert.html?pagewanted=print(6月9日アクセス)による。)

(続く)