太田述正コラム#1363(2006.8.2)
<イスラエルの反撃の均衡性をめぐって(続)(その3)>

 後からも述べるように、一般住民の大量死をもたらすような「誤爆」は、イスラエルの戦争遂行を困難にするので、イスラエル当局としては極力回避したいところでしょうが、ヒズボラを庇護するレバノンの一般住民に対するイスラエル兵士の怒りもまた想像に難くないところであり、彼らが未必の故意でもって一般住民に照準を合わせて射爆撃を行い、関係者同士でバレないように口裏合わせを行う、という可能性は否定できないのです。

4 対国連部隊攻撃もまた当然?

 (1)始めに
 またまたショッキングな小見出しをつけましたが、1988年に英国の国防省の大学校に留学していた時のことで鮮明に記憶に残っていることの一つが、イスラエルから来ていた同僚(陸軍大佐)から直接、国連や国連平和維持部隊に対する憎悪と軽侮の念を聞かされたことです。

 (2)イスラエルの「敵」国連
 国連がイスラエルのためになることを行ったのは、英領パレスティナを分割してイスラエル国家の建国を認めた1947年の国連総会決議181号が最初で最後です。
 この時は、エジプト・ヨルダン・レバノン・シリア・イラクがこの決議を無視して共同してイスラエルを攻撃しますが、イスラエルに返り討ちに遭います。
 それからというもの、国連総会は、アラブ諸国と第三世界諸国、それにソ連が結託して、イスラエルを一方的に非難する決議を繰り返します。(イスラエルを一方的に非難する安保理決議は、米国が拒否権を発動してきたため、成立していません。)
 その中でも最も悪名高いのが、1975年の決議3379号です。この決議は「シオニズムは人種主義・人種差別の一形態と決議する」というトンデモない代物
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A4%E3%82%B9%E3%83%A9%E3%82%A8%E3%83%AB%E3%81%AE%E6%AD%B4%E5%8F%B2
。8月2日アクセス)
であり、さすがに後年、決議4686によって無効化されています。
 またイスラエルは、国連では唯一、(アジア・グループに入れてもらえないため、)どの地域にも属すことのできない国であり、従って、地域ごとに選出される安保理非常任理事国等の選挙に立候補することができません。
 いかに、国連がパレスティナ側寄りであるかは、他に例を見ないところの、パレスティナに係る専門部局が設けられていること、パレスティナのための記念日が定められていること、パレスティナ専門の難民機関設けられていること、が挙げられるほか、総会の6つの委員会のうち、第4委員会が恒常的に約30%の時間をイスラエル非難に費やしていること、1956年に始まって以来、10回開かれた緊急総会のうち、6回がイスラエル非難に関するものである(注6)ことから明らかでしょう。

 (注6)100万人が虐殺されたルワンダ、200万人が死んだスーダンに係る緊急総会は一度も開かれていない。

 国連がいかに反イスラエルであるかは、国連全体の「世論」に忠実な言動を行わざるをえないアナン国連事務総長が、7月26日のイスラエル軍による南レバノンの国連監視所の「誤射」事件(オーストリア・カナダ・中共・フィンランドの兵士4人が死亡。後述)に対し、証拠もないのにただちに「明らかに意図的なもの」と断言したところに端的に表れています。

 (以上、特に断っていない限り
http://en.wikipedia.org/wiki/Israel_and_the_United_Nations
(8月2日アクセス)による。)

 (3)有害無益のイスラエル周辺国連平和維持部隊

(続く)