太田述正コラム#1392(2006.8.30)
<現在進行形の中東紛争の深刻さ(その12)>

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――ある読者(●●氏としておこう)とのメールのやりとり――

<●●>(2006/7/11に私のホームページで、下掲の内容でメーリングリスト登録)
  名 前:    ●●
  性 別:    男性
  年齢層:    50代
  住 所:    埼玉県

<●●>(翌7/12)
タイトル:有料購読を申し込み
 大田述正様へ
 戦後日本史の転換点に立って(その1??4)を拝見し、勉強しようと思い立ちました。1.有料購読を申し込みます。
2.●●と申します。
3.申し込み方法・支払い方法を御指示ください。
4.メール アドレスはxxxxです。
5.おまけも希望します。
 宜しくお願い致します。
 先日、有料購読を申し込み時に下記返信メールが届きました?
receiver: ohta@ohta.net
SERVER REPLY: 550 Unknown user

<太田>(同日)
 お申し込みありがとうございます。
 恐縮ですが、みずほ・三菱東京UFJ・三井住友、の三行の中から振込先を選択してください。
 会費半年分は5,000円です。
 また、特典のコラム・バックナンバー・テキストzipファイル(3.4MB以上)をご希望とお見受けしましたが、拙著「防衛庁再生宣言」(日本評論社2001年。サイン入り)(1,000円追加で、しかも宅急便送料受取人払い)の申し込みはされますか?

<●●>(同日)
 以下の件を御連絡します。
1.支払いはみずほ銀行を選択します。
2.バックナンバー・テキストzipファイルを希望します。
3.著書「防衛庁再生宣言」は専門的すぎるので見送ります。

 一言、本日のテレビニュースで、中国発表として、7月5日北朝鮮の日本海(ウラジオストク沖)へのミサイル発射事件当時、ロシア沖で米露軍事演習を行っていたそうです。本件情報を日本政府・自衛隊トップは事前に入手していたのでしょうか。ご存知ですか?
 宜しくお願い致します。                  

<太田>(同日)
 それでは、みずほ銀行本店(総合。要するに「普通」です)XXXXXXオオタノブマサに個人会費半年分の5,000円を振り込んでください。
なお、お振り込みの際、お名前の前に0123(会員番号です)をつけてください。
                          
追伸:ロシア沖で米露軍事演習という話は私は知りません。
 私のホームページの掲示板上で、問題提起してみたらいかがですか?
 蛇足ながら、「防衛庁再生宣言」がタイトル通りの中身だとしても(実はそうでもない)、「専門的すぎる」というお言葉は、いかがなものでしょうか。私のコラムを通じ、防衛問題が「専門的」なトピックではないことをご認識いただければ幸いです。

<太田>(翌2006/7/13にコラム#1342で下掲のように紹介した)
 昨日、「戦後日本史の転換点に立って(その1??4)を拝見し、勉強しようと思い立ちました」として、123番目の有料講読申し込みがありました。

<太田>(2006/8/29/1123)
タイトル:会費納入
 まだ、みずほ銀行に、会費5,000円を振り込んでいただいておりません。
 ご連絡をお待ちしています。

<●●>(同日1813)
 太田様のブログを呼んでいるときに、中東情勢・終戦マスコミ報道(敗戦が正しいのでしょうが)時期に接し、会員申し込みしましたが、今回はキャンセルとさせていただきます。
 理由は、
1.佐藤優氏(起訴休職外務事務官)、天木直人氏(元レバノン大使、ホームページ閉鎖)、太田述正氏(仙台防衛施設局長)の著書を読ませていただきましたが、優れた暴露本で終わっている(天木直人氏と太田述正氏の職を辞しての信念には敬服しております)。
2.しかし、省庁からの新しい情報が途絶えると、次の評論の興味が低下する。
3.評論家・著作業ならば、養老猛司・日下公人・木村剛・森永卓郎・宮崎学・植草一秀・副島隆彦(2年間程会員)・小室直樹・山根純(公認会計士・ライブドア決算書分析にて有名)・米長邦雄(棋士)・森田実・船井幸雄、etc、ご活躍されています。
4.来年の参議院選挙は民主党で出馬されるのでしょうか。
5.普段は共産党の死票ですが、今回は民主党に投票します。
6.理由は小沢民主党+アメリカ民主党の組み合わせで、極東アシアの戦争を回避できそうですから?

 今後さらなる活躍を期待しております。

<太田>(同日2053)
それでは、二ヶ月分の有料コラム購読料として、半年会費5,000円の三分の一相当額の1,667円を申し受けます。
 (貴殿が申し込まれた7月12日まで、有料コラムはありませんでしたし、今月末まで有料コラムの予定はありません。また、私の方から注意喚起申し上げなかったら、貴殿は少なくとも今月末には、まだ解約申し入れをされていなかったであろうと拝察します。)
 了解した旨のご返事をください。
 その上で、みずほ銀行の、以前お知らせした口座に上記金額を明後日までにお振り込み下さい。

<太田>(2006/8/30/1118)
タイトル:催告
 ご返事がありませんが、7月12日の、貴殿の会員番号を示し振込先の口座番号をお教えした私の貴殿宛てメールでもって、貴殿との間の有料購読契約は成立しています。
 かかる認識に基づき、それ以降、有料分も含め、コラムを貴殿に直送してきました。
 そこで、貴殿が契約を解除されるのであれば、解除は将来に向けてのみ効力を生じることから、それまで有効であった契約に基づき享受された利益の対価を私に支払っていただく必要があります。
 本日中に、以上について了解した旨のメールをいただけない場合は、7月11日以降本日までの貴殿とのやりとり(貴殿のメルアド及びお名前を含む)を、明日コラム上で公開させていただきます。

<●●>(同日1519)
 行き違いが有るだけですので、穏やかに対応願います。
1.下記メールを受信していましたが、有料送信と理解していませんでした。
mag2 ID 0000101909 mailmag@mag2.com
Nobumasa Ohta Office info@ohtan.net
Ohta ohta@ohtan.net
2.振り込みするまでは、契約開始と理解していませんでした。
3.盗み見する了見は、当初から有りません。

<太田>(同日1550)
 やれやれ、私のホームページ上のメーリングリストのほかに、まぐまぐでもメーリングリストに登録されておられたのですか。
 そして、この二本に加えて、毎日、もう一本有料読者用のコラムの配信を新たに受けていたにもかかわらず、それに気がつかなかった、とおっしゃっているわけです。
 いずれにせよ、あなたがこの三本ともロクに読んでおられなかったようであることは分かりましたので、1667円の徴収または貴殿のメルアド及びお名前の公表はやめましょう。 ただし、傑作な事例だけに、メルアド及びお名前は省き、貴殿とのこれまでのやりとりをコラムに掲載させていただきます。
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  ウ イスラエル軍の方にも問題はあったが勝利は勝利
 他方、ヒズボラも強かったかもしれないが、イスラエル軍の戦い方等にも問題があったという声もあります。
 今次レバント紛争、就中その北方戦域におけるイスラエル軍の戦い方等の評価に入る前に、ここで1973年の第4次中東戦争の時のことを振り返ってみましょう。
 あの時は開戦劈頭、エジプト軍はスエズ運河を渡り、シリア軍はゴラン高原を席巻し、無敵イスラエル軍のイメージは粉砕され、その後盛り返したものの、イスラエル軍は3,000人もの戦死者を出し、戦後、イスラエルではメイア(Golda Meir)首相もダヤン(Moshe Dayan)国防相も更迭されました。
 この戦争においてイスラエル軍の戦車を押し立てた反攻に、スエズ運河を渡っていたエジプト兵達が、逃げ隠れのできない砂漠で命を惜しまず勇敢に立ち向かったことは、アラブ世界の喝采を博したものです。
 しかし、実は第4次中東戦争は、1967年の第3次中東戦争を超えると言っても過言でない、イスラエル大勝利に終わった戦争だったのです。
 停戦となった時点で、イスラエル軍はカイロまで110km、ダマスカスまで30kmに接近しており、当時のサダト(Anwar Sadat)エジプト大統領もアサド(Hafez al-Assad)シリア大統領も大敗北であることを自覚し、二度とイスラエルと戦うべきではないという決意を固めたのです。
 だからこそ、サダトは1977年にイスラエルを訪問し、翌1978年にイスラエルと平和協定(Camp David accords)を締結したのですし、アサドも1974年にゴラン高原で完全に矛を収めてからというもの、イスラエルに開戦の口実を与えることのないように一切の挑発行動を控えるようになり、現シリア大統領であるアサド・ジュニアも、この父親の方針を蹈襲して現在に至っているのです。
(以上、
http://www.taipeitimes.com/News/editorials/archives/2006/08/29/2003325376
(8月30日アクセス)による。)
 今次レバント紛争の北方戦域に関しても、当時と同じような誤った議論が行われている、と認識すべきなのです。
 では、順次ご説明しましょう。
 北方戦域での戦いが始まってから、直ちに指摘され(
http://www.washingtonpost.com/wp-dyn/content/article/2006/07/18/AR2006071801379_pf.html
。7月19日アクセス)、しかも停戦に至ってもなお、最も声高に指摘されたのは、イスラエルが空爆に頼りすぎ、地上兵力の投入が遅れ気味でしかも小出しであったこと、そしてこれに関連して、リタニ川付近に空挺降下ないしヘリ輸送で地上兵力を運び、この兵力と国境を越えて北上する兵力によるヒズボラ挟み撃ち(pincer)作戦を行わなかったこと(
http://www.latimes.com/news/nationworld/world/la-fg-military13aug13,1,2138984,print.story?coll=la-headlines-world
。8月14日アクセス)であることはご存じの方が多いでしょう。
 まことしやかに、これは、たまたまイスラエル軍参謀総長に、史上初めて空軍出身者が就いていたからだ、という「分析」がなされたりした(
http://www.latimes.com/news/opinion/commentary/la-oe-boot16aug16,0,7702608,print.column?coll=la-news-comment-opinions
。8月17日アクセス)ものです。
 実際、イスラエルは最終局面で、3万人も地上部隊を投入して挟み撃ち作戦を開始したものの、多数の兵士の死傷者を出しつつも、時間切れで中途半端な形で停戦になってしまった観がある(
http://www.washingtonpost.com/wp-dyn/content/article/2006/08/18/AR2006081801160_pf.html
。8月20日アクセス)だけに、上記指摘は正しいように見えます。
 しかし、遺憾ながらこの指摘は的はずれです。
 前にも申し上げたように、イスラエルは、何年もかけてヒズボラ壊滅軍事作戦計画を練り上げてきており、それは4万5,000人もの地上兵力を使って上記挟み撃ち作戦を中心とする作戦計画だったのですが、ヒズボラによるロケット攻撃による死者が一日1??2人と予期していたより大幅に少なかったため、予定を変えて、空爆中心の作戦に切り替えたのです。
 このようにロケット攻撃のイスラエル一般住民殺傷効果が低かったのは、ヒズボラがイスラエルからの砲爆撃を警戒して、ロケットを徹底的に各所に分散配置したため、イスラエル領内の特定の目標に向けてロケットを一斉発射させることができなかったためです。このため、ロケット攻撃による死者の数は、北部戦域での一ヶ月間全体で、わずかに1回の自爆テロ攻撃による死者の数並にしかなりませんでした。
 これでは、数百人の兵士の死が見込まれる本格的な挟み撃ち作戦を実施に移すわけにはいかない、とイスラエル政府は考えたのです。しかも、これだけの犠牲を払ったとしても、ヒズボラ兵士は一般住民でもあることからヒズボラ兵力を全滅させることは不可能であることを考えれば、なおさらだったのです。
 (以上、台北タイムス上掲による。)
 では停戦直前の最後の駆け込み的挟み撃ち作戦は何のためだったのでしょうか。
 軍事的には全く意味がないけれど、イスラエル軍が部分的にはリタニ川まで達したという対国際世論的視覚効果をねらったものであり、停戦後にリタニ川以南の地域に国連平和維持部隊が展開することを国際世論に当然視させるためのものであったと私は考えています。
 もちろん、細かい点でイスラエル軍にもいくつか問題があったことは事実であり、次にそれらについてご説明しましょう。

(続く)