太田述正コラム#1835(2007.6.26)
<日本の新聞対私のコラム>
(28日までPR目的の即時公開コラムを続けます。)
1 日本経済新聞の論調
日本経済新聞の鈴置高史編集委員は、今年5月に、
「韓国は・・突然、親米国家から反米国家に変身した・・。決定的な要因は韓国と北朝鮮の関係改善だ。「北がいつ攻めてくるか」との懸念が薄れるのに伴い、韓国人にとって米国のイメージは「韓国を北から守ってくれる頼りがいのある国」から「韓国を無理やり戦争に巻き込む危険な国」へと転落した<のだ>。」(
http://www.nikkei.co.jp/neteye5/suzuoki/20070508n5a58000_08.html
。5月9日アクセス)と日経電子版に記しました。
また鈴置氏は6月にも、
「韓国の生存を保障してきた米国との軍事同盟。しかし、南北間の戦力バランスが大きく南に傾いたため、対北通常兵力に関する限りは不要と考えられ始めた。むしろ、この同盟によって米国が朝鮮半島で新たに起こす戦争に巻き込まれるかもしれない、との思いが韓国では深まっている。さらにこの同盟によって、台湾海峡で起きるかもしれない米中間の争いに巻き込まれかねない、との懸念も韓国は深める。日本には海洋国家意識が濃いが、韓国ではこれが薄く台湾海峡への関心の薄さもそれに比例する。」(
http://www.nikkei.co.jp/neteye5/suzuoki/
(時間が経つとURLが変わるのに注意)。6月4日アクセス)と同じく日経電子版に記しました。
要するに鈴置氏は、韓国の世論は最近、北朝鮮からの脅威が減少したと思っており、これとも関連し、韓国の世論が、反北朝鮮から親北朝鮮へ、親米から反米へ変わった、と主張しているわけです。
しかし、これは完全な間違いです。
2 本当のところは?
朝鮮日報の記事によれば、韓国での最新の世論調査は、
「南北の軍事力比較評価について、1999年のギャラップ調査では「韓国が優勢」(46.9%)が「北朝鮮が優勢」(32.6%)に比べて高かっ た。しかし今回は「北朝鮮が優勢」(46.9%)が「韓国が優勢」(42.5%)に比べて高く、昨年10月の核実験以降、北朝鮮の軍事力に対する警戒心が 高まっているものとみられる。「北朝鮮の核兵器はどの国にとって最も脅威か」という質問には「韓国」(49.8%)という回答が最も多かった。」(
http://www.chosunonline.com/article/20070625000045
。6月26日アクセス)
と、韓国の世論は最近、北朝鮮からの脅威が増大したと思っていること、かつ、
「02年大統領選直前の12月14日に行われたギャラップ社調査では、「米国が好きか」という質問に対し、「嫌い」(53.7%)のほうが「好き」(37.2%)を大きく上回ったが、今回の調査では「好き」(50.6%)のほうが「嫌い」(42.6%)より多かった。一方、「北朝鮮が好きか」という質問には、02年の調査では「好き」(47.4%)のほうが「嫌い」(37%)より多かったが、今回は「嫌い」(62.1%)が「好き」(32.8%)の約2倍に達した。」(
http://www.chosunonline.com/article/20070625000048
。6月26日アクセス)
と、韓国の世論が、親北朝鮮から反北朝鮮へ、反米から親米へ変わったこと、を議論の余地なく示しています。
3 コメント
鈴置氏の二つの論説は、日本語の典拠だけで間違っていることが分かるので、皆さんも私の言わんとするところを十分ご理解いただけたことと思います。
どうしてこんなひどい間違いが起こるのでしょうか。
想像するに、鈴置氏が結論先にありきで、典拠を信頼性や文脈を無視して恣意的に選び、取材も尽くさなかった、ということなのでしょう。
これは鈴置氏の論説だけでなく、多かれ少なかれ日本のメディアの報道全体について言えることです。
国内報道特有の問題として、取材源との癒着関係からくる報道の歪みがあるわけですが、総じて言えば、日本のメディアは、国内報道より海外報道の方が更に間違いが多い、と言えるでしょう。
はばかりながら私は、コラム#1335「正気に戻った韓国」で、「韓国の親日・反北朝鮮的スタンスへの回帰」を指摘しました。「親日」を「親米」と読み替えれば、昨年7月初旬(北朝鮮によるテポドン等発射の直後)の時点で、私は韓国世論の動向を正しく読みとり、ご紹介していることになります。
いかがでしょうか。
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<太田>
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日本の新聞対私のコラム
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