太田述正コラム#2712(2008.8.6)
<皆さんとディスカッション(続x213)>
<KY>
<太田さんが言及した> 拡大EUからの移民の受け入れ(コラム#2710)は、実は結構な話で、教育水準が高くて勤勉な労働者が大量に流入しましたから、特に建設現場などでは大助かりのようです。ある階層以下のイギリス人は、たとえば200人相手に朝9時に来いと言っても、30分以内の遅れで集まったのは75人とか、そういう事が普通に起きます。ポーランド人なら絶対にありません。仕事もきちんとしていきますから、修理したばかりのドアを開けようとしたら、外れて倒れるとか、そういうイギリス的な椿事も無いですね。
そこで、そういう移民の仕組みを先進国全体で何とか構築出来ないかと、私は普段から思っております。イギリスにしたって、ルーマニアのジプシーやギリシャの貧民よりは日本人や韓国人の方が良いと思うのでは? EUの場合は、ご承知の通り(一応は)経済規模や人権で加盟基準がありますから、そういう国から移住者が来ても、あまり間抜けな事態は招来しません。そこで、例えばOECD加盟国とか、或いは何か先進諸国間の協定を作るなどして、その間での移住は自由にするとか、そういう統一的な試みがあれば便利かと思うのですが、如何でしょうか。
それでも中東辺りに多い、金持ちの野蛮国は排除しないと駄目でしょうか。どうせなら日本とEU、カナダ、オーストラリア辺りで移住自由化の協定でも結べないものかと。
≫ただ、ここでもクラーク氏が、欧州と日本をかつて封建制を持ったという点で似ているとし、かつ(封建制を持たなかった)イギリスが欧州に含まれることを当然視しているらしい、というニ点には、私は違和感を覚えます。それがなぜかは、私のこれまでのコラムを読んでおられれば、お分かりいただけることと存じます。≪(コラム#2710。太田)
やはりそうお感じになられましたか。実は最近初めて所用でドイツに(嫌々ながら)行きまして、物凄い違和感というか、権威主義的抑圧感というか、何でもかんでも杓子定規な合理主義の暴力(?)を感じましたので、イギリス(というか、イングランド)が欧州大陸と一体というのは、非常に違和感があります。そうやって糞真面目なくせに、何故か電車もバスもまともに予定通りに走らないので、尚更腹が立ちます。明治維新以来の日本に見られる諸々の陋習の起源を見た様で、非常に不愉快でした。
それに、日英ともにドイツの30年戦争やらフランスの革命騒ぎの様な、強烈な残虐行為の大行列というのは、あまり例が無いのでは? 英国の法体系なんて常識の明文化に過ぎない様に見えますし、日本だって(公式にはともかく)、法律よりも常識の方が大事にされることが多いですよね。憲法だって適当に流されてしまう程で。
≫<米国で、果たして>最底辺の単純労働者のうちの何人が上層部へよじ登れたでしょうか。
<太田>
アイルランド人、イタリア人、支那人、日本人、ユダヤ人、インド人らに聴いてご覧なさい。大部分は最底辺の単純労働者からスタートして、それぞれ分布の形状は違うけれど、今では最上層部から最底辺まで、まんべんなく分布していますよ。≪(同上)
保守派英国人の友人は多いのですが、概ね一致した見解では、これは結局やってくる民族次第ではないかということです。
例えばTimesだかTelegraphだかの記事で随分前に見たのですが、教育程度の高低は見事に民族によって分かれているそうで、支那人は大学卒業率が非常に高く、同じインド亜大陸でもインド人は上位であるのに対して、パキスタン人とバングラデシュ人は最下位近くだったようです。他にもアフリカ出身の黒人が意外に健闘しているのに、カリブ海出身の黒人は駄目だとか、そんな話でした。元の記事が見付からず残念。
学者やら地主の御曹司やらと飲んだ時ですが、誰かが “You just cannot un-fuck some tribes”と言っていました。同感です。
<太田>
最後の英語のセンテンスはまことに含蓄がありますね。
なお、パキスタン人とバングラデシュ人は民族というよりは、インド亜大陸のイスラム教徒と言った方が正確だと思いますね。
だから、イスラム教徒は願い下げにしたい、と繰り返し申し上げているのです。
<MS>
コラム#2708で配信された韓国国定教科書中のデータに間違いがありましたので、訂正させてください。
—–訂正後—–
『分断が経済構造の不均衡に及ぼした影響(朝鮮銀行調査部 『朝鮮経済年報』1948)
北 南 (単位%)
——————————–
重工業 79 21
軽工業 30 70
鉄 99.9 0.1
無煙炭 97.7 2.3
コメ 31 69
綿花 23 77
発電 92 8
——————————–』(p.197)
以上 『』内は、「韓国の高校歴史教科書 高等学校国定国史 三橋広夫訳 明石書店」
よりの抜粋。
—–訂正前—–
> 北 南 (単位%)
> ——————————–
> 重工業 79 21
> 軽工業 70 30
> 鉄 0.1 99.9
> 無煙炭 2.3 97.7
> コメ 31 69
> 綿花 23 77
> 発電 92 8
> ——————————–』(p.197)
ところで、韓国研究の論文が読める電子ジャーナル(かなりの部分フリーで読めます)を見つけました。
よかったら参考にしてください。
Korea Journal
http://www.ekoreajournal.net/index.jsp
また、上記サイトで、以前(コラム#2690で)紹介いたしました書籍の著者、崔文衡(Choi Mun-Hyung)漢陽大学名誉教授の論文(フリー)を見つけましたので、こちらも興味がある方はどうぞ。
“The Onslaught of Imperialist Powers and Its Influence in Korea”
Korea Journal, Vol.24, No.3 March 1984.
http://www.ekoreajournal.net/archive/detail.jsp?VOLUMENO=24&BOOKNUM=3&PAPERNUM=1&TOTALSEARCH=Choi%20mun&AUTHORENAME=&PAPERTITLE=&KEYWORD=&PAPERTYPE=0&SUBJECT=0&STARTYEAR=&ENDYEAR=&LISTOPTION=1&KEYPAGE=10&PAGE=1
<太田>
私からは、本日(8月6日)が広島に世界最初の核爆弾が投下された日の63周年にあたることから、私がいつもフォローしている英米等の主要メディアの、本件についての報道ぶりをご報告しておきます。
残念ながら、電子版で報道したのは、英ガーディアンと米ロサンゼルスタイムスだけでした。
前者のコラムは、原爆投下の必要性がなかったと指摘しており、ガーディアンの良識を示しています。惜しむらくは、ハセガワの指摘(最近のコラムでは、#2657、2659、2661、2667、2669、2675。ただし、未公開)への言及がない点です。
後者の記事は、AP電を掲載したものですが、広島の秋葉市長の核廃絶への訴えに言及しています。
(以上、
http://www.guardian.co.uk/commentisfree/2008/aug/06/secondworldwar.warcrimes、
http://www.latimes.com/news/nationworld/world/wire/sns-ap-japan-hiroshima-anniversary,0,4745390,print.story
(どちらも8月6日アクセス)による。)
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太田述正コラム#2713(2008.8.6)
<ウィグル族蹶起す?>
→非公開
皆さんとディスカッション(続x213)
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