太田述正コラム#2778(2008.9.8)
<読者によるコラム:強い意志/付:読者の声>
 (これは、消印所沢さんによるコラムです。)
 ふとしたきっかけで,『世界のキノコ切手』
(飯沢耕太郎著,プチグラパブリッシング刊)という
本を読了.
 世界にこれだけキノコ切手があることに,まず驚かされる.
 しかも,ちゃんとそれぞれの国のお国柄が出ている.
 童話アニメふうのチェコの切手.さすが「クルテク」の国.
 毒キノコに対する啓蒙切手まである,キノコ料理の盛んな
東欧諸国.
 濫造気味のある,切手が主要輸出品のアフリカの国々.
 著作権意識希薄なベトナム.
 著者は日本にキノコ切手が1種類しかないことを
嘆いているが,これは日本ではキノコが単なる食品という
位置付けだからだろう.
 キャベツやゴボウや白菜が記念切手のデザインに
使われにくいのと同じこと.
 そのへんも国柄を反映しているといえるだろう.
 それにもまして興味深いのは,
「こんな国(地域)のものまで!」
と驚くような,その網羅性.
 国連加盟国の切手が全部あるのは当たり前.
 カレリア共和国(ロシア連邦の中の自治共和国)や,
オーランド諸島,英領ヴァージン諸島のものまで掲載.
 中でも,チェチェン共和国の切手まであるのには大変驚き.
 旧ソ連の切手の上に,重ね刷りしたとおぼしき
急造切手だが,「独立国」としての意地が感じられる.
 香港や琉球政庁発行の切手も本書には掲載されており,
たしかにこちらのほうがカラフル(つまり技術が
高度)なのだが,なにがなんでも独自の切手を
発行したい!という強い意欲が感じられない.
 独立の意思というものは結局こういうことなのだろう.
 何がなんでも自前の切手.何がなんでも自前の通貨.
何がなんでも自前の言語・文化・宗教……を用意したい
という強い意欲があるかないかで,独立の意思の有無が
判断できるように思われる.
 イスラエルなんざ,ヘブライ語まで復興したしね.
 逆にいえば,いくらテロを繰り返したりしても,そういう
ものが見えてこないうちは,独立への支持は高まらないのでは
ないかと.
 東トルキスタン(中国ウイグル自治区)は小規模なテロは
継続してやっているけれども,そういうものがさっぱり
見えてこない現状では,まだまだ独立は遠い先の話だろうし,
台湾は台湾で,中国と一線を画す独自文化という面で弱い.
 沖縄独立論など,そういう面が殆ど何もないから,
おままごとにしか見えないのだろう.
 各地の紛争地域についてそういう「本気度」を計測できる
尺度を作ってみると,面白いデータが収集できるかもしれない.
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<太田>
 消印所沢さん、どうもありがとうございました。
 今回のコラムにひっかけて言えば、グルジアなんて、
’Georgian society remains infused with an appreciation for Russian culture that Georgian sociologists and historians say will outlive this latest round of tensions.
A monument to Alexander Pushkin, a Russian poet and icon who once visited Tbilisi for inspiration, stands in a park just off Freedom Square in the city. Georgian television channels routinely broadcast old Russian films, kiosks sell Russian-language fashion magazines and Russian pop music blares from taxi radios. While Georgians proudly cling to their distinct centuries-old language, Russian is the second language here.
Even some of those victimized by the Russian bombings said they perceived the conflict as a proxy battle between two global powers – Russia and the United States – rather than a vendetta between Georgians and Russians.’(
http://www.nytimes.com/2008/09/08/world/europe/08georgians.html?_r=1&oref=slogin&ref=world&pagewanted=print
。9月8日アクセス)という有様なのですから、ロシアと事を構えるなんて100年早すぎたのかもしれませんね。
 ところで、ファイナンシャルタイムスの例のインタビューに、巨匠ゲルギエフ(コラム#2751)が登場しています(
http://www.ft.com/cms/s/0/9880da60-7ad9-11dd-adbe-000077b07658.html
。9月6日アクセス)が、いくらご本人も奥さんも北オセチア出身だとはいえ、
‘Gergiev・・・ makes no mention of the torching of Georgian communities in South Ossetia or the devastation caused by Russian forces in Georgia.’
という姿勢で、
‘For Tskhinvali, 1,000 dead is a devastating loss. It’s the Ossetian equivalent of the Twin Towers. If the Russian army had not intervened, thousands more Ossetians would have been killed.”’
なんて発言されると鼻白みますね。
 もっともこれは、南オセチア人のグルジアからの独立、南北オセチアの統合、統合オセチアのロシアへ自治共和国としての吸収、への思いがホンモノであることを示しているのかもしれません。
<海驢>
MSさま、コラム:日韓の反目と安全保障(#2771・#2775(未公開)・#2777(未公開))拝読しました。
 非常に緻密な文章に少々驚きを覚えながら読みましたが、いや力作ですねえ。
 ビクター・チャ教授の疑似同盟理論については、普遍的なものと解するにはもっと実事例が必要でしょうが、第二次大戦後の日韓関係にはかなり適用性が高いように感じました。
 コラム#2771で謝辞をいただきましたが、当方の投稿などはとてもこの大作コラムにお役に立つレベルではなかったので、少々面映ゆいですね・・・
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太田述正コラム#2778(2008.9.8)
<仏ダティ法相の妊娠>
→非公開