太田述正コラム#14333(2024.7.14)
<皆さんとディスカッション(続x5956)>

<HH>

 中共と米国に二股をかけるという言い方は確かに米国の軍事的庇護下にある以上、ありえないですね。米国の没落、より正確に言えば米国経済の没落に備えて経済的に保険を中共に求めた、ということを言いたかったのです。
 宗主国、あるいは保護国という言い方には軍事的庇護関係があるというのが私の認識ですが、それを志向して中共に擦り寄るというのが日本政府の、しかも通産官僚にあるというのがどうにも腑に落ちないのです。

⇒岸信介の戦後キャリアは外相として始まり、首相就任後もしばらく外相を兼務しています。↓
 「1956年(昭和31年)12月14日、自民党総裁に立候補するが・・・石橋湛山に敗れ・・・、外務大臣として石橋内閣に入閣した。2015年8月に東洋経済新報社の石橋湛山に関する資料袋から発見された石橋が岸にあてた私信によれば、石橋が示した閣僚名簿に対し昭和天皇は「自分はこの名簿に対して只一つたずねたいことがある。どうして岸を外務大臣にしたのか、彼は先般の戦争に於いて責任がある。その重大さは東條以上であると思う」と語ったという。「自由主義国としての立場の堅持」「対米外交の強化」「経済外交の推進」「国内政治に根差す外交」「貿易中心の対中国関係」の外交五原則を発表した。2か月後に石橋が病に倒れ、首相臨時代理を務め、石橋総理の代役で施政方針演説を行った。石橋により後継首班に指名され、国会の首班指名時において自民党総裁以外の自民党議員が指名された形となった(首相就任の1ヵ月後の3月21日に自民党総裁に就任)。1957年2月25日、石橋内閣を引き継ぐ形の「居抜き内閣」で前内閣の全閣僚を留任、外相兼任のまま第56代内閣総理大臣に就任した。」
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%B2%B8%E4%BF%A1%E4%BB%8B
 このような岸の下で、外務省内に、親中共政策を親米政策と並行して進める体制が構築されたと考えられます。↓
 「概して自立性の強い日本のタテ割り官庁の中でも,アジア局には独自性の立場が強かった。70年代ごろまで,外務省においては北米局や条約局が外交全般を司る正統派エリートの場であり,アジア局はローカルな専門家グループの趣がないではなかった。主流の日米基軸派に対し親中派が反骨心をもって対抗するといった情景も,日中国交回復の際などに認められた。その後のアジアの発展とともに,アジア局や東南アジアの首都の大使職の重要性が高まり,有能な外交官が手腕を発揮すべきポストとなった。」
https://www.ritsumei.ac.jp/acd/cg/law/lex/10-1/takemoto.pdf
 この岸の親中共政策は、彼の出身官庁の戦後版である通産省の貿易担当部局を通じ、通産省全省にも浸透した、と考えられます。(太田)

 中共に軍事的庇護を求めるとき、どの国に軍事的脅威を感じているか、ですが仮に朝鮮半島からの軍事的脅威とすれば、それはどういう形にしろ国連軍撤退後の状況でしょうし、その場合は中共影響下の国になるでしょうし、台湾においても米国がコミットメントを止めた場合、当然に中共影響下でしょう。そういう状態になれば米国が撤退し、中共一強の世界戦になるので、そうであれば中共に庇護を求めるというのは判ります。ただ、それを昭和末期から平成初頭にかけて想定しそれに備えた戦略として日本政府が構想できたとは思えないのです。そもそも脳死状態ですから。

⇒ソ連/ロシアの脅威を忘れてますよ。
 なお、当時、まだ日本政府は完全に脳死には至っていませんでした。(太田)

 個人的な経験ですが初めて訪中したのは1999年、まだまだ経済的には発展途上国ですし、日米両国の資本投下がなければ立ち行かない実態がありました。その時、13億人全員がようやく靴下を全員履けるようになった、というのが自分の抱いた印象です。ただ、その印象の背景には膨大な生産量と流通量に気づいたことでした。なおそれが当時、平成の経済停滞初期に言われた支那大陸発のデフレ輸出に繋がるわけですが、一方で、その生産力の基盤になったのは日米独の資本です。そして支那大陸への投資により成長した企業・亜産業も多々あるわけで通産官僚の考えは、その現実を反映したものに過ぎないと思います。

⇒岸に触れたところで記した通りです。(太田)

 それはともかく、戦争の終わらせ方については、まだ太田理論が腑に落ちてきません。日ソ戦争の結果として米国がソ連と直接対峙することを目論み、結果として対ソ防衛を肩代わりさせるという戦略はわからないでもないですが、それを本土決戦の結果として実現するという構想が腑に落ちてこないです。さらに言えばそもそも必ず本土決戦になるという選択肢が一つしかない作戦を戦前に構想するのかという疑問があります(実際、帝国海軍がもう少しまともであれば、現在のインドネシアとフィリピンのラインを防衛できた可能性もある)。

⇒山本五十六を始め、対米英開戦当時の帝国海軍すら、1~2年しか海軍はもたないと見切っていたわけですが、いわんや杉山元らをや。
 よって、本土決戦になることは容易に予想できた筈ですし、ソ連の参戦だって、開戦前に、総力戦研究所の若手官僚等の学生達ですら予想できていました。(太田)

 帝国海軍のイフはさておき本土決戦は帝国必敗というのが太田さんの認識だと思いますが、私は必ずしもそうではないのではないかと考えています。フィリピン、硫黄島、沖縄の大規模な日米対決で相当な打撃を米国も受けています。また特攻作戦や(自ら蒔いた種とはいえ)機雷の存在により上陸作戦及びその後の補給が問題になってくると思います。北海道はさらに厳冬期という問題があります(ロシア人が寒さに強いとしても流氷で閉鎖された北海道に兵站線を展開できない)。

⇒日本列島に物資が運べなくなった状態では、(ウクライナ戦争における資源大国ロシアとは違って、)米国側が何もしなくても日本の敗北は必至でした。(太田)

 とはいえでは帝国陸軍が軍事的にも勝利した状態で終戦できるかと言われると、それもまたリアリティがなく、まだ私の能力では杉山構想をトレースできていないのが正直なところです。

⇒とにかく、他の全ての戦争目的を杉山らはほぼ達成していたというのに、対ソ(露)抑止に関してだけは達成しようとはしていなかった、と、考える方が不自然だと思いますよ。(太田)

<HH>

 ・・・日本人的(縄文人的)感性として一昨日、紹介されていた寺尾関について私もエピソードがあります。
 寺尾関が亡くなって暫く経った頃ですが、行きつけの床屋で相撲のことが話題になりました。その時に床屋の親方から聞いた話ですが、床屋の近所で寺尾関にスカウトされて中卒後、部屋に入門した若者がいたそうです。ただ残念ながら三段目の時に怪我をしてしまい相撲を続けることが不可能な身体的状態となったため泣く泣く引退となったそうですが、その時、寺尾関が言ったことは「お前を中卒で部屋に入門したのは俺の責任だ。相撲を続けられないとなると、中卒の学歴ではまともな職に就くのが難しいのが今の世間でもある。お前がやる気があるのであれば大学検定を目指せ、そして目指すのであればこのまま部屋にいて勉強しろ、俺たちが面倒を見てやる。」だそうです。
 その言葉に奮起してご本人は大検を通るだけではなく公務員試験、横浜市採用試験にも合格、見事、地方公務員として働くことで寺尾関の恩に報いる事ができたと、まるで川口松太郎の人情小説みたいな話を聞かされました。
 人は人個人の個性により生きるのではなく人と人との関係性、共同体の中で活かされ生きていくという人間主義社会の素朴な実践を見る思いがしたのを思い出しました。

<太田>

 安倍問題/防衛費増。↓

 <とかなんとか言っちゃって。↓>
 「特定秘密、海自現場と乖離=「漏えい」定義も認識せず―不正常態化、複合的要因・・・」
https://www.msn.com/ja-jp/news/world/%E7%89%B9%E5%AE%9A%E7%A7%98%E5%AF%86-%E6%B5%B7%E8%87%AA%E7%8F%BE%E5%A0%B4%E3%81%A8%E4%B9%96%E9%9B%A2-%E6%BC%8F%E3%81%88%E3%81%84-%E5%AE%9A%E7%BE%A9%E3%82%82%E8%AA%8D%E8%AD%98%E3%81%9B%E3%81%9A-%E4%B8%8D%E6%AD%A3%E5%B8%B8%E6%85%8B%E5%8C%96-%E8%A4%87%E5%90%88%E7%9A%84%E8%A6%81%E5%9B%A0/ar-BB1pVGlC?ocid=msedgntp&pc=U531&cvid=14b421b45d774a059fa8d42f6eb07167&ei=10

 ウクライナ問題。↓

 なし。

 ガザ戦争。↓

 <派手にやらかしとるな。↓>
 Israeli strikes targeting Hamas military leader kill 90 in Gaza–Israeli Prime Minister Benjamin Netanyahu said Saturday that “there is still no absolute certainty” that Mohammed Deif was killed.・・・
https://www.washingtonpost.com/world/2024/07/13/israel-hamas-war-news-gaza-deif-mawasi/

 それでは、その他の国内記事の紹介です。↓

 なるほど。↓

 「・・・神田明神は最初、将門の首塚がある場所にあった。それを江戸城の鬼門の方角に当たる現在地に移転した。・・・
 江戸時代が終わり、明治になって江戸は東京となり、天皇も京都から東京へと転居した。欧米列強に対峙するために、一神教的性格を持つ国家神道が提唱され、廃仏毀釈が起きた。神田明神は神田神社と改称された。
 明治天皇が神田明神を参拝するにあたり逆賊の平将門を祭神から外せということになり、摂社「将門神社」に遷座された。その代わりに少彦名命を迎えることになる。その後、1984年になって平将門の合祀と神田明神という呼称が復活する。・・・」
https://www.mag2.com/p/news/603219?utm_medium=email&utm_source=mag_W000000125_sat&utm_campaign=mag_9999_0713&trflg=1

 要するに、引用第二段落が正しい。↓

 「・・・紫式部は大作『源氏物語』をいつ書いたのか。その執筆開始時期は、今に至るまでもはっきりしていません。夫・宣孝との結婚以前か、結婚生活中という説もあれば、夫の死後、宮仕えするまでという説、宮仕えしてからという説までさまざまあります。
 紫式部は寛弘2年(1005年)頃に、内裏(宮廷)に出仕(宮仕え)したと思われますが、それまでに、つまり未亡人となってから『源氏物語』を書き始めたのではとも言われています。・・・」
https://www.msn.com/ja-jp/news/opinion/%E7%B4%AB%E5%BC%8F%E9%83%A8-%E5%A4%AB%E4%BA%A1%E3%81%8F%E3%81%97%E5%A8%98%E3%81%AF%E7%97%85-%E3%81%9D%E3%82%8C%E3%81%A7%E3%82%82%E5%BC%B7%E3%81%8F%E7%94%9F%E3%81%8D%E3%82%8C%E3%81%9F%E8%A8%B3-%E6%82%B2%E3%81%97%E3%81%BF%E3%81%AB%E6%9A%AE%E3%82%8C%E3%81%9F%E5%BC%8F%E9%83%A8%E3%81%AE%E5%BF%83%E3%81%AE%E6%8B%A0%E3%82%8A%E6%89%80%E3%81%A8%E3%81%AA%E3%81%A3%E3%81%9F%E3%82%82%E3%81%AE/ar-BB1pTT5m?ocid=msedgntp&pc=U531&cvid=fc0e87dd293c481b97bab2fa362dbfc5&ei=98

 日・文カルト問題。↓

 <なんちゅう見出しの付け方すんだよ。↓>
 「日本でもプレーした元Kリーガーが「飲酒当て逃げ」、歩道に突っ込み街路樹に激突…カメラに映った一部始終 /ソウル・・・」
https://www.chosunonline.com/site/data/html_dir/2024/07/13/2024071380018.html
 <お互い、ご苦労なこった。↓>
 「・・・2024年版防衛白書は、韓国を「パートナーとして協力していくべき重要な隣国」とした。これは4月に発行された外交青書に2010年以来14年ぶりに登場した表現と同じだ。韓国関連の記述分量も昨年の2ページから今年は3.5ページに増えた。・・・」
https://japanese.joins.com/JArticle/321081

 大したニュースじゃないよ。↓

 Pops, screams and then blood: On the scene at the Trump rally shooting–A view from the press riser of the chaos surrounding what authorities are investigating as an assassination attempt against Donald Trump.・・・
https://www.washingtonpost.com/elections/2024/07/13/trump-shooting-rally-witness-account/

 支那の春秋戦国時代同様の恒常的戦争時代だったんだよ。↓

 「・・・「文字史料の残されていない時代」に、神々と人間の関係に何らかの変化が生じ、新しい活力を持った人間が登場してきた。それがギリシアの都市国家(ポリス)形成の力となったのでは――というわけだ。
ポリスが誕生し、発展を見せるこの時代は、「前8世紀ルネサンス」とも呼ばれる。この頃から、ギリシア・アルファベットの導入や、聖域・神殿などの建設が進み、芸術活動や植民活動が活発化するのである。・・・」
https://www.msn.com/ja-jp/news/opinion/%E6%96%87%E6%98%8E%E5%B4%A9%E5%A3%8A%E3%81%AE%E5%BE%8C%E3%81%AB%E8%A8%AA%E3%82%8C%E3%81%9F%E3%81%AE%E3%81%AF-%E6%9A%97%E9%BB%92%E6%99%82%E4%BB%A3-%E3%81%8B-%E3%83%AB%E3%83%8D%E3%82%B5%E3%83%B3%E3%82%B9-%E3%81%8B-%E5%8F%A4%E4%BB%A3%E3%82%AE%E3%83%AA%E3%82%B7%E3%82%A2-%E3%82%A8%E3%83%BC%E3%82%B2%E6%96%87%E6%98%8E%E3%81%AE%E8%88%88%E4%BA%A1%E3%81%8C%E3%83%8A%E3%82%BE%E3%81%99%E3%81%8E%E3%82%8B/ar-BB1pVGfY?ocid=msedgntp&pc=ENTPHB&cvid=b0254497ff0e448fa6e88a5e57327af4&ei=50

 常識。↓

 「・・・イギリス出身の歴史学者マーティン・バナール・・・は主張する。とくに18世紀以降の近現代人は、ギリシア古典文明へのアフロ・アジア語族の文化的影響を意図的に無視してきたのだ。その根底には、おそらく主として人種差別の意識がかくれていたにちがいないという。・・・」
https://www.msn.com/ja-jp/news/opinion/%E3%82%AE%E3%83%AA%E3%82%B7%E3%82%A2%E6%96%87%E6%98%8E%E3%81%AE%E8%B5%B7%E6%BA%90%E3%81%AF%E3%82%A8%E3%82%B8%E3%83%97%E3%83%88%E3%81%AB%E3%81%82%E3%82%8A-%E3%83%9A%E3%83%AB%E3%82%B7%E3%82%A2%E8%BE%BA%E5%A2%83%E3%81%AE-%E5%B0%8F%E6%96%87%E6%98%8E-%E3%81%8C-%E3%83%A8%E3%83%BC%E3%83%AD%E3%83%83%E3%83%91%E3%81%AE%E6%BA%90%E6%B5%81-%E3%81%A8%E5%B0%8A%E9%87%8D%E3%81%95%E3%82%8C%E3%81%9F%E7%90%86%E7%94%B1/ar-BB1pTo0b?ocid=msedgntp&pc=U531&cvid=fc0e87dd293c481b97bab2fa362dbfc5&ei=60

 中共官民の日本礼賛(日本文明総体継受)記事群だ。↓

 <韓国紙より。
 プーチンと心中する決意を固めた(?)金坊や。↓>
 「朝中間に距離…63周年友好条約宴会、北朝鮮出席者の級が低下・・・」
https://japanese.joins.com/JArticle/321083
「2年にわたる水面下の中朝対立が爆発…中国にむげにされロシアに抱き込まれた北朝鮮–こじれる中朝関係、なぜこんなことに・・・」
https://www.chosunonline.com/site/data/html_dir/2024/07/09/2024070980174.html
 <ここからは、レコードチャイナより。
 移住しちゃったら?↓>
 「・・・香港人の間では「日本では爆買い、香港では倹約」のパターンが生まれている。日本で金銭を使った方がはるかに満足できるからという。・・・」
https://www.recordchina.co.jp/b937007-s25-c30-d0198.html

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太田述正コラム#14334(2024.7.14)
<大川周明『大東亜秩序建設/新亜細亜小論』を読む(その28)>

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