太田述正コラム#14414(2024.8.22)
<徳富蘇峰『皇道日本の世界化』を読む(その3)>(2024.11.17公開)
「・・・皇道ということは、人と人との関係を権力関係とせずして、道義の関係とすることである。
言い換えれば、世界の権力化を一変して、世界の倫理化を行わんとするものである。・・・
⇒いい線をいってはいるのですが、いかんせん、蘇峰の皇道の定義がナンセンスであることが惜しまれます。(太田)
我らが共産党を洪水毒蛇よりも恐れるは、共産党は階級争闘を以て、その基調とするからである。
階級争闘ということは、必ずしも共産党に限ったことではにが、それを徹底的にやるのが、共産党である。・・・
而してその結果は如何といえば、少数なるコミンテルンが、億万の民衆を、鉄棒を以て虐使しつつある露国の現状を見ればよく判る。
共産主義は第一に家族制度を根本より破壊するものである。
第二には社会秩序を破壊するものである。
第三には国家そのものを破壊するものである。
これは何れの国に対しても同様であるが、我が国の如き特別なる国体を、三千年来誇りとする国家においては、寸毫と雖も仮借し難き敵である。
⇒蘇峰は、共産主義とスターリン主義をごっちゃにして噴飯物のマルクス主義批判を行っています。
それに比して、私の見るところの、杉山元らのマルクス主義理解の凄さ、が改めて思い起こされます。(太田)
我らは東亜をして、東亜の東亜たらしめるための我が友邦として、支那を俟(ま)っていた。
然るに彼らの一半はいわゆる欧米依存で、白皙人種のために奴隷となるを辞せず。
他の一半は共産主義化して、露国赤化の手先となるを辞せず。・・・
⇒よって、当然のことながら、蘇峰は、蒋介石政権も毛沢東の中国共産党も、どちらも敵視してしまっています。(太田)
我が国が防共を以て第一の国策としたるは、共産主義が我が皇道の宣揚に対する、第一の敵であるがためである。・・・
コミンテルンは、世界の労働者を糾合して、露国をやりつけたる如く、世界をやりつけんとするものである。・・・
⇒ここも、(間違いなく杉山元らも私と同意見だった筈ですが、)ロシアは、単に、エセ共産主義なるスターリン主義、という疑似宗教、の、布教活動をコミンテルンを通じて行うことを通じて、ロシアの領土や勢力圏の増大を推進していたのであって、蘇峰はそこのところを全く解していません。(太田)
<我々は、>一方において共産主義の大敵を控えているが、他方においてはアングロ・サクソンの搾取主義がまたなかなか根拠を据えている。誰から許されたでもなく、英国はアジアを以て、全然その縄張りと心得ている。
それでアジアのためのアジアなどということは、英国は断じてその儀は相成らぬと心得ている。
而して自力ではとても足らぬと思うから、或いは米国を引張り、或は仏蘭西を教唆し、或は日本とドイツとの間に水を差し、支那を踊らせ、而して自分自身は共産主義を決してありがたきものとは思っておらず、その衷心からいえば、共産主義を恐れること、蛇蝎の如きものあるに拘らず、なお手を赤露に伸ばして、ソ連の力を仮りてでも、縄張りを維持せんと跑(あが)いている。
それで我が皇道を世界に宣布するについて、彼らは一方においてはコミンテルンの赤化作用、他方においてはアングロ・サクソンの搾取作用に対して、向背に敵を受けたといわねばならぬ。・・・」(23~26)
⇒ここは、蘇峰の言う通りです。(太田)
(続く)