太田述正コラム#3871(2010.3.7)
<皆さんとディスカッション(続x765)>
<Chase>http://blogari.zaq.ne.jp/fifa/
 私も、<太田氏等が>戦前の日本は民主主義国家といわれることに対して、腑に落ちなかったことは、正直な直観であったことは吐露しておきたい。
 私の世代は、戦中の日本の空気を知る人たち(一次情報)から、事あるごとに(学校教育を含めて)、戦前の日本が息苦しかった(いわく憲兵が怖かった等)云々の体験談を聞いた世代である(が、明治から大正にかけての空気は、聞いていない)ので、そんな感覚を漠然と持っていた。
 少し考え方を変えたのは、学生時代にブライ大学教授、ベン・アミー・シロニー博士が、1982年に出した著書『天皇陛下の経済学』(光文社)を読んでからである。同著内を転載したURLがあったので記しておきたい。
http://hexagon.inri.client.jp/floorA6F_he/a6fhe511.html
 ポイントを以下に若干転載する。
(転載はじめ)
・・・明治時代に発達した政治体制は、変化しなかった。憲法は廃止されずにそのまま維持され、帝国議会は、戦時中も事あるごとに開かれた。1942年に、日本で普通選挙が行なわれるようになり、大政翼賛会の候補者に加えて多くの無所属議員が出馬し、当選したりもした。・・・
(中略)
・・・東條は最高責任者であったが、彼はヒトラーの権威も権力ももっていなかった。東條は当たり前のように有力者となっていき、戦時中、批判が高まると、当たり前のように権力の座から引きさがった。・・・
(転載おわり)
 太田氏の『防衛庁再生宣言』140~147においても、
(転載はじめ)
・・・民主主義が機能していた証拠に、政党政治家達は決して軍部に迎合したり、膝を屈するようなことはなかった。・・・
(転載おわり)『防衛庁再生宣言』145頁
あたりで、ゴードン・バーガーの論を論拠とされている(詳しくは同著をご確認願いたい)。
 戦前の日本が民主主義国家であったことの理解を妨げる桎梏は、やはり、憲兵による抑圧に見られるようないわゆる人権の制約が起きてしまうことであろう。ここは程度の問題(That’s a question of degree.)とするべきところだ。
 太田氏は、以下のように記す。
(転載はじめ)
・・・戦時中に多かれ少なかれ人権が制約されるのは、いかなる民主主義国においても、普遍的に見られる。・・・
(転載おわり)『防衛庁再生宣言』147頁
 確かに多くの庶民にとっては、戦時中にどこそかの誰かが憲兵に連れて行かれた云々の記憶は、現代の日本(の民主主義)とは、絶対に違うと言い張ることだろう。
 しかし、そのことと民主主義の骨格の理解とは明確に峻別する必要がある。
<太田>
 ベン・アミー・シロニーが書いていること、次著の脚注で使いたいところですが、光文社じゃ、どうせ典拠は記されてないでしょうから、残念だけど使いものにならないでしょうね。
<KT>
 ・・・日本が「独立」してたとして、アフガニスタンで誘拐されて殺害されたNGOの日本人の場合、日本はどう対応するべきだったのでしょうか。
 日本も軍隊を派遣して、米国と連携してタリバンと戦うべきなのでしょうか。
 (もう911テロ事件から8年以上経ってますが。)
http://www.afpbb.com/article/war-unrest/2511951/3268813
<太田>
 他国の領域内で警察権を行使することはできませんし、自衛権(集団的自衛権を含む)を発動する要件が充たされていない場合に他国の領域内で武力を行使することもできません。
 仮に日本が独立しており、集団的自衛権も行使できる状況であれば、その場合の日米安保条約がどのような規定ぶりになっているか等を勘案しつつ、米国を助けるためにアフガニスタンに自衛隊を派兵するかどうかを決めることになります。
 これを決めるのは、その時の政権です。
<太田>
 どんどん就業者や移民を外国から受け入れよう!↓
 「新人による優れた現代詩の詩集に贈られる第60回H氏賞(日本現代詩人会主催)は6日、中国籍の男性詩人、田原さん(44)が日本語で書いた「石の記憶」(思潮社)に決まった。中国人の同賞受賞は初めて。
 田さんは中国河南省生まれ。仙台市在住で、東北大で中国語の講師を務めている。・・・」
http://www.tokyo-np.co.jp/s/article/2010030690195905.html
 宗主国米国サマはまともだよ。↓
 「・・・米軍が1966年の少なくとも3カ月間、岩国基地(山口県)沿岸で核兵器を保管していた・・・岩国の核兵器は許容される『通過』には当たらないとライシャワー大使は即座に判断し、激怒し<、>・・・辞任して暴露する可能性に言及して、米軍に撤去を求めた・・・」
http://mainichi.jp/select/today/news/20100307k0000m010096000c.html
 それにひきかえ、我が属国日本はひでえもんだ。↓
 「1972年の沖縄返還をめぐる有事の際の沖縄への核持ち込みについて、当時の佐藤栄作首相とニクソン米大統領が極秘に<合意を>交わし<たが>・・・、その内容は、佐藤政権以後は引き継がれなかった可能性が高い・・・」
http://www.yomiuri.co.jp/politics/news/20100303-OYT1T00090.htm?from=main2
(3月3日アクセス)
 そんな論調、日経の電子版に出たっけ?↓
 「・・・ 日本経済新聞の中山淳史・編集委員は「米国は今回のリコール問題を利用して、企業と国家の対立を生み出そうとしている」、と米国側のもくろみに言及。「米国の自動車製造業の象徴であったゼネラルモーターズが破産法を申請した今、このようなやり方は米国の国益に合致する」という。・・・」
http://j.peopledaily.com.cn/94476/6910483.html
 いつもながら、朝鮮日報サンはまともだよな。↓
 「・・・ 1945年の解放以降、韓国は経済政策、産業技術、企業経営に至るまで経済運営に関するほぼすべてを日本から学んだ。半導体、造船、鉄鋼など現在の韓国を支える主力産業は、ほぼ大半が日本による技術指導と支援からスタートした。「日本に学び、日本に追い付き、日本を超えよう」というのが、韓国の長年の念願であり夢だった。
 しかし、現在は日本が「韓国に学ぼう」というほどまでに状況が変化した。・・・
  韓国経済のこうした成果に対し、国民と企業は自負心を持ってよい。だが、ごう慢になってはならない。日本が「韓国に学ぼう」というのは、韓国の追撃に警戒心を抱いているためであって、実際に韓国が日本を追い抜いたと認めたわけではないからだ。韓国は昨年、日本を上回る貿易黒字を計上したが、対日貿易では270億ドルの赤字を出した。これは、輸出品に使用する重要な部品、素材の大半を日本から調達しているためだ。・・・
 真に日本を追い越すためには、今後さらに日本に学ぶところが大きい。
http://www.chosunonline.com/news/20100306000008
 ハーレクィン叢書のタイトルに使われてる言葉を分析してみると、やはり女性はマッチョないし金持ちの男性が大好きみたいね。↓
 ・・・”love” was the most frequently used word in Harlequin romance novel titles (occuring 840 times), followed by “bride” (835), “baby” (696), “man” (672) and “marriage” (612). Other frequently used words included “cowboy” (314), “night” (340) and “nurse” (224). Delving deeper, into the most popular professions in the romance books, they found that “doctor” topped this count with 388 making it into titles, followed by “cowboy” (314), “nurse” (224) and “boss” (142). “・・・
 Many of the occupations were centred around high incomes (eg surgeon), or positions that demand physical fitness (eg cowboy). ・・・
 ・・・long-term commitment and reproduction are important to readers.・・・
http://www.guardian.co.uk/books/2010/mar/04/evolutionary-psychologists-romantic-fiction
 日本型経済体制と典型的な資本主義下の市場・組織との違いが簡潔に描かれている。
 私が、トヨタは「日本型経済体制の一環としての・・・日本型経営の大成功例」(コラム#3841)と書いた意味分かったかな?↓
 ・・・Toyota has always・・・treat<ed> parts makers as collaborators. Contracts are awarded based not primarily on price but on defect rates. If a manufacturer is fumbling, Toyota will send engineers to help fix the problem. American companies long took a more adversarial approach, analysts say. Cost was the No. 1 concern ? generally, if you were the low bidder, you won ? and when mistakes were made the supplier was fired. ・・・
 Where American workers feared recriminations if they spoke up, Japanese workers feared recriminations if they spotted problems and said nothing. The difference is part of a culture of shared responsibility ・・・
http://www.nytimes.com/2010/03/07/business/07quality.html?hp=&pagewanted=print 
 大江健三郎の『取り替え子』の英訳本の書評が出てました。
 彼の小説読んだことないから、チンプンカンプンもいいところです。↓
http://www.latimes.com/entertainment/news/la-ca-kenzaburo-oe7-2010mar07,0,1684557.story
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<太田>
 2週間ほど前、隣の駅付近で、DVDレンタル屋を発見。
 これで、映画リクエストには機動的に対応できるようになったと思っていたら、今度は2日前に、逆方向の隣の駅付近で、既に一年前にTsutayaが出現していたことを「発見」。
 こちらで、1周年記念半額セールを本日までやっていたので、本日昼に赴き、入会し、DVD4枚↓を借りました。
『ミュンヘン』
『ゼア・ウィル・ビー・ブラッド』
『ロード・オブ・ウォー』
『ダークナイト』
 だけど、60歳以上は、いつでも半額だと知ってガックリ。
 ガックリの意味は、別に今日急いで来ることなかったというのと、自分を何事によらず「老齢」割引の対象として自覚したことが今まで一度もなかったというのとの二つです。
 今回借りたのは、一般読者のリクエストの中から一つ、オフ会幹事2名からのリクエスト3つであり、近々、少なくともこのうち2つの映画評を有料コラムとして配信したいと思っています。
 皆さん、引き続き、リクエストをお待ちしています。
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<KT:翻訳(太田補訳)>
コラム#3861より
 緊急事態においては、本能が植え付けられた社会規範に勝っちゃうんだって。
 日本が「独立」した暁の首相がそんなじゃ、悲劇だけど。↓
 ルシタニア※は約18分間で沈没したが、タイタニックは3時間近くかかった。・・・
 非常に速く反応しなければならないとき、人間の本能は内面化している社会規範よりはるかに速く働く・・・
※ルシタニアは第一次世界大戦中の1915年5月7日にドイツ海軍の潜水艦「U-20」より、南部アイルランド沖15 kmの地点で雷撃を受け、わずか18分で轟沈した。短時間での沈没のため船内から脱出できなかった乗客1,198名が死亡した。犠牲者の中には128名のアメリカ人が含まれ、この為に当時中立国であったアメリカ合衆国の第一次世界大戦への参戦の原因になったとされる。
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%AB%E3%82%B7%E3%82%BF%E3%83%8B%E3%82%A2_(%E5%AE%A2%E8%88%B9)
<太田>
 翻訳戦線に新人登場?