太田述正コラム#2573(2008.5.27)
<「朝生」のあらまし>(2008.7.1公開)X→(2012.2.8公開)
 (5月31日朝まで公開しません。)
1 始めに
 私が出演する朝生のあらまし(パネリスト表と構成案)が送られてきたのでご披露します。
2 あらまし
「朝まで生テレビ!」2008年5月30日(金)OA
パネリスト表
司会:田原 総一朗
進行:渡辺 宜嗣・上山 千穂(テレビ朝日アナウンサー)       
パネリスト
片山 さつき(自民党・衆議院議員,元財務省)
細野 豪志(民主党・衆議院議員)
辻元 清美(社民党・衆議院議員)
江田 けんじ(無所属・衆議院議員,元通産省)
猪瀬 直樹(作家,東京都副知事)
太田 述正(元防衛庁、「防衛庁再生宣言」著者)
片山 虎之助(元自治省、前自民党参議院幹事長、)
河辺 啓二(元農水省,医師、「政治家がアホやから役人やめた」著者)
高橋 洋一(元財務省,東洋大学教授、「さらば財務省!」著者)
寺脇 研(元文部省、「官僚批判」著者)
中野 雅至(元厚労省,兵庫県立大学大学院准教授、「間違いだらけの公務員制度改革」著者)
若林 亜紀(元特殊法人勤務、ジャーナリスト,「公務員の異常な世界」著者) 
  
朝まで生テレビ!080530討論案
「激論!“官僚国家”ニッポンの行方・第2弾」(仮)
討論一:今なぜ“官僚改革・公務員改革”なのか?!      
 官僚国家ニッポンの限界と問題点
 公務員改革の課題と問題点
   省庁の巨大サイフ「特別会計」とは何か?
 “霞ヶ関埋蔵金”の謎!?
討論二:官僚達の実態と本音!          
 元官僚達が明かす実態&真相
 “天下り”徹底検証!!
討論三:本当に“日本の官僚”はダメなのか?!      
 官僚・公務員の優秀さを問う!
 戦後の官僚といまの官僚達の違い
 優秀な若者の“官僚離れ”をどうする?
 官僚、公務員の堕落・腐敗ぶりはいったいナゼ?!
討論四:これから何をどーすべきか?!        
 国家公務員法等の一部改正法案のメリット、デメリット
 公務員改革と地方分権しか日本を救えない!?
“官僚叩き”だけでいいのか?
など
3 他山の石
 (1)総論
 どうして、以下が他山の石なのか、どうして「朝生」のあらましにこんな話を付け加えたのか、不思議に思われる方は、「朝生」を見ましょうね。(録画でもユーチューブでも結構です。)
 (2)飢餓状態のエジプト一般市民
 世界中で食糧価格が値上がりしています。
 エジプトでは、政府が欧州向けの果物の生産に力を入れてきたこともあって穀類は輸入に頼ってきたことと、貧しい人々のための食糧補助金が保健・教育費を上回るという状況の是正を政府が図りつつあったこととが相まって、穀類を中心とする食糧価格の値上がりが、一般市民の生活を文字通り直撃しています。
 人口の三分の二にものぼるエジプト人が価格の97%をカバーする補助金付きのパンを食べています。
 ここのところ、その対象者が増える一方だというのに、他方で小麦粉が不足し、パン屋の働き手も不足しているため、一時、パンを求めて午前3時からパン屋の前に行列ができる事態になりました。こぜりあいで死傷者すら出ました。暑い日に並んで心臓麻痺で亡くなった人もいます。
 補助金付きのパンの方が家畜用のエサより安くなってしまったため、農民が家畜用にパン屋からパンを横流ししてもらうようになったことも、パン不足に拍車をかけています。小麦粉の段階でヤミ市場に横流しする者も後を絶ちません。役人は賄賂をつかまされおり、摘発は行われていないに等しいのです。
 ムバラク大統領は、急遽、軍と警察にパンを焼くことを命じましたが、それだけでは需要の1%ちょっとしか充足させることができません。
 そこで、大統領は更に、外貨による小麦の国際市場での買付を今年50%近く増やすとともに、今年、昨年に比べて三分の一増の小麦の作付けを行わせました。
 大統領はまた、補助金付きのパンにありつける人を1,700万人増やし、総計5,500万人にしました。
 こうしてようやくパン屋の前の行列は短くなりましたが、小麦以外の食糧の価格は相変わらず高いままです。
 (以上、
http://www.guardian.co.uk/environment/2008/may/27/food.egypt
http://www.latimes.com/news/nationworld/world/la-fg-faoul27-2008may27,0,421070,print.story
(5月27日アクセス)による。)
 あるエジプトの家庭の月~金の朝昼晩の食事とその価格を、ちょうど一年前と比較した記事は、英語の余りできない方でもご覧になるに値します。数字を目で追うだけでも身につまされるはずです(
http://www.guardian.co.uk/environment/2008/may/27/food
。5月27日アクセス)。
 あれやこれやで、誰もがムバラク軍事独裁政権を打倒しなければならないと思ってます。しかし、打倒する手段がないのです。
 エジプトには表現の自由も集会の自由も結社の自由もないからです。
 そのエジプトにも、ようやくインターネットが普及する兆しを見せています。
 そこでインターネット使って反政府運動を立ち上げようとする試みが行われるようになったのですが、これもことごとく政府の手によって芽を摘まれてしまっているという状況です。
 (以上、
http://www.washingtonpost.com/wp-dyn/content/article/2008/05/17/AR2008051702672.html
http://www.washingtonpost.com/wp-dyn/content/article/2008/05/13/AR2008051302197_pf.html
(どちらも5月19日アクセス)による。)
 そこで、エジプトの一般市民の間では、軍がクーデターを起こすしかないという声が密かに高まっているのです。
 (3)南ア黒人による移民狩り
 先週、少なくとも23人のアフリカ諸国からの移民が、南アフリカの黒人・・つい最近までアパルトヘイトの犠牲者だった・・の手で殺されました。
 これは、一つには、南アが殺人と強姦が世界有数の高さの暴力的な社会であることが原因です。
 しかし、最大の原因は、南アの失業率が23%と高く、とりわけ黒人の失業率が40%にのぼっていることです。
 そこに500万人もの移民が押し寄せてきているのです。
 移民は、一般に意志の点でも能力の点でも働き手として秀れている上、アパルトヘイト下で碌に教育を受けることができなかった南アの黒人に比べてその教育水準は高いときています。しかも、移民の方が南アの黒人よりまともな英語をしゃべれます。
 教育を碌に受けていないのですから、南アの黒人は移民の出身国のことについても全くと言っていいほど知識がありません。
 だから、移民と南アの黒人との間で反目が生じないはずがないのです。
 さりとて、移民は簡単に出身国に戻るわけにはいきません。
 特に、ジンバブエからの移民は、帰れば反ムガベ独裁政権側の人間だろうと疑われ、殺されかねないのです。
 マンデラの後を襲ったムベキ(Mbeki)大統領のANC政権は、南アに投資している多国籍企業との間で、多国籍企業側はANC政権が黒人富裕層と黒人中間層を生み出すための黒人優遇政策をとることを認め、その代わりANC政権は多国籍企業に不利な政策はとらない、という暗黙の協定を結び、おかげで南アは5%成長を続けることができています。
 しかしANC自身が、ムベキ派と、ムベキの後継の座を勝ち取ったズマ(Jacob Zuma)の派に割れていますし、1990年代初めにANCと武装闘争を行った(ズールー族の)インカタ自由党(Inkatha Freedom Party)も暗躍を続けており、移民の迫害は、これら派閥、政党間の争いの代理戦争ではないかとも言われているのです。
 そもそも、ジンバブエからの移民が特に増えたのは、ムベキANC政権が、欧米からジンバブエのムガベ独裁政権を守ってきたために、ジンバブエで反ムガベ独裁政権派に対する政治的弾圧が続くとともに、ジンバブエの経済状況が悪化の一途を辿ってきたためなのです。
 ANC政権は、移民の殺害は貧困のためでも排外主義のためでもないと主張し、自分達のジンバブエ政策に対する批判が欧米諸国から改めて投げかけられないようにするとともに、南アの黒人の貧困層対策を怠ってきたとの批判も封じようとしています。
 (以上、
http://www.guardian.co.uk/world/2008/may/25/southafrica
http://www.guardian.co.uk/world/2008/may/25/southafrica1 
(どちらも5月25日アクセス)による。)