太田述正コラム#0077(2002.11.20)
<対イラク戦シナリオ(その2)>
2 対イラク戦の軍事シナリオ
(1)開戦の時期
米国は、中東地域を管轄する米中央軍が、12月中に司令部をフロリダ州タンパからカタールのアル・ウダイド空軍基地に移すと公表したこと等から判断して、12月中には開戦が可能となると思われます(http://www.observer.co.uk/international/story/0,6903,825102,00.html。2002日11月3日アクセス)。
しかし私は、米国は英国抜きでの単独開戦を国際世論対策上絶対に避けると考えており、英国が対イラク戦に投入すると目される、第一機甲師団(ドイツ駐留)隷下の二個機甲旅団の主要装備である合計234両のチャレンジャー2型戦車の砂漠仕様への改装が完了する時期である本年12月末(http://www.guardian.co.uk/military/story/0,11816,813213,00.html。10月17日アクセス)以降、すなわち来年初頭まで開戦はありえないと見ています。
いずれにせよ、これは開戦の必要条件が満たされるというだけのことです。では、開戦の十分条件は何か?問題は、ブッシュ政権が国連を「活用」し始めたことをどう見るかです。
私はブッシュがパウエル国務長官やブレア英首相の説得に応じ、対イラク戦に関しては国際協調路線に舵を切ったと見ています(パウエル長官がどのようにブッシュ大統領を説得したかは、http://www.tokyo-np.co.jp/00/kok/20021119/mng_____kok_____004.shtml(11月20日アクセス)参照)。国連査察の開始が11月27日となったので、査察団による査察報告書の国連安保理事会への提出期限は来年の1月27日までということになりました(http://www.yomiuri.co.jp/05/20021116id27.htm。11月17日アクセス)。しかし、仮にこの報告書の中でイラクの重大な違反行為が指摘されたとしても、その時点では何も起こらず、米国は、安保理に開戦の承認を求め、それが得られるまで忍耐強く待つことでしょう。
今回の査察の根拠となった安保理決議が出るまでに二ヶ月かかったのですから、開戦を承認する決議が出るまでにも長時間を要することは必定です。開戦はそれからだと考えます(http://www.guardian.co.uk/Iraq/Story/0,2763,843065,00.html(11月19日アクセス)を参考にした)。
(2)開戦に至る可能性
英国の高級紙ガーディアン(11月19日アクセスの前掲)は、フセイン政権が今回、国連査察受け入れ表明の書簡で、「いかなる大量破壊兵器も持っていない」と述べた(http://www.tokyo-np.co.jp/00/kok/20021116/eve_____kok_____001.shtml。11月17日アクセス)り、その後も飛行禁止区域を飛行する英米軍機への射撃を止めようとしないこと等から判断して、唯々諾々と査察団の要求に全て誠実に応じるとは到底考えにくく、米英に、対イラク戦開戦の十分な根拠を与えてしまう可能性は100%に近いと見ているのに対し、同じ日付の米国の代表的メルマガであるスレート誌は、現時点では58%程度しか開戦に至る可能性はないと慎重です(http://slate.msn.com/?id=2074152。11月19日アクセス)。
私は、英国と米国のエリートの情勢分析能力には依然有意の差があると考えており、ガーディアンの方に軍配をあげたいと思っています。
(3)展開する米英軍の兵力・部隊
米英軍合わせて20万人(海上兵力を含めると25万人)は必要とされているようですが、米国としては、(海上兵力を除いた)20万人全員を湾岸地区にあらかじめ展開させておく考えはなさそうで、装備品等をできるだけ事前配備しておき、開戦を決定してから一ヶ月ほどかけて、初期の作戦に必要な追加兵力を湾岸に派遣した上で開戦し、その後逐次最大20万人程度まで追加兵力を増派する計画のようです(http://www.nytimes.com/2002/11/10/international/middleeast/10MILI.html(11月10日アクセス)及びhttp://www.nytimes.com/2002/11/18/international/18MILI.html(11月18日アクセス)。http://www.washingtonpost.com/wp-dyn/articles/A33459-2002Nov9.html(11月10日アクセス)やhttp://www.observer.co.uk/iraq/story/0,12239,837325,00.html(11月10日アクセス)も参照した)。
対イラク戦そのものには、20万人もの兵力は必要ないが、イラク内各地域における戦闘終了後、バグダード封鎖・攻略戦を戦いながらも、それら戦闘終了地域の治安維持や行政を行う兵力が必要となることから、このような計画になったと思われます。
では、一体どれくらいの兵力が侵攻作戦そのものに投入されるのでしょうか。
これは、これまでのメディア情報だけではよく分かりませんが、米英陸軍と米海兵隊合わせて10万人強(米英海上兵力を含まず)というところでしょうか。
(4)基本的シナリオ
そこで、やや古いのですが、極めて鋭くかつバランスのとれている9月21日付のワシントンポスト紙の記事(http://www.washingtonpost.com/wp-dyn/articles/A49580-2002Sep21.html。9月21日アクセス)を基本的に参照しつつ、私が考えるところの、来るべき対イラク戦の軍事シナリオをご披露することとしましょう。(典拠が示されているのは、これ以外の典拠にもよった箇所です。)
まず、空爆です。
米英両軍によるイラク空爆にあたっては、1991年の湾岸戦争の時とは違って、イラクの非軍事インフラ(=精油所、鉄道線路、発電所、橋梁等)やイラク軍一般部隊は基本的に標的とはせず、フセイン及びフセインの権力を支える人々、並びにフセイン体制にとって重要な人的資源及びインフラ(=主要軍事インフラ、権力中枢施設)だけをピンポイントで殺傷・破壊することになるでしょう。
(これは、空爆の場合に限ったことではありません。できるだけ多くのイラク軍部隊のフセイン体制からの離反・投降を期待するとともに、対イラク戦終了の後、イラク軍を速やかに縮小再編成した上で、イラク国境を守り、イラク国内の安定を確保するために活用することを考えていることから、米英両政府としては、イラク軍を壊滅させるつもりはないと見てよさそうです(ガーデイアン前掲、及びhttp://www.csmonitor.com/2002/1119/p02s01-woam.html(11月19日アクセス)。)
また、湾岸戦争の時のように、43日間もの長期にわたる空爆の後、ようやく地上軍の攻撃が始まるというようなことはなく、空爆と殆ど同時に地上軍による攻撃が開始されることでしょう(http://www.washingtonpost.com/wp-dyn/articles/A32551-2002Oct28.html。10月29日アクセス)。
地上軍による侵攻作戦は、北のトルコ方面、西のヨルダン方面、南のクウェート方面から一斉に行われることになるでしょう。
この三つの侵攻作戦に共通する目的は、米軍がサウディの基地を出撃拠点として使用できないハンデ等を解消するため、イラク国内の占領地に基地を開設して、バグダード等へ向けて更なる侵攻を行うことです(http://www.observer.co.uk/iraq/story/0,12239,837325,00.html。11月10日アクセス)が、それ以外にも以下のような目的があります。
トルコ方面からの侵攻作戦は、国内にクルド人を抱えるトルコが、既に2000人もの部隊をイラク領内に越境させてクルド人ににらみをきかせている折から、対イラク戦勃発後、クルド人反乱部隊への疑心暗鬼からトルコが対イラク戦に本格参戦するような事態を回避するためのものでもあります。そのため、クルド人が自分たちの自治区の首都にと希望している石油大産地のキルクークを米英軍が先回りしてすばやく制圧し、クルド人のキルクークへの接近を拒む作戦が展開されます。
ヨルダン方面からの侵攻作戦は、イラク西部からイスラエルがミサイルないし無人機で化学兵器による攻撃を受け、イスラエルが対イラク戦に参戦することを回避するためのものでもあります(http://www.nytimes.com/2002/11/18/international/18MILI.html。11月18日アクセス)。
具体的には米軍の特殊作戦部隊が、開戦初期にヨルダンからイラク領内に潜入し、移動式のアルサムード(やアルフセイン。後述)、及び飛行場でないところからも離陸できるL-29無人機(後述)を見つけ次第破壊する作戦を敢行することになっています(Defending against Iraqi missiles–US and Israeli options, Strategic Comments Oct. 2002, IISS)。
最後にクェート方面からの侵攻作戦は、前の二つとは違って、第三国(この場合はイラン)牽制のためではありませんが、シーア派反乱部隊がはねあがった行動をとらないようにするという目的を合わせ持っています。
イラクの現有地上兵力は42万人。うち、通常の陸軍兵力は30万人で、国境地帯に配備されています。その志気は低く、自発的継戦意欲はゼロに等しいと見られており、最高指導部との連絡手段を奪った時点で、殆ど戦わずして瓦解すると予想されています。
残るのは、精鋭の7??8万人の共和国防衛隊(Republican Guard)と最精鋭の1.5??2.5万人の特別共和国防衛隊(Special Republican Guard)です。どちらも、フセイン大統領と同じティクリット出身者(=大統領と同族意識を持つ)が多く、給与、待遇も良く、士気旺盛だと言われています(クリスチャンサイエンスモニター前掲)。
(4)三つの障害
ア 対都市戦
上述したように、あっと言う間に陸軍兵力は雲散霧消して砂漠や田園地帯における戦闘は終結するとしても、問題は都市の攻略であり、とりわけ問題となるのは、500万人(600万人とも言われる)の住民を擁する大都会でイラクの政経中枢のバグダードの攻略です。
孫子に、「下策の最たるものは都市を攻撃することだ。他に方策がない場合にのみ都市を攻撃せよ。」とあります(Samuel B. Griffith, Sun Tzu–The Art of War, Oxford University Press 1971 PP78)(注)が、都市は一般住民が多数混在し、見通しが余り利かず、障害物が多いこと等から、対都市戦は、原始的戦闘(primordial combat)、三次元戦(three-dimensional warfare)、或いは偉大なる衡平器(the great equalizer)と評される、米軍の質量ともの優位が極端に減殺される戦いです。
(注)原文の書き下し文は、「その下は城を攻む。攻城の法は、已むを得ざるが為めなり。」ですが、英米では、この「城」をcity(都市)と訳すのに対し、日本では当然そのまま「城」と書き下します(例えば、浅野裕一「孫子を読む」講談社現代新書や金谷治訳注「孫子」岩波文庫(http://maneuver.s16.xrea.com/cn/sonshi1.htmlやhttp://plaza10.mbn.or.jp/~aa/suntzu.html(11月4日アクセス))より孫引き)。日本の都市とは異なり、ユーラシア大陸の古代・中世都市はすべて城壁に囲まれているので、どちらも間違っているわけではありませんが、文意の受け止め方が微妙に違ってきます。なお、孫子は春秋時代(BC770-403)の孫武が著者とされますが、実在した人物かどうか不明です。孫子が書かれた時期は戦国時代(BC403-221)の可能性が高いとも言われています(Griffith前掲参照)。
その上、(孫子の時代を含めた)先の大戦までの時代とは異なり、米英側には、民間人の死傷者を最小限に押さえなければならないという至上命題があります。
このような対都市戦における米英軍のハンデや、湾岸戦争の時の経験をふまえ、フセイン政権は、軍の指揮統制センター等の主要軍事施設を病院等の人道的民間施設内に移しています。そのため、いくら米英軍が主要軍事施設をピンポイントで攻撃することに努めたとしても、民間人にいわゆるコラテラル・ダメージが発生することは避けられません(http://ua.prometheus.com/ua/index.cfm?user_key=300993&whois=96796913-490B-43CB-9E3A5EAD81EC5BFA&external=yes&noredirect=yes。10月30日アクセス)。
バグダードを包囲して完全に封鎖した上でバグダード攻略を行うことになった暁には、民間人死傷者の発生を極力少なくするため、米英軍は区画を一つずつ落としていくような戦い方は避け、一般住民や降伏した兵士達の脱出路を確保する一方で、フセイン及びフセインの権力を支える人々、並びにフセイン体制にとって重要な人的資源・インフラのみの殺傷・破壊に努め、バグダードの防御体制、ひいてはフセイン政権の瓦解を図ることになるでしょう(http://www.washingtonpost.com/wp-dyn/articles/A43579-2002Oct30.html。10月31日アクセス)。
その際、優秀な夜間暗視装置を装備する米軍は、(バグダードへの電力供給を絶った上、)夜戦を多用するものと思われます(http://www.globalsecurity.org/military/ops/iraq-options.htm。11月19日アクセス)。
このバグダードの周辺(バグダードへの主要三街道等)を守るのが(湾岸戦争の時、多国籍軍に頑強に抵抗し、停戦後、南部のシーア派と北部のクルド人の反乱を情け容赦なく鎮圧した)共和国防衛隊であり、バグダードの市内でフセイン政権を、5千人の治安部隊ともに守るのが(ティクリット出身が8割を占めると言われる、クサイ(=フセイン大統領の次男)が指揮する)特別共和国防衛隊です。両防衛隊は、既に触れたように志気は旺盛で、都市戦訓練も一応受けてはいますが、フセイン政権と最後まで運命をともにするのは、せいぜいのところ、権力のお裾分けに直接あずかっている1000名程度であろうと見られています(http://www.guardian.co.uk/Iraq/Story/0,2763,841232,00.html(11月16日アクセス)、http://www.washingtonpost.com/wp-dyn/articles/A64314-2002Nov16.hltm (11月17日アクセス)、及びクリスチャンサイエンスモニター前掲)。
結論的に言えば、米国防省防衛政策評議会議長のリチャード・パール氏と同様、私はバクダード攻略戦は比較的短時間で終わると見ています。その理由として氏は、両防衛隊等の中核がフセイン大統領の同郷・同族者によって占められており、イデオロギーに基づく忠誠心などないからだとしておられます(ワシントンポスト同)が、私としては、大統領の同郷・同族者を含め、イラク人の多くがイラクの長年月にわたる被植民地経験(近年だけとっても、オスマン・トルコと英国の支配を受けた)を通じて風見鶏的個人主義者になってしまっていると推察される点をあげたいところです。
イ イラクによる化学・生物兵器の使用
湾岸戦争の時には、イラク軍は25のミサイル弾頭に生物兵器を、50のミサイル弾頭に化学兵器を搭載しており、多国籍軍側から核攻撃を受けたり、首都バグダードの安全が脅かされた場合には、ミサイル部隊は、生物・化学兵器弾頭を搭載したミサイルを発射してもよいことになっていました。幸い、この時には生物・化学兵器が使われるまでには至りませんでしたが、今度の対イラク戦は、フセイン政権打倒、イラクの体制変革を標榜して行われる以上、生物・化学兵器が使われる可能性は極めて高いと言うべきでしょう(Strategic Comments 前掲)。
現在、イラクがどれくらい生物・化学兵器を持っているのかは、よく分かっておらず、まさに今回の国連査察によって解明されようとしています。
問題は、生物・化学兵器の運搬手段です。
イラクがまだ保有しているスカッド系ミサイルは、12から36基くらい(12から25基くらいという説もある(http://www.washingtonpost.com/wp-dyn/articles/A43598-2002Oct17.html。10月18日アクセス))しかなく、うち、500kgの弾頭をつけて650kmの射程のアルフセイン(al-Hussein。スカッドBの射程を延伸したもの)が6-16基の間で、残りは射程250kmのアルサムード(al-Samoud。スカッドの射程を延伸したもの)である、と推定されています。南北の飛行禁止区域に持ち込まないでもイラク国外に向けて撃ち込むことができるのはアルフセインだけですが、アルフセインは飛行中に分解しがちである上、CEP(半数必中界)が3000mもあり、軍事目標に向けて使用することはできず、もっぱら民間人向けのパニック兵器としてしか意味はありません(http://www.atimes.com/atimes/Middle_East/DH17Ak03.html。8月17日アクセス。ただし、ミサイルの射程は、Strategic Comments 前掲、による)。
湾岸戦争の時にイスラエルは、主要な都市に、通常弾頭を搭載したアルフセインを39基も打ち込まれ、急遽米国が供与したパトリオットPAC-2ミサイルも、軍事基地ならぬ都市全体を守るのは荷が重く、イスラエル市民はさんざんな目に遭ったのですが、今度は通常兵器ならぬ化学兵器(生物兵器の可能性は低いことについては後述)を搭載したアルフセインが飛んでくるわけです。
幸いなことに現在では、イスラエルが米国の協力を得て開発したアロー(Arrow)2ミサイル(遠距離・高々度対処)と米国供与のパトリオットPAC-2ミサイルの改善型(近距離・低高度対処)の二層防御態勢が整備されており、計算上はイスラエルに向かって飛んでくるアルフセインの9割方は撃墜できます。
クウェート等イラク国外所在の米英軍の軍事基地については、狭い範囲を守ればよいので、パトリオットPAC-2改善型だけで基本的に対処可能です。
しかし、生物・化学兵器の運搬手段はミサイルだけではありません。
生物兵器の弾頭をミサイルに搭載した場合、イラクの現在の技術では、ミサイルが着弾した時の衝撃で、9割方の病原菌が死滅してしまうので、そもそもミサイルは使えないのですが、湾岸戦争以降イラクは、保有する78機のチェコ製の練習機L-29を無人機に改造し、これに生物兵器を搭載できるようにしたと言われています。その後の英米による爆撃等でどれだけこの78機が目減りしているかは定かではありませんが、仮に10機程度残っているとしても、この無人機には生物兵器を、ミサイルに搭載した場合に比べて20倍も搭載することができ、しかも目的地に到達した場合、病原菌は100%生き残って猛威をふるうことになるので、容易ならぬ脅威であることは確かです。
この無人機は低空を飛ぶので、アロー2は役に立たず、パトリオットPAC-2改善型も、飛行速度・パターンの全く異なるアルフセインとL-29無人機の双方に対処することは容易ではありません。
この脅威に対しては、米英軍の軍事基地にパトリオットPAC-2改善型のほか、軽快なスティンガー対空ミサイルを積んだアベンジャー装輪車を配備して、スティンガーでL-29無人機に対処する予定です。(以上、Strategic Comments 前掲による。)他方、イスラエルの都市すべてにそれぞれ多数のアベンジャーを配備するわけにはいきません。
また、イラク国内に攻め込んだ米英軍にとっては、いくら命中精度が低いとは言っても、化学兵器弾頭を搭載したアルサムードは厄介者です。
だからこそ、先に述べたヨルダン方面からの侵攻作戦が展開されるわけです。
ウ イラク市民の受難
対イラク戦が始まったら、数百万もの難民がイランに脱出しようとするでしょうし、バグダードの500万市民は、水と電力を絶たれた上、飢餓に苦しむことになるでしょう。しかも、米国防省は、対イラク戦開始後当分の間は、イラクの多くの地域で人道援助関係者の活動を認めない方針のようです。
他方、湾岸戦争前と比較して、最大発電可能量は現在4,400メガワットと半分以下に落ちており、日常の電力必要量すらまかなえない状況ですし、自由に食料が買え、イラク国民にも購買力があった湾岸戦争前と違って、今ではイラクの総人口の9割以上が食糧配給制度の下にあります(http://www.washingtonpost.com/wp-dyn/articles/A32551-2002Oct28.html。前掲)
よって、イラク市民にある程度窮乏生活に耐性ができていると思われること、そして戦争終結までの期間がそれほど長くないこと(後述)、に期待せざるをえません。
(5)戦争終結までの期間
ラムズフェルト米国防長官は、11月14日に、対イラク戦が「5日間なのか5週間なのか5ヶ月なのかは分からないが、それ以上かかることはありえない」と語ったと報じられています
(11月16日アクセスのガーディアン前掲)。
また、イラク情勢にも詳しい友人の幹部自衛官は、バグダード以外の地区の制圧に1??2週間、バグダード封鎖に1週間、バグダード攻略に1??3週間で、合わせて3??6週間といったところだろうと言っています。
この二つの所見は矛盾していません。おおむね幹部自衛官氏の言うとおりで、どんなに予測が狂っても、ラムズフェルト長官の言った範囲にはおさまると考えたいと思います。
<後書き>
ご質問等があれば、お寄せ下さい。
なお、米英側の個別の部隊や装備については殆ど触れませんでした。これらについては、別の機会に触れることもあろうかと思います。