太田述正コラム#6656(2013.12.26)
<皆さんとディスカッション(続x2124)>
<コラム#6652の訂正>(ブログは訂正済)
最初の「<名無しさん@安全保障>」と「 いや、でも米韓相互防衛条約も米比相互防衛条約も・・・」の間に下掲を挿入する。
お答えありがとうございます。
≫日米安保条約に基づいて日本が米国に提供するサービスは、「在日米軍」に係る「協力」や「安全保障」といった曖昧なもの、ですよ。≪(コラム#6650。太田)
基本的な勘違いをしていました。
第五条
「各締約国は、日本国の施政の下にある領域における、いずれか一方に対する武力攻撃が自国の平和及び安全を危うくするものであることを認め、自国の憲法上の規定及び手続に従つて共通の危険に対処するように行動することを宜言{宜はママ}する。」
を義務だと思っていましたが、そうではないのですね。
領域防衛義務についても分かりやすい説明ありがとうございます。
典拠を求めたのは、これらのようなことを自分で勉強する際に何を参照すればいいのか知りたかったからなのです。
太田さんのバックグラウンドから言って、英語文献なのでしょうが…。
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<太田>(ツイッターより)
「永遠の0」と「キャプテン・フィリップス」を見てきたけど、どっちもうれしい予想ハズレで実によかったねえ。
それぞれ映画評論で紹介できそうだ。
ところで、弾薬提供問題は、韓国苦戦のうちに笑い話的展開が日韓で続いてるねえ。
では、明日<(=本日)>。
「ロボット競技会 日本は優勝、中国は棄権…」
http://j.peopledaily.com.cn/94473/8495192.html
米国防省(のDARPA)主催の競技会で米国企業(Google)が優勝したのに、あえて「日本…優勝」、「中国…棄権」と書く人民網。その心は、日本を模範にせよとの人民洗脳に向けての決意だ。
<太田>
関連だ。
最近にも、人民網の、日中文化同祖論、つまりは日本が支那文明の強い影響を受けている旨の記事を紹介した記憶があるが、数日前のこの記事もそうだな。
記事中にも仏教への言及もなされているが、あたかも日本思想が圧倒的に儒教の影響を受けているかのような内容だ。
これは、分かってて、同祖なんだから、日本の人間主義は支那のものでもある、として、人民に身に付けるよう促す作戦だと見た。
「孔子と孔子廟の日本での特殊な地位・・・」
http://j.peopledaily.com.cn/94473/8488668.html
以上は、有料読者の、現在連載中の「『チャイナ・ナイン』を読む」シリーズの理解を深めるんじゃないかな。
無料読者は、このシリーズが公開された時にぜひ読んでくれたまえ。
<太田>(ツイッターより)
「中韓、首相靖国参拝を非難 「重大な政治的障害に」…」
http://www.asahi.com/articles/ASF0TKY201312260098.html?ref=com_top6
< http://sankei.jp.msn.com/world/news/131226/chn13122612430004-n1.htm 中共の具体的「反応」>
中共は意識的に、韓国は結果的に、日本の首相に再び定期的に靖国参拝させるための環境醸成をしてきたと見るべきであり、中共当局は一つ懸案を解決したと内心喜んでるだろな。
よかったね。
<太田>
関連だ。
要するに、中共当局は、人民の脱マインドコントロール化を図ってるってワケだ。↓
「2013年、中国の主流は抗日ドラマからホームドラマに・・・」
http://j.peopledaily.com.cn/206603/8495067.html
靖国参拝について、BBCは長文の日本批判記事を掲げた。
投稿欄がないので反論投稿ができないのが残念だ。
残念だというのは、このような誤った事実認識を英語圏の人々に改めて刷り込むことで、彼らがミスリードされることを可哀想に思うからだ。↓
http://www.bbc.co.uk/news/magazine-21226068
もとより、日本の政党関係者の言だって、ことごとく、事実認識において間違いだ。
結いの江田代表のコメントも聞きたかったけど載ってないね。↓
「みんな・渡辺代表「個人の信仰の問題」・・・」
http://sankei.jp.msn.com/politics/news/131226/stt13122613010002-n1.htm
「社民・福島副党首「アジアとの関係を極めて悪化させる」・・・」
http://sankei.jp.msn.com/politics/news/131226/stt13122613120003-n1.htm
「公明・山口代表「今後の問題考えると残念」・・・」
http://sankei.jp.msn.com/politics/news/131226/plc13122613020018-n1.htm
「維新・松野氏「タイミングはいかがなものか」・・・」
http://sankei.jp.msn.com/politics/news/131226/stt13122613360004-n1.htm
「維新・藤井氏「高く評価したい」・・・」
http://sankei.jp.msn.com/politics/news/131226/stt13122612120001-n1.htm
この藤井議員の事実認識がどうして間違っているかと言うと、安倍首相は、中共当局の敷いたレールを走らされてるだけだからだ。
恐らく、米国は、好むと好まざるとにかかわらず、公式か非公式かは別にして、また、誰が言うかも別として、日本政府に対して、日本と中・韓の関係を悪化させたことに懸念表明を行う可能性が高い。
そうなれば、ますます中共当局のヨミ通りの展開、ということになる。
米国は、ちゅうよりも、オバマ自身はともかくとして、オバマの部下や米議会人や米知識層はアホやから、この中共当局のヨミ通りに踊ると思うね。
(ま、日本の方も、先ほど紹介したように、安倍以下、威張れた義理じゃないが・・。)
<TA>
日本による、南スーダンの韓国軍に対する弾薬の提供についてですが、この情報を日本が早々に公開したことについて、軍事機密の観点から非常に問題があると思うのですが、いかがでしょうか。
弾薬の備蓄量や補給の状況等は、現地部隊にとって死活的な機密情報だと認識しています。
政治的な意図か軍事的な意図かはわかりませんが、「韓国側は実弾の提供を公表しないように要請してきた」そうですし・・。↓
「・・・産経新聞は「韓国側は実弾の提供を公表しないように要請してきた」とした上で「日本政府は官邸主導で、最近発足した国家安全保障会議(NSC)の存在意義を示す機会として活用した」と報じた。・・・」
http://www.chosunonline.com/site/data/html_dir/2013/12/25/2013122500378.html?ent_rank_news
弾薬の不足の情報が、現地では機密などではない周知の事実だった場合(まず有り得ないと想像しますが・・)は、逆に、日本の支援を大々的に報じることが抑止力になる、という可能性もないわけではないでしょうが、まあ、ないでしょうね。↓
「・・・日本政府は24日、完全に異なる主張を行った。小野寺五典防衛相は、南スーダンに派遣されている自衛隊の責任者がテレビ会議で報告を受けた内容を映像と共に公開した。それによると、同責任者は「21日午後10時ごろ、韓国軍の現地部隊責任者である大領(大尉)から電話で実弾1万発を貸してほしいという緊急の要請があった」と報告したとされる。
同責任者によれば、韓国軍の大領が「(ハンビッ部隊の駐留地であるボルの宿営地には1万5000人の避難民がいるが、ボルを守っている部隊は韓国軍だけであり、周辺は敵だらけだ」として、差し迫った事情を説明し、実弾支援を求めたという。それが事実であれば、国連経由ではなく、現地の部隊長が直接要請を行ったことになる。」
http://www.chosunonline.com/site/data/html_dir/2013/12/25/2013122500377.html?ent_rank_news
今年一月に起きたアルジェリア人質事件の対応についての「安倍首相の安全保障音痴ぶりは重症です」(コラム#5983。太田)との評は、今回の件でも裏付けられたと思いました。
<太田>
23日に(国家安全保障会議、持ち回り閣議を経て)韓国軍に弾薬を提供する前に、日本政府が弾薬提供の要請があった旨公表していたらともかく、そうではなさそうである以上、あなたの批判は成り立ちません。
それとも、弾薬提供以前に日本政府が要請があった旨公表した事実があるのですか?
あるのなら示してください。
(仮に政府部内の誰かによってリークがなされたというのであれば、それこそ、特定秘密保護法に触れることになります。)
<TA>
「21日午後10時ごろ、韓国軍の現地部隊責任者である大領(大尉)から電話で実弾1万発を貸してほしいという緊急の要請があった」以後の経緯は、「UNMISS司令部は22日、・・・弾薬の提供を要請」、「23日午前からメディアが報道を開始」、「23日午後2時に閣議を開き、実弾提供の是非を最終決定」、「23日中に韓国軍に提供」という流れだったのではないでしょうか。↓
「国連軍の一員として、南スーダンに派遣された韓国軍の「ハンビッ部隊」が23日、国連を通じ、日本の陸上自衛隊から提供を受けた実弾1万発は、約330万ウォン(約32万5000円)相当、即席麺6箱分のサイズだ。・・・
現在南スーダンには、韓国軍約280人、日本の自衛隊約320人が派遣されている。両国はいずれも国連の勧告に従い、実弾を携行した。韓国国防部は、日本は相対的に安全な首都ジュバに駐留しているため、治安の不安定なボルに駐留している韓国軍に弾薬を提供する余裕があったとの見解だ。ハンビッ部隊には日本だけでなく、米国も小銃弾を提供した。
韓国国防部関係者は「米軍は反政府軍を刺激する可能性があるとして、実弾提供の事実を公表しなかった。日本はそれを全く考慮せず、メディアに情報を流した」と批判した。
韓国政府はハンビッ部隊の安全に配慮し、日本側に報道自粛を求めた。しかし、日本では23日午前からメディアが報道を開始した。韓国国防部関係者は「日本政府は23日午後2時に閣議を開き、実弾提供の是非を最終決定することになっていた。国防部はその段階で国内メディアに説明するつもりだったが、日本政府が事前に意図的にリークしたようだ」と語った。・・・」
http://www.chosunonline.com/site/data/html_dir/2013/12/26/2013122600760.html
「安倍内閣は23日、・・・陸上自衛隊の弾薬1万発を・・・韓国軍に無償譲渡する方針を閣議決定した。・・・
この日、安倍晋三首相や小野寺五典防衛相ら関係閣僚が首相公邸に集まり、国家安全保障会議(日本版NSC)を開いて譲渡方針を決定。その後の持ち回り閣議で閣議決定した。弾薬は23日中に韓国軍に提供された。・・・
UNMISS司令部は22日、日本政府に対し、UNMISS部隊と宿営地に避難している住民らを守るための武器使用に備え、不足している弾薬の提供を要請した。・・・」
http://www.asahi.com/articles/ASF0TKY201312230201.html
細かい時系列も重要だと思いますが、私が問題だと思ったのは、「1万発」という具体的な数字と、韓国側が弾丸の不足を訴えていることを公表したことです。「韓国軍約280人」がこの一万発と併せどの程度の弾薬を持っているのかわかりませんが、軍事に明るい方であれば、この情報からおおよその見当はつくのではないかと想像します。
この規模の軍隊が一回の交戦でどの程度の弾薬を消費するのか、戦闘継続可能時間はどの程度か等々、全く知りませんし、今回のような積極的戦闘行為を行わない類の軍隊であれば一万発あれば十分なのかもしれません。しかし、こと安全保障(軍事)に関することであれば、私は、日本のメディアよりも、韓国のメディアを信用すべきだと考えています。その韓国が「ハンビッ部隊の安全に配慮し、日本側に報道自粛を求めた」以上、この件を早々に公表した日本政府の行為の方に問題があると認識しました。
安全保障(軍事)を放擲している日本で生まれ育ったので、自分の軍事に関する感覚がまともなのか歪んでいるのかさえも、よくわからないのです・・。再度お聞きしますが、こういった類の情報を、こういったタイミングで公表することは、軍事的観点から、問題はないのでしょうか。
<太田>
鋭い問題提起だったですね。
私の方でも調べてみました。
次のような記事もありましたね。↓
「・・・日本ではメディアが前面に出て、弾薬を積んだヘリが韓国軍部隊に到着する前からこの問題を大々的に報じ・・・」
http://www.chosunonline.com/site/data/html_dir/2013/12/26/2013122600743.html
さて、韓国政府が本件についてどこまで真実を語っているのか分かりません・・この記事に関して言えば、そもそも持ち回り閣議だったのですから日本政府が特定の時間に「閣議を開」くはずがありません・・が、日本政府の閣議終了後韓国政府も本件を公表するつもりであったというのですから、現実に弾薬が韓国軍に提供されるまで公表を控えて欲しいという要請が韓国側(や国連側)からなされたわけではない、ということだけは確かなようです。
韓国の言っているところの、予備弾薬が不十分なので提供を要請した、というのが事実であるとすると、というより事実だったのでしょうから、そもそも、要請内容の秘匿度は余り大きくなかった、と言えそうです。
そのような前提の下で、国家安全保障会議終了後、(持ち回り閣議は形式だけのことであるとの判断の下、)日本政府の担当者が本件についてメディアにリークした、ということではないでしょうか。
なお、弾薬の数については、以下のような報道がなされています。↓
「・・・米軍からも5.56ミリ弾3417発と7.62ミリ弾1600発の提供を受けた。・・・」
http://mainichi.jp/select/news/20131224k0000m010133000c.html (24日付)
これは、米軍からも国連からも、提供弾薬数についての秘匿要請がなかったことを示しています。
ということは、日本に提供要請した弾薬数についても、韓国軍(や国連)から秘匿要請がなかったことを推測させます。
日本政府の担当者が以下のようなところまで踏み込んで紹介する必要があったのかどうかはともかくとして・・。↓
「・・・韓国が提供を求めた際、現地部隊が装備している銃弾数について「1人当たり15発」と説明していたことが24日、分かった。政府高官が自民党幹部に伝えた。・・・」
http://sankei.jp.msn.com/politics/news/131225/plc13122511010006-n1.htm
こういう話は、TPOを含む事実関係が大切です。
「実戦」配備された特定部隊の弾薬保有状況は、一般的には秘匿すべきだけど、近隣の部隊から容易かつ迅速に補給を受けることができる、ということを誇示することが敵軍・・今回は反乱部隊・・による攻撃に対する抑止になりうるわけであり、今回は、現地韓国軍も自衛隊も米軍も、そしてUNMISS司令部も、後者の判断を取り、それに日韓両政府とも基本的に従った、ということではないでしょうか。
関連記事だ。↓
見苦しいぞー。↓
「【社説】日本にとって32万円の弾薬提供はそんなに騒ぐことか・・・」
http://www.chosunonline.com/site/data/html_dir/2013/12/26/2013122600743.html 前掲
「PKO:「弾薬1万発の真実」めぐり韓日の攻防激化 韓国「日本に直接要請したのではない。弾薬があるか確認しただけ」 日本「韓国が要請してきた」・・・」
http://www.chosunonline.com/site/data/html_dir/2013/12/26/2013122600751.html
事実関係は次の通り。↓
「銃弾要請は現地韓国軍部隊長と韓国大使館から 菅長官・・・」
http://sankei.jp.msn.com/politics/news/131225/plc13122513550014-n1.htm
「首相、銃弾提供で・・・「現場からは感謝もらっている」・・・」
http://sankei.jp.msn.com/politics/news/131225/plc13122512530010-n1.htm
それでは、その他の記事の紹介です。
言い訳になってないよ、大沢クン。↓
「・・・大沢は「実子と思ってきて違う結果が出ても私の気持ちが急にブレることはない」と説明しつつ、「正直受け入れられないのが本音」と吐露した。・・・」
http://sankei.jp.msn.com/entertainments/news/131226/ent13122607090003-n1.htm
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太田述正コラム#6657(2013.12.26)
<『チャイナ・ナイン』を読む(その4)>
→非公開
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