太田述正コラム#6680(2014.1.7)
<皆さんとディスカッション(続x2136)>
<太田>(ツイッターより)
「…米国は一体日本を制御できるのか?ひとたび平和憲法がなくなれば、安倍のたぐいの時代逆行を制限できるものがあるのか?ひとたび日本の民族主義感情が煽動されれば、在日米軍も撤退しなければなくなるのではないか?日本はすでに先進的なロケット技術、核技術、十分な核物質の蓄えがある。核の敷居を越えると日本が決意した場合、米国の説得にどれほどの効果があるのか?…」
http://j.peopledaily.com.cn/94474/8504482.html
自らの発動した日本再軍備/「独立」強要戦略の順調な進展を高らかに寿ぎ、米国を嘲笑する記事だ。
太田コラム読んでればそう思えてくるっちゅうかそれ以外解釈できるけ?
<TA>
記事を一読してもおっしゃる意味が分からず、再読してやっとわかりました。
「米国人が少し怒っているのは確かだ。第2次大戦後ずっと米国は日本を犬のように言うなりになる小さな従僕と見なしてきた。米日安保条約によって日本にくつわをかませると同時に、負担も背負わせた。冷戦になると、日本を再武装させた。日本経済最盛期には、「プラザ合意」によって日本を抑えつけた。米国が対外戦争を発動するたびに、日本は「喜んで」金を出した。「アジア太平洋回帰」が必要になると、日本を檻から出して「急先鋒」にしようとした。」
これは、アメリカが日本を不当に扱ってきた(だから日本が「独立」したいと思うのは当然だ)、という風にしか読めません。いわゆる「瓶のフタ論」(コラム#5023)のように読むことも無理があります。
「だが、安倍が祀るA級戦犯の両手は米国人の血にもまみれており、米国が不愉快になるのは当然だ。」
これは、アメリカの感情が公憤ではなく私憤であると言っているようにも受け取れます。
「安倍の心の中には日本が侵略戦争を発動したことに対するやましさはなく、あるのは広島と長崎の2発の原爆に対する恨みと、戦後日本が「不公平な待遇」を受けたことに対する憤慨だけだ。・・・日本はすでに先進的なロケット技術、核技術、十分な核物質の蓄えがある。核の敷居を越えると日本が決意した場合、米国の説得にどれほどの効果があるのか?」
原爆の話が出てきたことがやや唐突に感じました。おそらくは後段を言うために前段をやや無理矢理に挿入したのでしょう。日本の核武装に共感しているように読めます。
最後に、
「一見落ち着いた「失望」は、米国人の複雑でデリケートな心情を反映している。」
これ、皮肉なんでしょうか。「複雑」・「デリケート」なんて、アメリカ人に最も似合わない言葉でしょうに・・。
<べじたん>
≫こういう外国人との意見交換は毎年何人くらいされ、その中で日本人は何人くらいなのか検討がつきますか? ≪(コラム#6680。べじたん)
≫後の方のご質問については、私は国内についても国外についても、情報源はもっぱらネットの公開情報である、とご承知おきください。≪(コラム#6680。太田)
中共が意見交換で招いた日本人は何人くらいなのか、ということでした。
太田さんは、10人中の1人だったのか、100人中の1人だったのか。
そういう雑談はされましたか、ということです。
<太田>
最初の訪問の時に仲介した大陸浪人的日本人との会話から得た感触は、10人くらいというものでしたが、それは10年も前のことであり、現在の状況は知りません。
それでは、その他の記事の紹介です。
林景一君
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%9E%97%E6%99%AF%E4%B8%80
とは、スタンフォード大留学時期が一年間重なっており、当時、話をしたこともあるが、中共当局サマのやらせのおかげで国際的「脚光」を浴びてるね。↓
「駐英日本大使、参拝批判に反論 「軍国主義復活ではない」・・・」
http://www.tokyo-np.co.jp/article/world/news/CK2014010702000143.html
Japan hits back at China over Voldemort comparisons
Both sides have now likened each other to Harry Potter villain in diplomatic row played out in articles in British press・・・
http://www.theguardian.com/world/2014/jan/06/japan-china-voldemort-harry-potter
インドも中共当局サマのやらせに踊らされてるね。
ま、中共当局サマとしては、近い将来、日印ともにそっくりいただいて仲間にしちゃおって魂胆だろ。↓
「「中国の脅威は現実」日印、防衛協力を一層強化・・・」
http://www.yomiuri.co.jp/politics/news/20140107-OYT1T00196.htm?from=top
「中国」は、「日本に追い付く」最後の総仕上げの、しかし、最も困難なところの、人間主義化についに乗り出している、と見るわけさ。
なお、軍事力をよく使うなんてのは、ごくありふれた話であって、戦後の日本の軍事禁忌が異常なだけだよ、チミ。↓
「・・・中国の多くの学者は「甲午戦争が中国近代史の重要な分水嶺となり、また中国 民族主義の機運を高めることになった」と指摘し、「中国社会の構造転換の起点となった」という認識を持っている(鐘文博著『甲午戦敗後近代中国民族主義的 形成』)。・・・
梁啓超が著した『戊戌政変記』には次のような一句がある。
「わが中国の4000余の歴史の夢が呼び覚まさせられた。それは甲午敗戦で台湾を割譲され、二百兆(当時の邦貨にして2億両)を賠償させられた後に始まった」・・・
「日本に追い付く」は100年以上の長きにわたって目標であり続けた。・・・
『尖閣諸島・琉球・中国』 (浦野起夫著、2005年、三和書籍)によれば、中国は「軍事作戦を辞さないとする国民性の国家」であるという。同著は「中国は1950年の朝鮮戦争への 参戦以来、1974年1月の西沙群島の軍事回復作戦、1995年1月の南沙群島のミスチーフ環礁作戦を含めて、計11回の軍事力の対外行使を行ってきている」・・・」
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/39594
「中国」のは日本型経済体制、ロシアのは化石燃料輸出に依存した単なる縁故資本主義であり、両者を一括りにしちゃダメなんよ。↓
「・・・中国やロシアなどに見られる権威主義体制と縁故資本主義を組み合わせた寡頭支配は、こんにち各国の政財界エリートたちに対して、国民国家単位の 政治がコントロールできないグローバル経済の現実を踏まえたひとつの「成功」モデルを提示する格好になってしまっている。・・・
http://business.nikkeibp.co.jp/article/opinion/20131219/257314/?n_cid=nbpnbo_mlt&rt=nocnt
第一次世界大戦前のフランス・・今や見る影もなく落ちぶれている・・の雰囲気を見事に伝える記事だ。↓
<ベルエポックの頂点であった1914年のパリ。↓>
La Belle Epoque: Paris 1914・・・
<当時のフランスは世界最大の自動車輸出国。↓>
France was the world’s biggest exporter of cars, and there was pride, but no great surprise, when the racing driver Jules Goux won the 1913 Indianapolis 500 – in a Peugeot.
<英仏海峡超え、地中海超え、の飛行を次々に行ったのもフランス人。↓>
France led the way in the skies. Bleriot crossed the channel in 1908, and in 1913 the sportsman Roland Garros – later (after his death in combat in the last month of the war) to give his name to the tennis stadium in Paris – completed the first ever crossing of the Mediterranean.
<映画を発明したルミエール兄弟。世界最大の映画生産本数を米国と競ったのもフランス。↓>
And in cinema, invented, of course, by the Lumiere brothers two decades before, France vied with the US for first place in number of films produced – more than 1,000 every year, made by names still familiar today like Gaumont and Pathe.・・・
<ピカソとブラックがキュービズム絵画を始めたのもその頃。↓>
In art, Pablo Picasso and his friend Georges Braque tried (in Paris, of course) to capture this with their new idea – cubism. ・・・
<当時、活躍したシャルル・ペギー。
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B7%E3%83%A3%E3%83%AB%E3%83%AB%E3%83%BB%E3%83%9A%E3%82%AE%E3%83%BC ↓>
The French writer Charles Peguy is much quoted on this. He said, at just this moment: “The world has changed more in the last 30 years than in all the time since Jesus Christ.”
<そして、ジャン・ジョレス。
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B8%E3%83%A3%E3%83%B3%E3%83%BB%E3%82%B8%E3%83%A7%E3%83%AC%E3%82%B9 ↓>
Charles Peguy is forgotten now, outside France. So, too, is another contemporary figure, Jean Jaures. The two men knew each other. At one time they were friends and allies. They died violently, but in very different circumstances, in the summer of 1914. Their stories tell a lot about the anxieties of the age.・・・
<この二人の名前がフランス全土の学校、通り、図書館、スポーツセンターに冠されている。↓>
A century has gone by, but one of the bizarre things is how the names of Jaures and Peguy live on in France. Everywhere there are schools, and streets, libraries and sports centres that bear their names. And in politics, it’s as if modern-day British leaders were in the habit of quoting, say, Keir Hardie and Kipling.・・・
http://www.bbc.co.uk/news/magazine-25619822
2004年にスンニ派叛乱勢力が席巻したイラクのファルージャがまた落ちた。↓
・・・In 2004, the town of Fallujah was the scene of some of the most pitched fighting between US forces and Iraqi insurgents. It was credited as a turning point that helped solidify allied control of Anbar province and set the groundwork for a more stable Iraq.
<アルカーイダに攻撃されて、勘違いしてイラクを攻撃し返した米国は、むしろアルカーイダ勢力をイラクで伸長させてしまった。↓>
News that the town has once again been taken by rebels aligned with al-Qaeda has people wondering if allied efforts there were for naught.
“The people who attacked us on 9/11 now own the key battleground in a war we launched ostensibly in response,” writes James Joyner of Outside the Beltway blog. “Aside from regime change itself, it’s not clear that we accomplished a single one of our objectives in that conflict. There was no nuclear program. The chemical weapons cache consisted of a few leftovers from the world wars. The Maliki government is corrupt and incompetent to provide basic security for the citizenry. And now al-Qaeda is running major outposts.”
<その原因は、三つある。そもそも米国がイラクを攻撃したこと、オバマが米軍を早く引き揚げ過ぎたこと、イラクのマリキ首相がスンニ派との和解路線を拒み続けていること。↓>
This wouldn’t have happened if the US hadn’t hastily pulled out of Iraq, writes Digital Journal’s Abdul Kuddus: “With the withdrawal of US forces from Anbar province two years ago, al-Qaeda took advantage of the power vacuum and drove out the Iraqi forces.”・・・
”Prime Minister Nouri al-Maliki has no-one but himself to blame,” he writes. “If he had embraced the Sunni Awakening movement, Iraq likely would have remained relatively peaceful. Instead, the moment that US troops left Iraq, he immediately began victimizing prominent Sunnis.”・・・
Fox News national security analyst KT McFarland writes that both Mr Bush (for getting the US into Iraq) and Mr Obama (for getting the US out too soon) are to blame. ・・・
http://www.bbc.co.uk/news/blogs-echochambers-25629784
だけど、シリアじゃあ、「穏健派」叛乱勢力がアルカーイダ系叛乱勢力に対して巻き返しを図りつつある。
結局のところ、アラブ世界では、自由民主主義が定着するまでは、少数派が諦めるか国が分割されるかするまでは、相当期間、武力による内紛は避けられないってことだろうね。
(ボクの大胆な予想:イラクでもシリアでもアルカーイダ系は駆逐され、イラクはシーア、スンニ、クルド地区に三分割され、シリアではスンニ派穏健派が最終的に勝利を収める。)↓
Syrian rebels pin down al-Qaeda-linked fighters in Raqqah・・・
http://www.washingtonpost.com/world/middle_east/syrian-rebels-pin-down-al-qaeda-linked-fighters-in-raqqah/2014/01/06/4aa9085c-770a-11e3-af7f-13bf0e9965f6_story.html
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太田述正コラム#6681(2014.1.7)
<またもや人間主義について(その2)>
→非公開
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