太田述正コラム#6627(2013.12.11)
<日本の暴力団(その6)>(2014.3.28公開)
「<考えてみると、>暴対法で暴力団の存在を認め、法より下位の暴排条例で実質的に暴力団の存在を否定しているわけです。・・・
暴排条例は全都道府県で定められ、全国で施行されたのですから、一本の法として立法化されてもいいはずです。しかし立法化すれば、暴対法で暴力団の存在を肯定し、「暴排法」で実質的に存在を否定することになります。ダブルスタンダードであり、誰の目にも法と条例の矛盾が明らかになってしまいます。・・・
暴排条例にこうした矛盾があることは、暴力団側の逆襲を招きます。・・・
2011年10月、大手の宅配会社が暴排条例の全国施行を受けて、・・・暴力団・・・からの荷受け・・・<を行わないという内容の>「通知書」を福岡県の暴力団に送りました。・・・
これに対し、暴力団は、即・・・「回答書及び質問書」を宅配会社・・・に内容証明郵便で送りました。・・・
本件通知<は>貨物利用運送事業法第10条(差別的取り扱いの禁止)に反するものであ<り、かつ、自分達>が配送を依頼する荷物は、国土交通省により認可された・・・宅配会社・・・の宅配便約款等所定の引き受け拒絶事項に該当するものでも<ないところ、自分達>の荷物の荷受けすべてが『暴力団の活動を助長し、又は暴力団の運営に資することとなる利益の供与』(福岡県棒愛情例の第15条3項)に当たると<言えるのか、と。>・・・
<実際には、>宅配会社から委託を受けた小さな店・・・が暴力団からの荷物を従前通り引き受け始めた<ため、話はそれ以上大きくなりませんでした。>・・・
条例はかなりいい加減につくられています。・・・条例が寄生する「利益供与」や「密接交際」<に>は・・・緻密な定義づけがありません。
そのため弁護士や医者、電力会社や水道局が暴力団に利益供与するのはOKだが、ピザ屋や鮨屋が暴力団から注文を受け、多人数分を出前するのはダメだ、葬祭業者が暴力団の葬式を仕切るのはダメだ、印刷屋が暴力団の年賀状や名刺を刷るのはダメだとか、わけの分からない状態になっています。
ウソかホントか、一般的にはその職業に特別法を持つ業種はOK(たとえば医者、弁護士、電力会社、ガス会社、税理士など)、特別法を持たない業種はダメ(例としては食堂、ルポライター、芸能人、出版社、建設業など)といわれています。・・・
<他方、>自治体はやり過ぎが目立つほどです。・・・
<福岡県では、各自治体が、暴力団組長二人とゴルフをしたと警察から通知を受けた9つの建設会社を>入札から締め出し、銀行が融資ストップや融資の引き剥がしを行い、<2社が倒産しま>した・・・
福岡県警は暴力団がらみと推測される事件に対して、ほとんど検挙、摘発できないでいます。11年、福岡県下で発生した暴力団がらみと見られる発砲事件は18件ありましたが、そのうち犯人検挙に至ったのはわずか2件だけです。・・・
<この>福岡県警の・・・無能には無能の理由があります。・・・
福岡県警は2000年、・・・4人の現職警官を逮捕・起訴し、懲戒免職としました。そのうちの一人は暴力団道仁会の会長からも現金を受け取っていました。立件された賄賂の総額は3120万円に及びます。他に8人の警官について業者から利益供与を受けていたとして減給、戒告、訓告などの処分を科し、業者との不適切な交際や監督責任を問われた前県警本部長ら計23人が処分されました。
他の都道府県警ではあまり例を見ない警官汚職事件でしたが、・・・事件に懲りた福岡県警は、刑事が暴力団員と接触するときには事前に上司にその旨を伝えさせ、接触した後も報告書を上げさせるという内規をつくりました。
以来、県警の刑事たちはこの内規に縛られ、50代より若い層はほとんど暴力団の組員や幹部層と会ったことがなく、捜査に関連する情報を取れないということです。・・・」(68~76、81、84~85)
→福岡県選出国会議員(比較的最近まで活躍していた議員も含む)には、侠客的な雰囲気を漂わせる人物がやたら多い、という印象があります。
現職には、麻生太郎(コラム#931、1168、1423、1460、2064、2076、2781、2791、2898、2921、3040、3068、3093、3097、3099、3127、3129、3164、3167、3177、3180、3203、3213、3241、3271、3281、3304、3334、3364、3405、3406、3456、3476、3488、3524、3550、3673、3913、4183、4367、4413、4499、4575、4855、4857)、原田義昭(コラム#2670、4056)がいますし、元職には、三原朝雄、古賀誠(コラム#245、743、756、1423、2082、2232、3378、3486、4795、6239)、山崎拓(コラム#28、226、246、251、254、1417、1452、1637、1661、1997、2000、2086、2219、3121、5917)、村上正邦(コラム#18、28、44、2221、3161、4201、6287)、田中六助、楢崎弥之助、松本龍(コラム#3356、3364、4847、4849、4869)らがいて壮観ですね。
(最後の二人以外はみんな自民党です。)
まあ、それは半ば冗談だとしても、暴力団と在日や部落出身者とは密接な関係がありそうだ、ということを前提にすると、朝鮮半島に近い、しかも九州の中心である福岡県には、もともと在日朝鮮人や朝鮮系の人が多いと考えられる上、「毎年170万人を超える日本への韓国人入国者の内、一定の割合が出稼ぎ化しているものと見られ、さらに、日本海沿岸地域の港湾部、特に定期航路(旅客・貨客)がある下関港や博多港を抱える福岡・北九州都市圏では半定住化している例もあ<る>」こと
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B3%E3%83%AA%E3%82%A2%E3%83%BB%E3%82%BF%E3%82%A6%E3%83%B3
や、「各都道府県のうち、最も多くの同和地区を抱えるのが606地区を抱える福岡県<(注12)>、続いて、472地区を抱える広島県、457地区を抱える愛媛県」
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%90%8C%E5%92%8C%E5%9C%B0%E5%8C%BA
と、福岡県には部落出身者も多いと考えられ、だからこそ暴力団の勢力が強いのである、とも考えられるのであって、福岡県で先端的な暴力団がらみの諸問題が先鋭化する形で発生しても不思議はないのかもしれません。
(注12)部落出身で「部落解放の父」である松本治一郎(1887~1966年)は福岡県出身だ。ちなみに、「甥の松本英一を養子として迎え、自身が創業した土建業松本組を継がせている。英一の子・松本龍は<元>衆議院議員。その弟・松本優三は松本組社長。また、衆議院議員の楢崎弥之助は被差別部落出身ではなかったが治一郎の姪の長女と結婚。その息子が<元>衆議院議員の楢崎欣弥である。」
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%9D%BE%E6%9C%AC%E6%B2%BB%E4%B8%80%E9%83%8E
ちなみに、松本龍は、部落解放同盟副委員長を務めたことがあるところ、「『週刊文春』2011年7月14日号<が>、松本夫人の姉の夫が九州に本拠を置く指定暴力団の最高幹部である」と報じている。
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%9D%BE%E6%9C%AC%E9%BE%8D_%28%E6%94%BF%E6%B2%BB%E5%AE%B6%29
また、福岡県警の警察官の中にも朝鮮系や部落出身者が多いと想像されるのであって、それがつい最近までの、同県警と暴力団との「癒着」の原因であったとも考えられます。(太田)
(続く)
日本の暴力団(その6)
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