太田述正コラム#7216(2014.10.2)
<中東イスラム文明の成立(その16)>(2015.1.17公開)
そのような観点に立てば、米国等のサウディアラビアとの関係は、下掲のごとく、極めて不適切なものであり続けている、と言うべきでしょう。
「<米国の対中東政策の>核心にあるのはサウディアラビアとのファウスト的盟約(pact)なのだ。
米国人達は、2001年9月11日の20人のハイジャック犯達のうちの19人がサウディの市民達であったことを忘れていない。
米国人達は、2003年の米国の誤った(mistaken)イラクへの旋回(pivot)も忘れていない。
今日においても、ツインタワーが崩落した日と殆んど同じく、米国に対する直接的な全球的脅威はイスラム主義者達・・より正確には、そのスンニ派の諸種・・によるテロから来ている。
9.11以来の米国と欧州におけるテロ諸企画の中で、シーア派の諸集団によって企まれたものはない。
ところが、オバマ氏にとって唯一対象外となっている同盟国はイラン・・サウディアラビアのシーア派の相手方にしてその最大の敵・・であるときている。
この制約を所与のものとして、オバマ氏は、<今回、>彼が発見できる便宜的な同盟関係を大慌てで作り上げた。
しかし、彼の派遣軍(mission)は、サラフィー主義の極端主義の諸原因ではなく一症候を標的にしてしまっている。
このトレードオフには深い前例がある。
1980年代に、米国は、パキスタンとサウディその他の湾岸諸国に加わり、アフガニスタンにおいて、ソ連に対抗するために、ムジャヒディーンを支援した。
この戦争は、どちらも今日再起しているところの、タリバンとアルカーイダに<絶好の>坩堝(crucible)を提供した。
米国はまた、サダム・フセインのイラクを、そのイランとの長く血腥い戦争において支援した。
それも、やはり結果は思わしくなかった。
2000年代に、<今度は、>米国は、イラク・・アルカーイダのお友達ではないが湾岸諸国の敵・・侵攻という脇道に、自分自身で逸れた(diverted)。
<しかし、>これらの諸事例の殆んどで、米国によって率いられた戦争は、短期的には成功したが、後のより大きな諸問題の種を蒔いた。
<だから、今回の>Isisに対する戦闘が、<これまでのものと>異なった結果をもたらすはずがなかろう。」
http://www.ft.com/intl/cms/s/0/bdae33de-44de-11e4-ab0c-00144feabdc0.html?siteedition=intl#axzz3EfxYYug5
(9月29日アクセス)
私は、このコラムの筆者の示唆・・軍事介入の逆効果性とイランとの提携の重要性・・は傾聴に値すると思います。
私なりに、このオプションを敷衍すれば、例えば、次のような感じになるのではないでしょうか。
米欧は、湾岸諸国やエジプトに対する支援を止めるとともに、同地域から米軍等を撤退させる。
また、パキスタン(すなわちスンニ派の隠れた総帥)の核能力を(核装備や核施設等を爆撃する等の形で)除去した上で、イラン(シーア派の総帥)に核放棄を実効性ある形で誓約させ、その上で、イランに支援を与え、イランが、中東アラブ世界において、サーサーン朝並或いはそれ以上の地域に覇権を確立することを黙認する。
更に、ヒズボラに、シーア派以外の安全の確保、及び、対イスラエル非攻撃を誓約させた上でレバノン全域の支配権を認め、更に、軍事援助を与える。
アサド政権は立ち枯れさせ、アサド政権に連なる人々は、(レバノンとの国境付近の)アラウィー派地区に籠らせ、この地区をヒズボラの保護下に置かせる。
トルコに、NATO残留を希望するなら、国外のスンニ派国ないしハマス等のスンニ派団体への公然非公然の全ての支援や便宜供与を止めるように働きかけ、実行させるとともに、スンニ派非スンニ派いかんにかかわらず、クルド人の支援を誓約させる。
そして、在イラククルド人への支援の継続と相俟って、クルド国家のイラク内における建国を実現する。
イスラエルの対ファタ、対ハマス等の軍事行動を含む政策への一切の干渉を止める一方、同国への軍事支援は継続する。
以上の結果、生じた、イスラム教徒及びクルド人以外の難民は、米欧及び拡大英国が積極的に受け入れる。
しかし、以上は、仮に採用されたとしても、あくまでも暫定的な措置に過ぎないのであって、脱イスラム教化のための抜本的な戦略を我々は練るべきでしょう。
その際、下掲のようなミャンマーでの動きに対する評価を、我々は、180度改める必要が出てきます。
「ミャンマーからの急進的な仏僧・・彼はイスラム教徒達に対する憎しみを説教してきており、<ミャンマーにおける>イスラム教徒による諸事業のボイコット運動体の精神的指導者・・が、<9月28日、スリランカで>スリランカの・・・集団<の集会に来賓として出席し、>「世界中の仏教徒を<イスラム教徒から>守る」ために、自分の運動体は<、この集団と>手を携えると語った。」
http://www.nytimes.com/2014/09/29/world/asia/radical-monk-in-myanmar-pledges-to-protect-global-buddhism.html?ref=world
(9月29日アクセス)
すなわち、欧米(拡大英諸国を含む)と日本は、国内での、イスラム教の宣伝、宣教を禁止し、イスラム教徒たる女性のヴェールの着用を禁じ、イスラム教徒が行うその他の、礼拝等のあらゆる外形的所定行動に対しての公的支援(税金の減免を含む)を禁止するのです。
これらの諸措置を実効あらしめるため、イスラム教的なものを国号に織り込んでいる国、或いは、イスラム教的な文言を憲法に織り込んでいる国の国民にはビザを与えないことにするとともに、これら諸国に発するものを含め、イスラム教関係のあらゆるサイト、あらゆる放送を禁止し、妨害し、遮断するのです。
(これに関連し、イスラム教においては、政治と宗教が分離していないことにも鑑み、自ら襟を正す意味で、独伊の「キリスト教・・」という党名の諸政党は、自ら、「キリスト教」を党名から落とすべきでしょう。)
その上で、イスラム教がいかに有害かをインターネットや放送で、これら諸国等の国民等に対し、弛まず訴え続けるのです。
そして、欧米及び日本は、自分達以外の国にも、できる限り、以上に同調するよう、働きかけて行くのです。
暫定的措置も抜本的戦略も、言うは易くして行うは難し?
しかし、そう言っている限りは、事態は悪化するばかりなのです。
(完)
中東イスラム文明の成立(その16)
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