太田述正コラム#7653(2015.5.9)
<皆さんとディスカッション(続x2622)>
<太田>(ツイッターより)
 英総選挙の結果保守党が過半数議席獲得の見込み。
 労働、自由民主、英国独立党各党首は辞任へ。
http://www.bbc.com/news/election-2015-32633099
 得票率は、保守、労働両党がそれぞれ37%、31%獲得の見込みなので二大政党制に戻ったということであり、日本に比しての英国の遅れが明確化した感がある。
 ちなみに、日本は、既に戦前に階層間・地域間差異を解消しており、事実上の一党制に移行して現在に至っているところだ。
 英国では、地域間差異すら残っており、スコットランド民族党はスコットランドの59議席中、実に58議席を獲得する見通しだ。
http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPKBN0NS2IA20150507
 「…この国の<指導者達>は…「反日ポピュリズム」に基づいて政策を進めたが、その結果、今の自縄自縛の状況を招いてしまったのだ。そのきっかけとなったのが、2012年に…李明博…大統領が突然日本に強硬な態度を取り始めたことだった。…」
http://www.chosunonline.com/site/data/html_dir/2015/05/09/2015050900486.html
、「… 謝罪する気が特にない相手にこれを要求し続けるのは、互いに煩わしい。今や、「東洋3国」ではなく「太平洋国家」へと脱皮しつつある日本と共に生きていくための、より冷徹な対日関係を構想すべき時が来ている。」
http://www.chosunonline.com/site/data/html_dir/2015/05/08/2015050801291.html
。一つの記事にしな!
<3PKq2tJg>(「たった一人の反乱(避難所)」より)
 「人間は優しくなるように作られた?同情は最も強い人間の本能の一つであることが判明(米研究)」
http://karapaia.livedoor.biz/archives/52180335.html
 ふむふむと来て、最後の文章に愕然となる。↓
 「「同情できる人が一番多くいる地域社会が最も繁栄し、多くの子孫を残すだろう。」というダーウィンの言葉は、少子化が進む日本の現状と照らし合わせると感慨深いものがあるかもしれない。」
<太田>
 ダーウィンの言葉は、「社会は脆弱な赤ちゃんを守るように進化してきた。共同で子供の世話ができたり・・・」と続くんだね。
 私には、単に、女性優位/女系社会、が狩猟採集時代の人類の定番になった理由を説いてるように思えるが・・。
 それよきゃ、面白かったのは、下掲の箇所だ。
 「迷走神経は、同情や助けたいという感情が生まれると活動することがわかった。ある実験を行い、下流階級の人と上流階級の人に「苦しんでいる写真」を見せた。すると、下流階級の人は、迷走神経に反応が現れたが、上流階級の人はそのような反応を示さなかった。これは正に富が生み出す思いやりの欠如と言えるだろう。」
 で、たまたま、関連記事に遭遇したので、さわりを紹介しておこう。
 <ダーウィンは次のように述べたが、その後、流行らなくなった。↓>
 ・・・group selection・・・although a high standard of morality gives but a slight or no advantage to each individual man and his children over other men of the same tribe・・・an increase in the number of well-endowed men and an advancement in the standard of morality will certainly give an immense advantage to one tribe over another. A tribe including many members who, from possessing a high degree of the spirit of patriotism, fidelity, obedience, courage, and sympathy were always ready to aid one another, and to sacrifice themselves for the common good, would be victorious over most other tribes, and this would be natural selection.・・・
 <最近リバイバルした集団淘汰説の肝は次の通り。↓>
 ・・・competition within a group tends to make us selfish individualists; but competition between groups turns us into co-operative, self-sacrificing team-players.・・・
 <しかし、どっちみち、集団淘汰説は、(広義の)利己主義を前提にしているところ、人間は生来的に利他主義であるとする声が神経科学者達から出てきた。↓>
  ・・・we are hard-wired to act on empathy.・・・
 <利己主義と利他主義という言葉しか知らない連中に語らせると、話がかえってややこしくなるな。
 私の言葉で言えば、人間主義的環境にいると、人は人間主義的になることが実証されているとよ。↓>
 <However,> where people were surrounded by helpful neighbours, they were themselves willing to help; but selfish neighbours bred selfishness. ・・・
http://www.ft.com/intl/cms/s/0/e3f343f6-f30f-11e4-a979-00144feab7de.html?siteedition=intl
<rDtq2G9Q>(「たった一人の反乱(避難所)」より)
≫日本に数多くある「女性専用」サービス 昼寝カフェが大人気・・・日本には数多くの「女性専用」のサービスがあり、女性への配慮や気配りが細部にまで施されている・・・≪(コラム#7651)
 こういう背景があってのことだから複雑。
http://ssplan1950.exblog.jp/24448647
 そりゃ安心して昼寝は出来ないよね、女性の7%なら近しい女性が被害を受けているのを知ってしまったりして不安になるだろうし、実際に被害にあった女性は言わずもがな
10万人で約1人が表に出てる数字みたいなんで、数字に乗らない被害者の数は約6999人か・・・
<太田>
 それ、鳥取県だけのデータみたいだし、地域によっちゃ、妻問婚の伝統が残ってるところもあるんでは?
 要するに、その多くは、「破綻」した「妻問婚」かもしれないよってこと。
 「加害者について面識がある人と答えた割合は93.4%だった。」ってことだしね。
<b6CM55rQ>(「たった一人の反乱(避難所)」より)
 輸送機でどうやって「離島防衛」をやるんだろうか・・↓
 「オスプレイ、離島防衛に極めて有用」菅官房長官
http://www.asahi.com/articles/ASH584HC5H58UTFK007.html
<太田>
 「離島防衛」とかなんとかは忘れて、つい最近まで日本を脅してた、習ちゃんからのプレゼントだと思えばいいんだよ。
 防衛装備予算の総額を減らさないのなら、オスプレイを自衛隊の装備の陣容に加えておくのは決してマイナスじゃあないからね。
<fZKPhWGE>(「たった一人の反乱(避難所)」より)
 辺野古基金 宮崎駿氏「沖縄の覚悟」支援、鳥越俊太郎氏も共同代表
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20150509-00000006-ryu-oki
 頑張れ宮崎駿!応援するぜ。
<MH>
1 お勧めの今夜の番組
 「5/9(土)PM9:00~10:30(90分)NHK BSプレミアム「ザ プレミアム アジアハイウェイを行く」
 今回の舞台はイラン。井浦新は市井の人々に会い、等身大の目線で暮らしぶりや心のうちを見つめる。経済制裁などネガティブなイメージを覆す、活気に満ちた姿が浮かび上がる
http://www2.nhk.or.jp/hensei/program/p.cgi?area=001&date=2015-05-09&ch=10&eid=31751&f=3523
 以前紹介した歌手MAY Jさんのイラン帰郷ドキュメンタリーは2014年4月でしたが、これは最新の報道です。
 刻々と変化する中東状況から必見では。
 今これを放送するということは6月末に経済制裁解除の合意を予定通り行うというシグナルではないでしょうか。
2 新経済圏で中ロ首脳協調 シルクロード構想で一致
 
 中国の習近平国家主席とロシアのプーチン大統領は8日、モスクワで首脳会談を開いた。中国と欧州を陸路で結ぶ経済圏「シルクロード経済ベルト」構想を推進するため、中ロが中央アジアのインフラ整備で協調することや、米国によるミサイル防衛システムの配備拡大に反対することで一致した。経済・政治の両面で米国への対抗軸をつくる意思を鮮明にした。
http://www.nikkei.com/article/DGXLASGM08H7R_Y5A500C1FF2000/
 中国主導のファイナンスは二種類ありまして、ひとつは今話題のAIIB もうひとつがSRF
http://www.nikkei.com/article/DGXLASGM21H0Z_R20C15A4EAF000/
 中国中央銀行のSRF解説
http://www1a.biglobe.ne.jp/jcbag/tanaka_report150218.pdf
 最初の日経記事の地図がありますが、北をAIIBが融資、南をSRFが融資するみたいですが、両建てで行うのかも知れません。
 シルクロードとなれば、イランが通過点になりますから、経済制裁解除になれば益々着目されるでしょう。
 日本はAIIBに当初は反対基調でしたが、既存の国際開発金融機関(Multilateral Development Bank MDB)
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%9B%BD%E9%9A%9B%E9%96%8B%E7%99%BA%E9%87%91%E8%9E%8D%E6%A9%9F%E9%96%A2
と融資先(新興国)が競合するため、デフォルトした場合の返済優先順位を決めるとか住み分けするのかで、やはり協議をする、協議するならば出資もするという流れになりそうですね。
 中国、ロシア、中東に詳しい太田さんの解説を頂ければ幸いです。
<太田>
 では、明日。
 それでは、その他の記事の紹介です。
 英国総選挙小特集だ。
 そもそも、今どきの英国総選挙なんて、フォローする意味、ないけどね。
 この前のオフ会の時なんか、出席者から英国が選挙中だと教えてもらったっけ。↓
 <スコットランドが分離するか、また、英国がEUに留まるか、の問いかけが一層現実味を帯びてきた、とさ。↓>
 ・・・ Will the United Kingdom stay together, and will it stay in the European Union? The daunting prospect of Brexit has suddenly become much more of a reality・・・
 <外交的には、英国は既にドロップアウト、だと。↓>
 On European, foreign and strategic affairs, Cameron is viewed as having dropped out of the game altogether, however unfair that may be.・・・
http://www.theguardian.com/commentisfree/2015/may/08/europe-new-existential-crisis-cameron-victory-brexit
 <労働党退潮と言っても、脱工業化、脱労組化、消費者主義化、のおかげで、地理的意味での欧州じゃ、どこでも中道左派は衰亡傾向、だと。↓>
 ・・・Like other centre-left parties in Europe,・・・Labour・・・is by now well used to swimming against deep tides of deindustrialisation, deunionisation and consumerism; but it now has to reckon with a chilling current of nationalist separatism too.・・・
http://www.theguardian.com/commentisfree/2015/may/08/guardian-view-labour-defeat-failure-storytelling-strategy
 <改めて、米国と英国の、そして、原因は全く異なるが、米国とイスラエルの、特殊関係の希薄化、を思う、とさ。
 (米国が日本にすがりつくワケだ。(太田))↓>
 The Amazing Decline of America’s Special Relationships
 Why the new (old) governments in Israel and Britain bode ill for what once were Washington’s most important alliances.・・・
http://foreignpolicy.com/2015/05/08/decline-of-special-relationships-uk-election-obama-netanyahu/
 本来、非公開コラムで取り上げるべき話題かもしれないが、そそられないので、ここで披露する。↓
 <(これ書評からなんだけど、)著者は、それほどキリスト教がかってなかった米国がキリスト教フェチになったのは、ニューディールに反対する企業界と政界の面々がキリスト教的リベラリズムなるものをひっさげ始めてからだ、と指摘してるんだって。↓>
 ・・・He points to the relatively low level of religious affiliation among Americans in the 19th and early 20th centuries and to the supposedly secular tenor of the era’s politics. What accounted for the dramatic change in religious practice and the more explicit religious concerns of politicians in the 1950s? According to Kruse, the answer is a concerted and well-financed effort by powerful corporate and politically conservative forces to clothe their long-standing opposition to Franklin Roosevelt’s New Deal in the pieties of “Christian libertarianism.” Returning the nation to a “government under God” meant restoring the freedom of big business and dismantling the ungodly welfare state. ・・・
http://www.washingtonpost.com/opinions/does-free-enterprise-soar-on-wings-of-angels/2015/04/30/4af678ee-d253-11e4-ab77-9646eea6a4c7_story.html
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一人題名のない音楽会です。
 今度は、ガーシュイン兄弟についての下掲書評
http://online.wsj.com/article/SB10000872396390443294904578050382724905340.html?mod=WSJ_Opinion_LEFTTopOpinion
(2012年10月30日アクセス)の中で取り上げられた曲を、2回に分けてお送りします。
 《》内は、この書評からの断片的かつ要約的紹介です。
 《1920年代と30年代にガーシュイン兄弟(兄:作詞、弟:作曲)は、米国の楽観主義と道徳的諸念願(aspirations)を捉えた800曲を生み出した。》
I Got Rhythm  Marcus Roberts Trio 小澤征爾が聞き入っている。
https://www.youtube.com/watch?v=fpy0YjjriZg
The Man I Love  歌唱:Ella Fitzgerald
https://www.youtube.com/watch?v=ySszeu4H4QI
They Can’t Take That Away from Me トランペット・歌唱:Louis Armstrong 歌唱:Ella Fitzgerald
https://www.youtube.com/watch?v=ExmoiGZuiFQ
 《手軽で素晴らしい曲ばかりであり、競争相手達の妬みと尊敬を買った。
 兄の歌詞のリズムと韻の組み合わせは瞠目すべきものがあり、彼は弟以外のためにも作詞した。瞠目すべきリズムと韻の組み合わせの一例が下掲だ。》
‘S wonderful 歌唱:Joao Gilberto
https://www.youtube.com/watch?v=MxfPqIF346M
 《彼らの共同作業は約15年しか続かなかった。弟が38歳で急逝したからだ。
 現在では、弟すら忘れられようとしており、兄についてはなおさらだ。》
(続く)
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太田述正コラム#7654(2015.5.9)
<内藤湖南の『支那論』を読む(その2)>
→非公開