太田述正コラム#7522(2015.3.4)
<映画評論45:ベイマックス(その7)>(2015.6.19公開)
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<参考:東京の魅力>
サンフランシスコもさることながら、東京も世界有数の魅力的な大都市であることは間違いない。↓
「・・・一般社団法人森記念財団都市戦略研究所が・・・「世界の都市総合力ランキング “Global Power City Index (GPCI)”」を発表し<た。>・・・今回の調査は、都市の快適さや安らぎ、おもてなしなど、そこに住む人々が抱く感性的な価値、つまりソフト面を評価したという。・・・
その結果、1位に東京、2位はウィーン(オーストリア)、3位はシンガポール、以下、トロント(カナダ)、ニューヨークとの結果となった。・・・」
http://blogos.com/article/106949/
(3月4日アクセス)
全体の結果も出ているが、その中にサンフランシスコが登場しない。
これは、同市そのものは、人口が80万人でしかないので最初から比較対象にされなかったからではないかと想像されるが、ベイ対岸を含む都市圏としては400万人を超える人口があるし、スタンフォード大学周辺を含む、いわゆるベイエリア全体となれば、700万人の人口がある
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B5%E3%83%B3%E3%83%95%E3%83%A9%E3%83%B3%E3%82%B7%E3%82%B9%E3%82%B3
ので、対象にすべきではなかっただろうか。
それはともかく、このように、日本独自の基準で、様々な世界比較を行っていくことが強く望まれる。
何度も指摘しているように、欧米諸国のこの種比較に際しての基準は偏っており、日本の人間主義のよさが十分に評価されないからだ。
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<参考:日本型ロボットの最先端のもう一つの事例>
「世界初の感情認識パーソナルロボットPepper。<先>月から開発者向けの販売が検討され、6月以降には一般販売も開始される予定だ。・・・
ロボット開発の難しさは、ハードを扱うメカ屋さんとソフトウェア屋さん、その両者を一気通貫して見ることのできる人材が少ない点です。・・・
今までのロボットは、「人が必要とする、役に立つ機械」のイメージが強かったと思います。洗濯機であれば、洗濯板を自動化し、脱水機、今では乾燥機の機能まで付いています。この場合、機械は人の作業量を減らし、時間を稼ぐことには貢献していると思います。結果的に、それによって生まれた余暇で人々は幸せになったかもしれません。しかし、ロボット自体が直接人々を幸せにしているわけではないんですね。・・・
今までのロボットは、「人が必要とする」ものをイメージされる事が多かったかと思いますが、実は「人を必要とする」ロボットの方が潜在的には求められているかもしれないわけです。
そう考えると、人を幸せにするためのロボットとして必要な機能は、相手のことが分かって、感情を認識し、相手とコミュニケーションができることなのだと思います。・・・
<感情認識ロボットの進歩が遅いように感じられるのはどうしてでしょうか?>
メーカー純正カーナビの進歩がスマートフォンより遅いのは皆様も感じられているかと思います。
ただそれは、決して自動車会社の怠慢ではなく、そもそも要求される信頼性が全然違うわけです。・・・
<それと同じことが感情認識ロボットにもあてはまるのです。>」
http://blogos.com/article/106670/ 1
(2月28日アクセス)
「日本のソフトバンクは2月27日、ヒト型の感情認識ロボット「ペッパー」300台をアプリ(ソフトウェア)の開発者向けに限定発売し、わずか1分で完売した。
身長121センチ、重量28キログラムのペッパーは、周囲の状況を把握し、自らの判断で行動するほか、人間の表情や声を分析し、感情を認識できる人型ロボットだ。ペッパーはユーザーと会話することができ、家族写真を撮影したり、スマートフォンと連動させてメッセージを送信したりする機能も備えている。・・・」
http://www.chosunonline.com/site/data/html_dir/2015/03/02/2015030200809.html
(3月2日アクセス)
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4 終わりに代えて
(1)言い訳
さんざん回り道をしてから本題に入ったシリーズでしたが、終わりも回り道にしたのであしからず。
(2)4D
この映画、ユナイテッド・シネマ豊洲では、4D(注10)でも提供していました。
http://mawari.cocolog-nifty.com/mawariblog/2015/01/baymax-bighero6.html
(注10)「4D技術とは、現在の時空間などの3次元の次元定義に対し、それとは異なる新しい次元定義を行った技術を指す。 デジタルコンテンツの中で、デジタル以外のリアルな要素を取り入れた作品を提示する際に、用いられることが多い。」
http://ja.wikipedia.org/wiki/4D%E6%8A%80%E8%A1%93
4D映画では、「モーションシートが、映画のシーンに完全にマッチした形で、前後&上下左右に<動き>、その衝撃を再現。さらに、嵐等のシーンでは<水>が降り、<風>が吹きつけ、雷鳴に劇場全体が<フラッシュ>する他、映画のシーンを感情的に盛り上げる<香り>や、臨場感を演出する<煙り>など、様々なエモーショナルな特殊効果で、≪目で観るだけの映画≫から≪体全体で感じる映画≫の鑑賞へと・・・転換<する>。」
http://www.unitedcinemas.jp/4dx/
こちらのバージョンを、今回、時間の関係で体験できなかったのは、新しいもの好きの私としてはまことに残念なことでしたが、別の映画で、他日を期したいと思います。
今後、映画の(新作を含む)電子ダウンロードの一般化に加えて、TV等画面の一層の拡大を含むホームシアター・システムの発展によって、映画館に足を運ぶ人が減っていくのは必然であり、映画館を維持しようと思ったら、4D化を図るほかない、と思います。
(3)AI(ロボット)の発展によって消滅する業種
「・・・日本企業が会計監査のため支払う報酬は、米欧に比べ、もともと低いとされる。さらにリーマン・ショック後には既存監査先からの報酬引き下げ圧力が強まり、一方で新規株式公開(IPO)は激減した。おまけに内部統制報告制度(J-SOX)の導入による特需もなくなった。大手監査法人といえども赤字に沈み、10~11年頃には新日本監査法人や監査法人トーマツが数百人規模の人員削減に追い込まれている。・・・
他方、この間、会計士の近接業務である税理士との間では縄張り争いが勃発した。現在、会計士には税理士資格が自動的に付与されているが、税理士業界も人余りが深刻で反発が強まっている。・・・」
http://www.msn.com/ja-jp/news/money/%e4%bf%a1%e7%94%a8%e5%a4%b1%e5%a2%9c%e3%80%81%e4%bd%8e%e5%a0%b1%e9%85%ac%e2%80%a6%e9%a3%9f%e3%81%88%e3%81%aa%e3%81%84%e4%bc%9a%e8%a8%88%e5%a3%ab%e6%80%a5%e5%a2%97-%e5%95%8f%e9%a1%8c%e7%9b%a3%e6%9f%bb%e6%b3%95%e4%ba%ba%e7%b6%9a%e5%87%ba%e3%80%81%e6%95%91%e6%b8%88%e7%ad%96%e3%81%8c%e4%b8%8d%e7%a5%a5%e4%ba%8b%e3%81%ae%e6%b8%a9%e5%ba%8a%e3%81%ab%e3%82%82/ar-BBi5Fq7?ocid=iehp#page=2
表記については、既に少し触れているところですが、上掲の記事のような状況を見るにつけ、日本型経済体制・・株主は殆んどステークホルダーとは言えない・・の下では(株主のために行われるところの)監査の必要性が基本的にないからこそ、公認会計士への需要はもともと小さく、従ってまた、監査報酬も全球的標準に比べてはるかに低い状態で推移してきたところ、全球化の進展によってこの状況が本格的に変化する前に、会計ソフト類の発展に伴い、公認会計士に対する需要が一層低下しつつある感が否めません。
公認会計士の仕事には、抽出棚卸等の、肉体労働部分がありますが、今後、在庫のICタグ管理等が進展していくと、それもなくなっていくのではないかと思われるところです。
また、上掲の記事の中にも登場する税理士についても、国税庁提供の確定申告ソフトの急速な進歩改善を目の当たりにしていると、今後、公認会計士よりもむしろ速く、税理士への需要もまた減少していくのは必至だと思います。
今後、更に、通帳のみならず、領収書類もペーパーレス化して行き、それに伴って、確定申告書に記載すべき計数の通帳、領収書類によるチェック/確定、などという作業など、消滅するであろうと思われることを考えればなおさらです。
こういう感じで思考実験を行えば、似たような理由で、今後消滅に向かう業種はいくらでもありそうです、
私としては、太田コラム執筆的な作業は、最後まで人間の手に残る数少ない業種の一つだと今のところは見ているのですがね。
(4)最後っ屁
このシリーズで、ついに一度も出番がなかったくらい、この映画のパンフレットの内容が量質ともに貧弱であったことは、ディズニーの名折れであり、遺憾です。
それはともかく、この映画のおかげで、色んなことを思いめぐらすことができたことはよかったと思います。
(完)
映画評論45:ベイマックス(その7)
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