太田述正コラム#7758(2015.6.30)
<米最高裁の同性婚否定違憲判決を巡って>(2015.10.15公開)
1 始めに
米最高裁が、オバマケア合憲判決、及び、同性婚を認めない州法は違憲との判決、を立て続けに出し、前者では最高裁長官が賛成、後者では反対を唱える、という結果になりました。
前者については、裁判の背景の重大さ、というか異常さ、はともかくとして、判決自体は技術的観点からなされたと承知しており、興味が湧かない一方、後者については、問題がある意味大き過ぎて、正面から取り上げるのが躊躇される、という次第で、どちらについても、取り上げてきていなかったのですが、本日、後者に関する興味深い記事に2つ遭遇したので、後者については、取りあえず、1回目のコラムにすることにしました。
2 米最高裁長官の反対意見を巡って
「26日の<判決の>反対意見において、ジョン・ロバーツ(John Roberts)最高裁長官は、同性婚を支持するにあたっての、「多数意見者の大部分の理屈は、複婚(plural marriage)<(注)>に関する基本的権利の主張に同等の力を付与することになろう」、と強く主張(contend)した。・・・
(注)=polygamy:「3人(動物の場合は3個体)以上の間、もしくは一夫一妻以外の結婚または配偶システム。一夫多妻制(ポリジニー)、一妻多夫制(ポリアンドリー)などの形がある。通常、線形単婚(シリアルモノガミー)(離婚と、その後結婚することが、両方可能な形)は含まれないが、乱婚(パートナーとのつながりを維持する期間が相対的に短い)は含まれる。・・・オランダでは2005年9月に、初の3人間での市民同盟カップル(トリオ)が誕生した。(marriage[結婚] ではなく civil union[市民同盟]であり、複婚はオランダでも、2007年現在まだ不可能である。)」
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E8%A4%87%E5%A9%9A
<これに対し、賛成意見たる多数意見は、異性ないし同性への>性的志向(exual orientation)は、どちらも、人間の性的関心(sexuality)の正常な発現であって変更不能(immutable)であることが、精神医学者達等によって認められたのは近年のことである<ところ、>・・・変更不能性(immutability)は、諸範疇(classes)の人々に対する不正当な(unjust)差別に該当する(identify)かどうか<の判定>に係る枢要な要素であり、「複婚者達は、そんな風に<、すなわち、変更不能なように、>生れ落ちてはいない」<、とロバーツに反論した。>・・・、
<他にも多数意見は様々な理屈を並べているが、その中に「>排除<」があり、同性愛者達は、事実上婚姻関係にあっても、>・・・諸税控除(tax breaks)、相続諸権(inheritance rights)、財産諸権(property rights)、養子縁組諸権(adoption rights)、病院訪問、遺族向け諸便益(survivor benefits)、及び、健康保険<、から排除されていることの問題性を指摘する者もいた。>・・・
<思うに、>ゲイとフツーの婚姻は、文字通り、<相互に>極めて似通っていることから、婚姻を同性のカップル達にまで拡大するのは、それを複婚にまで拡大するのに比べてはるかに単純だ<、というのが多数意見の考えなのだろう。>・・・
<しかし、本当のところは、>異性婚から同性婚への跳躍は、2人間の同盟(union)から(世界中で若干の諸文化において深いルーツを持っているところの、)複数間の諸同盟への跳躍よりも、はるかに大きいのだ。・・・」
http://www.slate.com/articles/news_and_politics/politics/2015/06/is_polygamy_next_after_gay_marriage_chief_justice_roberts_obergefell_dissent.html
⇒女系の複婚制であったと考えられているところの、かつての人類、の嫡出子たる縄文人を基調とする日本文明の一員である私は、そもそも、ユダヤ/キリスト教由来の堅苦しい異性婚制度は廃止し、種々の関係を含みうる市民同盟制度にすべきである、という見解です。
ですから、少なくとも現在の異性婚制度を拡大すべきではないと思っており、このコラムニストの言うことに賛成であり、同性間の事実上の婚姻関係は、日本の東京都渋谷区が今年から始めた
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%97%A5%E6%9C%AC%E3%81%AB%E3%81%8A%E3%81%91%E3%82%8B%E5%90%8C%E6%80%A7%E7%B5%90%E5%A9%9A
ような、市民同盟・・こういった場合に、「同盟」だの「市民同盟」だのといった訳語を用いるのはいかがかと思うが、通例に一応従っておきます・・の域に留めるべきであって、米最高裁の今次判決は、典型的なリベラルキリスト教的な発想の産物で誤りである、と考えています。(太田)
3 神道と同性愛
「・・・日本では、同性愛者の諸権利については様々な意見がある。
技術的には、同性愛は違法とされてはいない。・・・
・・・2013年の調査では、大部分の欧米諸国の60%から70%の人々は、レスビアンか、ゲイか、両刀使いか、性同一性障害者(transgender)の知人がいる、と答えたが、そう答えた日本人達は6%に過ぎなかった。・・・
多くの日本人達は同性愛に反対ではないけれど、「彼らは、真の意味でそれに気付いていない」<というわけだ。>・・・
<日本の>初期の諸法典では、近親相姦と獣姦は処罰されたが同性愛諸関係は処罰されなかった<し、>神道の神々「は、セックスが大好きだった」。・・・
神道は、精神的汚染に反対するが故に清浄を擁護するところ、同性愛は、「不浄ではないけれど不自然だ」、と<ある>神官は喝破した。・・・」
http://foreignpolicy.com/2015/06/29/what-does-japan-shinto-think-of-gay-marriage/?wp_login_redirect=0
⇒まさにこうあるべきでしょうね。(太田)
米最高裁の同性婚否定違憲判決を巡って
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