太田述正コラム#0525(2004.11.6)
<ブッシュの大統領再選(その2)>
3 民主党支持者はどうしたらよいのか
(1)追いつめられた民主党支持者
ア 状況
前回と今回の大統領選挙を経て、共和党は、大統領・上院・下院を制し、ブッシュ政権の二期目には、死亡ないし引退が見込まれる複数のリベラル派の最高裁判事の後任をブッシュ大統領が充当する結果、保守派が多数を占めることになることから、最高裁も制することになります。
つまり、共和党は三権の全てを制し、ここに米国憲法の期待する三権(と上下院)の間の抑制と均衡は画餅に帰することになるのです。
(以上、http://slate.msn.com/id/2109291/(11月6日アクセス)による。)
民主党支持者の絶望感がお分かりになると思います。
では、一体民主党支持者はどうすればよいのでしょうか。
イ 人か政策か
今回の大統領選挙の敗因分析にろくなものがないと言いましたが、敗因分析を大きく分ければ人に問題があったのか政策に問題があったのか、その双方なのか、ということになります。
敗因をつきとめられれば、おのずからどうしたらよいかは明らかになるはずです。
いずれにせよ、人について言えば、今回を含め、過去11回の米大統領選挙を振り返ってみると、民主党の大統領候補が南部以外の出身であった5回(’68、’72、’84、’88、’04)とも民主党は敗北しているのに対し、候補が南部の出身であった6回のうち5回(’64、’76、’92、’96、’00。ただし、’00は当選しなかったが、投票数で勝利)も勝利しています(スレート上掲)。
ここからは、次回2008年の選挙には南部出身の候補者を擁立すべきだ、ということになります。
また、政策について言えば、民主党が、リベラルな候補(Johnson*、Humphrey、McGovern、Mondale、Dukakis、Gore*、Kerry)を擁立した場合の勝利は7回中2回(*)に過ぎないのに対し、中道の候補を擁立した場合の勝利は4回中3回(Carter1勝1敗、Clinton2勝)もあり(http://slate.msn.com/id/2109267/(11月6日アクセス)。ただし、Johnsonをリベラルとしたのは私の判断)、どちらかと言えば中道の候補を擁立した方がよさそうだ、ということになります。
しかし、今や米国が両極分解したことで、米国の政治地図は様変わりしており、この種の過去のデータが2008年及びそれ以降の大統領選等の参考になるとは思えません。
(2)どうしたらいいのか
ア どうしようもない
結局のところ、ある米国の評論家が言っているように、民主党支持者は苦し紛れの理屈をこねずに、「正直、どうしたらいいか分からない、と認めるべき」(http://slate.msn.com/id/2109165/。11月6日アクセス)なのです。
イ 敵失待ち
そうなると、どこかの国の民主党のように、ひたすら政権政党側の敵失を口を大きく開いて待つ以外にはなさそうです。
ブッシュは、今回の選挙で道徳問題が最大のイッシュー(2割の投票者がそう考えた)となり、これが最大のイッシューだと考えた投票者の8割がブッシュに票を投じたことを重く受け止め、彼らの期待に添った政策(注3)を進め、その結果、今度の選挙でブッシュに票を投じたところのそれ以外の人々(注4)が共和党にそっぽを向く可能性がないわけではありません(http://www.guardian.co.uk/uselections2004/story/0,13918,1343992,00.html。11月5日アクセス)。
(注3)(既に11州で法制化されている)同性結婚の禁止の全国化、妊娠中絶の全面的禁止、ヒト・クローン研究(stem cells research)の禁止、等
(注4)今回の大統領選の候補者を決定した共和党大会での主要演説者であったシュワルツネッガー・カリフォルニア州知事、パタキ・ニューヨーク州知事、ジュリアーニ前ニューヨーク市長は、いずれも共和党のいわゆる「選択の自由(pro-choice)」派であって、キリスト教原理主義とは無縁の人々だった。
これは、ブッシュの積極的失政待ち、と言うことになります。
しかし、ブッシュはそんなことをするほどアホではありません。第一、彼には三選がないのですから、そこまで有力支持層に迎合する必要はありますまい。
他方、このままブッシュが増税に転じないまま、イラク等への派兵を続けておれば、財政赤字と貿易赤字が一層大きくなり、いつかの時点でドルの大暴落が引き起こされ、米国経済が大きなダメージを受ける可能性は否定できません。そうなれば、今度の選挙でブッシュに票を投じた人の大部分は共和党に引導を渡すことでしょう(http://www.washingtonpost.com/ac2/wp-dyn/A26837-2004Nov4?language=printer。11月5日アクセス)。
これは、ブッシュの消極的失政待ち、と言うことになります。
ブッシュが財政政策を転換するとはまず考えられないことから、このような事態になる可能性は大いにありますが、問題はそれがいつか、ということです。
(続く)