太田述正コラム#9593(2018.1.19)
<映画評論52:否定と肯定(その4)/私の現在の事情(続X106)>(2018.5.5公開)

 (2)事実の認定

 「アーヴィングは、英国の壮大なる衰亡は、ドイツとの戦争を始めたことによって加速された、と確信している。」☆(α)

 「<最初に、リップシュタットと直接対決した、大学の講堂での場面で、>アーヴィングは、ヒットラーが、ホロコーストについて知っていた、ないし、計画した、ということを証明した者は、それが誰であれ、1000ドルをあげる、と述べた。」★(d)

⇒☆と★・・☆は、映画では取り上げられていません・・は、それらが私と同じ見方(コラム#省略)だからということもありますが、アーヴィングの史的センスの基本的な良さを物語っていると思います。(太田)

 「書き物の中で、アーヴィング氏は、彼がヒットラーを尊敬しているところ、アウシュヴィッツ(Auschwitz)にはガス室はなかったし、そこでのいかなる諸死も、病気と飢餓の諸結果である、と執拗に主張している。」(c)

 「<しかし、映画の中で、>「私は事実については議論はしない」、とリップシュタットは、<アーヴィングの挑発に対して>述べている。」(b)

⇒疫学的反論しかできなさそうであるとはいえ、疫学的反論だって立派な反論であり、全く反論しないというのはいかがなものか、と思いましたね。(太田)

 「ナチ達は、せっせと彼らの諸痕跡を隠したし、彼らがその後破壊したところの、諸室内で囚人達がガス殺されている・・アーヴィング氏はなかったと執拗に主張している・・ところが諸写真に撮られないように万全を期した。
 したり顔をした不誠実な、ちょっとした演出(showmanship)でもって、彼は、抗弁に対して、アウシュヴィッツにおいて、青酸剤群が投下されたガス室群の崩れ落ちた屋根において、<それらを投下した>穴群を見つけてみろ、と挑戦する。」(c)

 「この映画は、アーヴィングが、どうして、かくも歴史の書き換えに熱心なのか、また、かくも根気強く一時は尊敬されていた研究者が、彼の周りに一杯ある証拠について、かくも片意地に目を瞑ることができるのか、を解明したとは到底言えない。」(d)

⇒それは、☆を取り上げなかったからであり、☆というアーヴィングの問題意識を軸にして脚本を作っておれば、映画は、勧善懲悪ものを脱したところの、はるかに深いものになっていたはずです。(太田)
 
(続く)
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–私の現在の事情(続X106)–

 本日、眞壁仁著『徳川後期の学問と政治 -昌平坂学問所儒者と幕末外交変容』(2007年)
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をアマゾンで発注しました。
 定価7128円もするのですが、中古の6300円のにしました。
 ただ、ここまで漕ぎ着けるのにちょっと手間取りました。
 アマゾン指定の三井住友のクレカを入手すると、5000ポイントが付き、直ちにこのポイントが使用できるというので、1月8日にこれを申し込んだのですが、私が「自営業」なので、確定申告の本紙のコピーを求められ、その後に三井住友から送られてきた資料でキャッシング機能を放棄すればその必要がないことが判明したので、その旨書いて返事を出したところ、ようやく、昨日、クレカを配送します、との連絡がありました。
 で、本日朝、アマゾンから、ポイントが付きました、とのメールがあり、さっそく上記を発注した次第です。
 この本を買った理由は何か?
 それは、次回のオフ会「講演」の参考にもする・・どうして、幕府の選良達ではなく、雄藩連合の選良達が維新の担い手になったのかを解明するための参考・・のですが、次々回、ないしは、2回後のオフ会「講演」で、どうして、明治維新後、日本は選良教育に失敗したのかに迫りたいと考えているところ、そのタネ本になるかもしれない、と思ったからです。
 届くのは、23~25日ですが、かなり高評価の書評が出ている
https://www.tkfd.or.jp/research/political-review/a01015
660頁の大長編学術本であり、楽しみにしています。