太田述正コラム#650(2005.3.6)
<日立製作所(その5)>
(2)日立IT部門の総括部局
ア 始めに
好意をもって共同ダメッジ・コントロール(damage control)を申し入れよう
とした私の手を払いのけたままじっとしていて「事故」にあってしまった、とい
う日立の悲喜劇は、一体どうして起こったのでしょうか。
イ 孤立する日立
まずもって、日立の孤立を指摘しなければなりません。
私はそれほど積極的に人脈作りを行ってきたわけではありませんが、日本の大
方の大会社であれば、その会社全体に影響力を持つ役員や社員と友人である、あ
るいは少なくともこれら役員や社員の友人の友人ではある、と言えると思います。
ところが、日立については、そのような役員ないし社員の人の「持ち合わせ」
(失礼!)が私にはありませんでした。
同じ話を、他の人からもよく耳にします。
つまり、この人は一角の人物だ、と思って友人になると、いつの間にかその日
立の友人は、子会社に移ったり、日立を退職したりしていなくなってしまう、と
いうのです。
日立の人事はおかしい、というわけです。
こういう次第で今回、友人ベースで日立側と話ができなかったことが、ボタン
の掛け違いをもたらした原因の第一です。
ウ セクショナリズム
原因の第二は、セクショナリズムです。
日立は分権化が徹底していて、全社的総括部門がITを含む各部門をほとんどコ
ントロールしていない、という声を聞きます。
そうだとすると、オール日立の営業をやっている大分や青森の日立の現地事務
所のことなど、IT部門の総括部局が眼中にないのは当たり前だ、ということにな
ります。
分権化と言えば、IT部門の総括部局もまた、IT部門の現業部局をほとんどコン
トロールしていない印象を私は受けます。
前にも述べましたが、セクションが製品販売に乗り出した以上、その状況を把
握し、営業の専門家を誰かセクションに配置すべきだったのに、それをしなかっ
たことが、セクションの私への対応を誤らせたのです。
それだけではありません。
総括部局は、自分が現業部局のために存在しているという認識が希薄であり、
現業部局の売り上げのことより、目先のクレーム対策に関心を奪われているよう
な印象を受けます。
エ クレーム対策マニュアル
そのクレーム対策が、マニュアルに縛られ融通性に欠ける、というのが原因の
第三です。
マニュアルの内容は、他社の実務や今回の私への対応等から判断して、次のよ
うなものだと考えられます。
クレームがあった時は、そのクレームに対する方針が確立するまでは、できる
だけクレーム元の本人には会わない。Aが私に会おうとしなかったことがその現
れです。
IT部門の総括部局も、私の代理人(仲介者)たるCには会っても、ついに私に
直接会い、事情聴取することなく、否定的回答の結論を出し、C経由で私に伝達
してきたわけです。
肯定的回答の結論を出した場合は、恐らく私に会ってあの手この手で懐柔に努
めたことでしょう。
否定的とか肯定的のメルクマールは何か。
クレーム元が裁判に訴えた時に日立が負けそうなのか勝ちそうなのか、です。
私の場合は、私が金銭的要求をすることを目論んでいる、という前提で、セク
ションと私との間に契約が成立していたか(yes)、その契約は終了しているか
(yes?疑問の余地があれば、終了させればよい)、私の口利きで成約に至った
ものはあるか(none)、損害賠償しなければならないことはあるか(まあな
い)、契約は販売委託契約かコンサルタント契約か(微妙だが販売委託契約と言
える)、といった検討を行い、私がコンサルタント契約かさもなくば販売委託契
約だったとして金銭請求をしてきても、裁判で勝てる、という結論を出したに違
いありません。
この検討の過程では、Aを始めとして社内関係者全員からの事情聴取、関係文
書やメールログ等の徹底的チェックが行われたことでしょう。むろん、全社的法
務部局との協議も何度も行われたに相違ありません。
Aが米国出張から戻ってすぐIT部門の総括部局に私の「クレーム」を取り次い
でいたとすればそれから二ヶ月、私の仲介者Cがこの部局に私の話を取り次いで
からは一ヶ月半も検討の時間がかかったのはそのためでしょう。
最終結論に至るまで二転三転しましたね。
まことにご苦労様でした。
しかし、何とまあ無駄な作業をされたことでしょうか。
私は金銭的要求をするつもりも裁判に訴えるつもりも全くなかったどころか、
好意で皆さんに話をしようとしただけなのですから・・。
ですから、そんな作業にのめり込む前に、私に直接会って、私の話を聞き、私
の人となりを自分の目で確かめればよかったのです。
会うべきかどうかを判断するための材料を集められるほど社外人脈を抱えてい
ない?
また、会ったところで、人となりを見抜くだけの眼力を備えた社員が日立には
いない?
そんな会社はつぶれるしかありませんね。
日立の皆さん、会社の状況は深刻ですよ。一刻も早く目を覚まして下さい!
(完)
日立製作所について(その5)
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