太田述正コラム#678(2005.4.2)
<日本の国連安保理常任理事国入り?> 
1 始めに

 日本が国連安保理の常任理事国入りの希望を初めて表明したのは1970年でしたが、国連分担金第三位のドイツが第二位の日本と共闘をすることを決意した頃から、ようやく実現に向けて展望が開けてきました(http://www.pekinshuho.com/04-45/45-zhongyao-1.htm。4月1日アクセス)(注1)。

  • (注1)2003年の夏に北京の人民大学で講演した時、学生の質問に対し、日本が「常任理事国になろうとしているのは、国連の意思決定過程により積極的に関与するためだ・・(米国に次ぎ、第三位以下を大幅に引き離して)世界第二位の国連分担金を負担している以上、納税者たる日本国民が、国連が・・適切に活動しているかどうかに関心を持つのは当然のことだ。つまり、日本国民に対する説明責任(アカウンタビリティー)を果たすために日本政府は国連常任理事国を目指しているということであり、それ以上でも以下でもない。」と答えたものだ。(コラム#133)

 その後、この共闘にインドとブラジルが加わります。
 この4カ国(G4))は、夏までに安保理拡大の地域枠(アフリカ二、アジア二、中南米一、西欧その他一)を示した「枠組み決議案」を採択し、その上で、具体的な国を選び、国連憲章を改正する一連の手続きを、9月の国連総会首脳会合までには決着させるることを目論んでいます(http://www.tokyo-np.co.jp/00/kok/20050401/eve_____kok_____000.shtml。4月1日アクセス)。
 英BBCが先月公表した23カ国を対象にした世論調査によれば、国連の安全保障常任理事国拡大について、ロシア(賛成44%)以外の22カ国で過半数が賛成、平均支持率は69%にのぼり、新しい常任理事国については、平均支持率でドイツ(56%)1位、日本(54%)2位、インド、ブラジルが同率3位(47%)でした。このうち日本の常任理事国入りに対しては、16カ国で支持が過半数を超えるなど21カ国で支持が反対を上回りましたが、中国では反対(51%)が支持(10%)を大きく上回り、韓国でも反対(32%)が支持(26%)を上回りました。(http://www.yomiuri.co.jp/world/news/20050322it03.htm。4月1日アクセス)

2 韓国

 北朝鮮が日本の常任理事国入りに反対の意思を表明した(http://jp.chinabroadcast.cn/1/2005/03/09/1@36647.htm。4月1日アクセス)ことには誰も驚かないでしょうが、韓国の国連大使が先月31日に、「周辺国の信頼を受けられず、歴史も反省できない国が国際社会の指導的役割を果たすことには限界がある・・<日本には>常任理事国に進出する資格はなく、そうならないよう努力する」という公式発言を行った(http://www.mainichi-msn.co.jp/today/news/20050401k0000e030121000c.html。4月1日アクセス)ことには、私もいささか驚きました。
 かつて、金泳三(キムヨンサム)韓国大統領は、日本の常任理事国入り「の方向でコンセンサスができれば強く反対はしない」(1995年10月の国連総会演説)と述べており(http://nippon.zaidan.info/seikabutsu/2003/01297/contents/244.htm。4月1日アクセス)、韓国政府のスタンスは180度変わったことになります。
 これは忖度するに、
 第一に、隣国が米国という超大国であることから常任理事国になれそうもないカナダが日本等の理事国入りに反対しているのと同じく、韓国が、中国と日本という二つの大国に挟まれていることから、常任理事国になれそうもないが故のいやがらせ(http://nippon.zaidan.info/seikabutsu/2003/01297/contents/244.htm上掲)(注2)。4月1日アクセス)であり、

  • (注2)朝鮮日報が論説で、韓国はGDPで世界第11位、貿易額で12位、国連分担金で11位なのだから、11?13カ国に増えようとしている安保理の常任理事国入りをしてもおかしくないはずだ、とぼやいていた(http://english.chosun.com/w21data/html/news/200503/200503220033.html。3月23日アクセス)。

 第二に、イタリアがドイツの、メキシコがブラジルの、そしてパキスタンがインドの常任理事国入りに反対しているのと同様の近隣国としてのやっかみであり、(http://www.sankei.co.jp/databox/n_korea/nkorea_35_1.htm。4月1日アクセス)
 第三に、ノムヒョン大統領の新対日政策(コラム#665)の論理的帰結なのでしょう。
 このような政策転換は、韓国の品位を落とすものであり、今後の日韓関係に致命的な悪影響を及ぼす懼れがあります。
 しかし、韓国が反対したところで、日本にとっては痛くもかゆくもありません。
 問題は拒否権を持つ中国とロシアの動向です。

3 中国

 今のところ、中国政府は、昨年9月時点の、外交部報道官の「日本が国際問題においてさらなる役割を発揮するのを希望していることをわれわれも理解しているが、われわれは、一つの国が国際問題において責任ある役割を発揮するのを望むならば、自国に関わる歴史問題についてはっきりとした認識を持つ必要があると考える。国連安保理は企業の取締役会ではなく、出資金の多寡で構成を決めるわけにはいかない」という発言、及び李肇星外交部長の国連総会での「中国は安保理常任理事国の拡大に賛成しているが、発展途上国の代表性を優先的に高めることを主張する」という演説が示すように、賛否を明らかにはしていません(http://www.pekinshuho.com/04-45/45-zhongyao-1.htm前掲)。
 懸念されるのは、中国のインターネットのいくつかのサイトで、日本の常任理事国入りに反対する「署名」活動が行われており、「署名」総数が先月31日の時点で公称2,200万人に達したことです。
 通常このような政治的活動は御法度のはずなのですが、中国政府は禁止するどころか、メディアに大々的に報道をさせています。
 万一中国政府が、日本の安保理常任理事国入りを阻止するようなことがあれば、このところ悪化している日中関係は取り返しがつかないほど険悪化することでしょう。
 (以上、http://www.nytimes.com/2005/04/01/international/asia/01china.html?pagewanted=print&position=(4月1日アクセス)による。) 私は、そんな愚行を中国政府は犯さないだろう、と信じています。

4 ロシア

 ロシアはこれまでのところ、「(日本への)協力を惜しまない」(アレクセエフ外務次官)という姿勢です(http://www.sankei.co.jp/databox/n_korea/nkorea_35_1.htm。4月1日アクセス)が、前述したように、国連の安全保障常任理事国拡大について、BBCが世論調査をした23カ国中ロシアだけが賛成が過半数を切っており、新常任理事国には拒否権を与えない方針を打ち出している(http://nippon.zaidan.info/seikabutsu/2003/01297/contents/244.htm前掲)こともあって、ロシアの最終的去就は予断を許しません。