<米単独開戦前夜(?)の朝鮮半島(その2)>
(コラム#708が届いていない読者の方は、大変恐縮ですが、HP(http://www.ohtan.net)の時事コラム欄で読んで下さい。今回も同じ障害が生じないことを祈っています。)
ウ 米韓に残された最後の紐帯
このように、今や米韓同盟は名存実亡状況になっており、いつ米韓同盟が米側から打ち切られても不思議ではない状況なのですが、かろうじてブッシュ政権を思いとどまらせているのは、キリスト教コネクションがあるからだ、という指摘がなされています。
つまり、キリスト教原理主義志向のブッシュ政権として、韓国の総人口の少なくとも26%以上でひょっとすると50%近くを占めていると言われているキリスト教信者(大部分はプロテスタント)の多くが親米派であることは無視できず、このことが米韓をかろうじてつなぎとめる紐帯となっている、というのです。
(以上、http://www.atimes.com/atimes/Korea/GD08Dg01.html上掲、による。)
3 開戦前夜の米朝関係
(1)北朝鮮
2月11日、ニューヨークの北朝鮮国連代表部の次席大使は、北朝鮮が六カ国協議に復帰することはないし、米朝二国間協議も求めない、と明言しました(http://www.nikkei.co.jp/news/main/20050212STXKG000412022005.html。2月12日アクセス)。
今にして思えば、これは核保有宣言とほぼ同時に併せてなされたところの、北朝鮮の抜本的政策転換の意思表示だったのです。
北朝鮮の金正日体制は、米国が二国間協議を拒み、まとまるはずのない六カ国協議で時間稼ぎをして準備を整えた上で、北朝鮮の核関連施設への武力攻撃ないし金正日体制の転覆を行おうとしている、と判断し、これを「抑止」するため、総力を挙げて対米核攻撃能力を整備することを決意した、ということです。
2月の下旬には金正日自身が、訪朝した中国共産党対外連絡部長に対し、「六カ国協議をやっても意味がない」と言明しています(http://www.yomiuri.co.jp/world/news/20050225i316.htm。2月26日アクセス)。
この政策転換がブラフではないことを確信して警報を鳴らしたのが、4月の上旬に平壌を訪問した米国のシンクタンクの研究員ハリソン(Selig Harrison)です。
金正日が何の担保もなく、このような一見自殺的な政策転換をするはずがありません。
核「抑止」力を整備するということは、国際機関等からの食糧援助のおかげで国民を餓死させずに済んでいるという、惨めな経済財政状況が依然続いているにもかかわらず、より多額の経費を非生産的な核兵器整備に投入しなければならないことを意味します。
しかし、これを埋め合わせてもおつりが来るだけ韓国と中共から経済援助が得られる(注1)、とふんだに違いないからこそ、金正日は政策の大転換に踏み切ることができたのです。
(以上、特に断っていない限りhttp://www.latimes.com/news/nationworld/world/la-fg-korea10apr10,1,4050968,print.story?coll=la-headlines-world(4月11日アクセス)による。)
- (注1)中共は、北朝鮮の金属鉱石や石炭等あらゆる天然資源を買い漁っており、また、中朝国境貿易を急速に伸ばしている。また、北朝鮮にガラス工場を建設したり、製鋼所二箇所を再建したりといった投資も活発に行っている。どうやら中共もまた、米国の腹の中を読み切り、六カ国協議の勧進役から降りたようだ。
韓国の親北朝鮮ムードは既に説明したところだが、韓国政府は北朝鮮内の国境近くの開城(Kaesung)における(韓国の工場誘致用の)工業団地整備プロジェクトを推進しており、昨年6月には起工 式が行われている。
(以上、http://www.csmonitor.com/2005/0414/p01s04-woap.html(4月14日アクセス)による。開城の工業団地については、http://www.mainichi-msn.co.jp/yougo/archive/news/2004/06/20040624ddm007040067000c.html(5月1日アクセス)も参照した)。
北朝鮮がいかに大真面目かは、4月の中旬に、米国政府によって、4月に入って北朝鮮の寧辺(ヨンビョン)原子炉が稼働を停止し、使用済み核燃料棒を取り出せる状態になっていることが確認されたことからも分かります。
北朝鮮は約2年前に、米朝枠組み合意で停止した原子炉を再稼働するとともに、凍結していたところの使用済み核燃料棒8000本の再処理の完了を宣言していますが、再び停止させた原子炉から核燃料棒を取り出し、これを再処理すれば、北朝鮮の保有するプルトニウムは倍増することになります。
(以上、http://www.asahi.com/international/update/0417/001.html?t1(4月17日アクセス)による。)
この北朝鮮の抜本的政策転換を待ち構えていたかのように、米国の動きが慌ただしくなってきました。
(続く)