<米単独開戦前夜(?)の朝鮮半島(その3)>
(2)米国
ア 北朝鮮封鎖構想のリーク
寧辺の原子炉の稼働停止(注2)を受けて、と考えられていますが、4月18日にホワイトハウスの報道官が、「北朝鮮が六カ国協議に復帰しないのなら、関係国と協議して次のステップを考えなければならない」とした上で、国連安保理への付託も選択肢の一つだと発言しました(http://english.chosun.com/w21data/html/news/200504/200504190020.html。4月21日アクセス)。次いで22日にはライス米国務長官が、北朝鮮の核問題の議論を国連安保理の場に移すことも考えなければならない、という趣旨の発言を行いました。
- (注2)北朝鮮の国連代表部次席大使は、北朝鮮が原子炉を停止させ、核弾頭をつくるための使用済み核燃料再処理を始めたことを認めた、とUSA Today紙が4月19日に報じた。
ライス長官らの頭の中に何があるのかが明らかになったのが4月24日付のNYタイムス記事です。
この記事は、複数の米政府筋の話として、米国政府が、核物質や核装置を搭載している疑いのある車両・航空機・船舶等を差し止めることができる権限をすべての国連加盟国に与える決議案を、国連安保理に上程すべく検討している、と指摘したのです。
この決議案は、名指しこそしてはいませんが、事実上北朝鮮を封鎖(quarantine)することを念頭に置いたものであり、しかも、その隠された最大のねらいは、中朝国境を通じての北朝鮮からの武器・麻薬・偽造通貨の「輸出」を差し止める法的根拠を中共に与えることにある、というのです。
(以上、http://www.nytimes.com/2005/04/25/politics/25prexy.html(4月26日アクセス)による。)
米国政府は、六カ国協議も引き続き追求すると言ってはいますが、このような北朝鮮封鎖構想をリークしたということは、米国もまた、抜本的な政策転換を行ったことを意味します。
案の定、ホワイトハウス報道官の発言の翌日の19日段階で早くも韓国政府は、安保理への付託と経済制裁に反対する意向を表明し(http://english.chosun.com/w21data/html/news/200504/200504200015.html。4月21日アクセス)、中共政府も26日になって、安保理への付託に反対する意向を表明しました(http://english.chosun.com/w21data/html/news/200504/200504270005.html。5月2日アクセス)。
米国政府は、この二カ国が反対することは百も承知の上で、北朝鮮封鎖構想をぶちあげた、と私は見ています。
イ 北朝鮮の核の脅威のプレイアップ
上記抜本的政策転換に伴い、米国政府は北朝鮮の核関係の情報を積極的に公開し始めます。
4月28日に米国防情報局長のジャコービー(Lowell E. Jacoby)海軍中将は米上院で、北朝鮮は核弾頭をミサイルに搭載する技術と、ハワイとアラスカに加えて米本土の一部にも到達できる大陸間弾道弾の技術を既に持っている、と証言しました(http://www.nytimes.com/2005/04/28/politics/28cnd-korea.html。4月29日アクセス)。
しかしこの段階で、ジャコービー局長が公開の場で北朝鮮が核弾頭のミサイル搭載技術を既に持っていると確定的に証言したことに、その事実の検証は事柄の性質上極めて困難なだけに、米情報筋は一様に驚きを隠せないでいます。
翌29日にブッシュ大統領自身が、北朝鮮がこの技術を持っていると考えた方がよい、と述べた(後述)ことと併せて考えると、米国は北朝鮮の核の脅威をプレイアップすることにしたのでしょう。
(以上、http://www.washingtonpost.com/wp-dyn/content/article/2005/04/28/AR2005042802113_pf.html(4月30日アクセス)による。)
そして同じ4月29日には、米国がIAEA(International Atomic Energy Agency)に対し、3月から北朝鮮が地下核実験の準備を進めており、早ければ6月にも核実験を行う可能性があると伝えたことも明らかになりました(http://english.chosun.com/w21data/html/news/200505/200505010011.html。5月2日アクセス)。
われわれとして次に関心を持つべきは、米本土の一部にも到達できる、すなわち対米「抑止」力たりうるところの大陸間弾道弾(テポドン2)の飛翔実験を北朝鮮がいつ行うのか、(その情報がいつ米国からリリースされるのか、)です。
そこへ、ブッシュ米大統領から北朝鮮に対し、「宣戦布告」が行われたのです。
(続く)