太田述正コラム#10318(2019.1.17)
<皆さんとディスカッション(続x3955)>

<太田>(ツイッターより)

 「レーダー照射「日本の政治家なら韓国に抗議すべきだ」 国民・玉木代表、立民・枝野代表を猛批判…」
https://news.infoseek.co.jp/article/00fujisoc1901160018/
 そもそも、安全保障問題に関心を持つか持たないかの両グループに旧民主党が分裂したんだから、今更、特定の安保問題に関心を示さないって批判するのオカシイぜ、玉木クン。

<七氏>

 <スライド#4の>図で(天皇の)「権威度の上昇」上向きの矢印に加えて、権力者側の「権力行使の自由度拡大」も下向き矢印で入れた方が分かりやすいかなと思いますが、どうでしょう。
 「天皇からの距離の延伸」が分かりやすくなるような。

<太田>

 もともと、3年前に<この部分の>スライド資料を作る時に、「権威度の上昇」という言葉を入れたのはUSさんではなかったかと思いますが、USさんのご判断にお任せします。

<太田>

 皆さん、<スライド#7>の解説です。

                 記

[スライド#7]

 ヤマト王権による日本列島統一を促したと私が見ているところの、中国における統一王朝、秦、の成立(紀元前221年)の背景にあった思想は、一体何であったのでしょうか。
 私は、秋田大学の吉永慎二郎教授の説に従い、それは、当時、隆盛を極めていたところの、墨家の思想であった、と考えています。
 墨家の思想を一言で現せば、君主は、彼がその一義的解釈権を独占的に保有するところの兼愛・・自他・親疎の区別なく、平等に人を愛すること
https://kotobank.jp/word/%E5%85%BC%E6%84%9B-491364
・・なる道徳を家臣及び民衆に教え守らせること、と、平和の維持と生活必需品の生産振興を行うこと、に努めなければならないのであって、その努力が不十分であれば、放伐されてしかるべきである(吉永説)、という、専制的かつ唯物的な、マルクス・レーニン主義の古代版といった趣のものでした。
 ちなみに、秦は、中国を統一する1世紀以上も前から、法家の思想による統治を標榜してきていましたが、君主だけならいざしらず、君主の係累までもが、法の外(上)に置かれており、法家の思想はタテマエにとどまり、徹底していませんでした。
 漢以降の中国の諸王朝は、儒家の思想による統治を標榜することになりますが、このタテマエとしての法家の思想も、ホンネとしての墨家の思想とともに維持され続けます。
 では、諸王朝は、儒家の思想は、いかなる形で維持することになったのでしょうか?
 一部は、墨家の思想と習合し、それを墨家の思想改とでも称すべきものへと改変する形で、墨家の思想改の残りの部分とともに、諸王朝のホンネとして維持されることになります。
 すなわち、儒家の孟子は、墨家の思想における兼愛は(親に対する)孝や(主君に対する)忠(下出)を蔑ろにするものであると批判した
https://kotobank.jp/word/%E5%85%BC%E6%84%9B%E8%AA%AC-60245
のですが、こういった批判もあってか、中国では、臣下達を含め、(唯物的目的を追求しつつ)孝を忠よりも優先すること・・私はこれを、利己主義的な阿Q的人物達による一族郎党命主義と形容しています・・が、一貫して当然視され続けることになります。
 しかし、儒家の思想の核心部分が、中国の諸王朝のホンネになることはありませんでした。
 儒家は、親の子に対する無償の愛が仁愛(仁)であるとし、子に対して、その反射として、親への崇敬の念である孝を奨励するとともに、臣下等に関しては、子の親に対する孝のアナロジーで、主君や国家に対しては忠でなければならない、とし、そのどちらも重視すべきであるとしました。
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%BF%A0
 しかし、実際には、漢人の間では、孝が忠よりも重要だと考えられており、それが変わることはありませんでした。
 だからこそ、中国では、王朝交代・・いわゆる易姓革命・・が、(その大部分が禅譲等ではなく、臣下等による放伐によって)繰り返し行われたのです。
 王朝交代は、元と清の場合は、周辺少数民族による漢人王朝の征服によって行われましたが、これは、漢人諸王朝のホンネたる墨家の思想が、平和志向であったこともあり、軍事を蔑ろにする傾向があったからです。
 このような、中国の王朝交代史に終止符を打ったのが、欧米文明を継受したところの、日本の興隆の衝撃でした。
 この衝撃は、中国において、清末・中華民国時代の第一フェーズでは日本を通じた欧米文化継受努力をもたらし、中華人民共和国成立後の第二フェーズでは日本文明総体継受努力をもたらし、現在に至っているのですが、この話は、次回、掘り下げて行います。

 USさん、この解説を踏まえ、必要あらば、スライド#7の修正をお願いします。
 なお、「仏教の影響」は削除しましょう。
 また、せっかく文十郎さんに作っていただいたけれど、スライド#10は落としましょう。
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 <第二回資料 #11>は、次回回しにしましょう。
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 USさん、<第二回資料 #8>に関し、下掲の修正をお願いします。

       太田

                記

1 部分的差し替え         

兼愛(平等)と非攻(非戦)を説いたことで知られる。
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%A2%A8%E5%AD%90
「墨家の思想は、生活必需品の増産を至上命題とする唯物論であり、かかる墨家の思想、すなわち義の解釈権を君主が独占し、その義を全家臣及び民衆が信じ、生活必需品の増産に勤しまなければならない、という、マルクスレーニン主義に極めて類似した全体主義思想<だっ>た。・・・<そして、>周の天命論・・儒家もこれを当然視していた・・に対し、義の理論を提起することによって君主交代の論理を提供した」(コラム#1640)

「儒学の仁の思想を差別愛であるとして満足せず、・・・兼愛・非攻」を説き、その「究極の実践形と言える防御・守城の技術者集団」を形成し、一時は「儒学と並び称される程の学派となった。・・・
兼愛とは・・・全ての人に平等な愛をということであ<り、>非攻とは一言で言えば、非戦論である。」
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%A2%A8%E5%AD%90#cite_note-kengaku-4

氏族共同体を基礎とする身分秩序制が解体されつつあった周末に生まれ周初への復古を理想として身分制秩序の再編と仁道政治を掲げた。戦国から漢初期にかけては勢力は振るわなかったが前漢・後漢を通じて勢力を伸ばし国教化された。以後、儒教は中国思想の根幹たる存在となる。
20世紀になると民主主義と科学を普及させる観点から孔子及び儒教への批判が展開される。近年では、中国共産党が新儒教主義を提唱し「孔子」がブランド名として活用されている。
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%AD%94%E5%AD%90

「氏族共同体を基礎とする身分制秩序が解体されつつあった周末、・・・周初への復古を理想として身分制秩序の再編と仁道政治を掲げた。・・・孔子の弟子たちは孔子の思想を奉じて教団を作り、・・・儒家となって諸子百家の一家をなした<が、>・・・戦国から漢初期にかけてはあまり勢力が振るわなかった。しかし前漢・後漢を通じた中で徐々に勢力を伸ばしていき、国教化された。以後、時代により高下はあるものの儒教は中国思想の根幹たる存在となった。・・・
近年、中国では、中国共産党が新儒教主義また儒教社会主義を提唱し<ている。>」
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%AD%94%E5%AD%90

2 全面的差し替え

 管仲の箇所を全面削除し、下掲で置き換える。
 (どうして、こんな<、管仲を法家の代表格として紹介するなどという>間違いを3年前にやらかしたのか不思議です。)

韓非(Han Fei BC280?~233年)

、中国戦国時代の思想家(タテマエ)

[肖像画は、あれば、ですが、みつくろってください]

「出自は韓の公子であ<る。>・・・政治の基準は万人に明らかであるべきで、それは制定法という形で君主により定められるべきものである。・・・制定法・・・に基づいて賞罰を厳正におこなえば、臣下はひとりでに君主のために精一杯働くようになる<のであって、>・・・儒家の<ように、>・・・道徳性を臣下に期待するのは的はずれで<ある。>」と主張した。
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%9F%93%E9%9D%9E

<豊丘時竹>(2019.1.15)http://toyotoki11.hatenablog.com/entry/2019/01/15/225328

 –縄文モードから弥生モードに転換中–
 ・・・今上陛下は2016年7月の「生前退位の意向表明」によって、縄文モードを弥生モードに転換するように示唆された、と太田さんは考えているということである。
 あのご発言にはそんな意味もあったのである。
URL;https://www.ohtan.net/blog/archives/12181

<豊丘時竹>(2019.1.16)http://toyotoki11.hatenablog.com/entry/2019/01/16/154847

 –脳死現象–
 ・・・家計について女房にまかせっきりだと、この日本の政官界と同様属国脳死状態になるのだろう。
 すべてにおんぶにだっこ、情けない状態である。
URL;http://www.ohtan.net/blog/archives/12187

<太田>

 昨日、日比谷高校紹介番組(NHK総合)を見ました。
 生徒が授業を行うってのは昔の日比谷と同じ。
 それが可能になったのは、それだけ、生徒の質が回復してきているということで、単に、母校だから、ということでなく、日本の公立中等教育の将来に向けて、大変結構なことだと思います。
 (但し、数学の授業で、昔よりも教師の出番が少なくなっていること、英語までディベートをやらせたりして生徒参加方式になっていること、は、大丈夫かなって思いましたが・・。)
 また、どうやら、私の当時のクラス対抗合唱祭の代わりに、文化祭(星陵祭)の時にクラス対抗演劇祭を併せて開催することになっているようで・・。
 それはともかく、(私の当時にはありませんでしたが、)一中・日比谷高の歴史の展示室ができているとはね。
 残念なのは、全校舎が、私の当時からすっかり様変わりしていたことです。
 そうカネをかけられないので仕方がないけれど、歴史を超えて続く、東大の本郷キャンパスの法学部の教室群を通して眺める安田講堂、的な風景は望むべくもないんですねえ。
 なお、気になったのは、生徒達の間に、外国人っぽい人が全く見当たらなかったことです。
 
<太田>

 それでは、その他の記事の紹介です。

 お騒がせゴーン。↓

 <ドアホ。↓>
 「海外高級住宅購入、ヨットクラブ会費・・・ゴーン前会長の私的流用が次々判明 日産内部調査で・・・」
https://mainichi.jp/articles/20190116/k00/00m/040/254000c
 <遅過ぎ。こんなことだから、何度もフランスで革命が起こったんだよ。↓>
 「日産幹部「仏政府、ゴーン氏見限った」・・・」
https://digital.asahi.com/articles/ASM1J5722M1JULFA01N.html?rm=695

 BBCも大きく取り上げた。↓

 Kisenosato, Japan’s last remaining sumo champion, retires
https://www.bbc.com/news/world-asia-46892222

 こんな話、聞いとらんぞー。↓

 A decision by Taiwan’s National Palace Museum to lend a rare (顔真卿の)calligraphy to Japan’s Tokyo National Museum has sparked outrage across China.・・・
https://www.bbc.com/news/world-asia-china-46887545

 近藤麻理恵を巡って、大論争が米国で起きてるってのに、日本の主要メディアが全く関心を示してないのは、いったいどういうわけだ?↓

 I have become a Marie Kondo disciple. I am proud and ashamed.・・・
https://www.washingtonpost.com/opinions/2019/01/16/konmari-me-all-you-need-is-love-well-organized-home/?utm_term=.dad652fc1bca

 中共官民の日本礼賛(日本文明総体継受)記事群だ。↓

 <人民網より。
 着物まで奨励?↓>
 「日本の成人式で着物のレンタルサービス活況・・・」
http://j.people.com.cn/n3/2019/0116/c94689-9538319.html
 <日中交流人士モノ。↓>
 「ソニー・IE上海の添田武人総裁「中国発のスーパーヒーローを世界へ」・・・」
http://j.people.com.cn/n3/2019/0116/c94689-9538323.html
 「上海で日本新作映画上映会  世界初公開となる映画「翔んで埼玉」も・・・」
http://j.people.com.cn/n3/2019/0115/c206603-9537921.html
 <ここからは、サーチナより。
 定番。↓>
 「タクシーに乗れば良いのに! 日本人はなぜ満員電車に乗るのか・・・今日頭条・・・」
http://news.searchina.net/id/1674673?page=1
 <これもだ。↓>
 「なぜ日本人のようにできないのか! 日中の交通事故を比較して「怒りとやるせなさ」・・・中国メディアの百家号・・・」
http://news.searchina.net/id/1674681?page=1
 <これもまたそうだ。↓>
 「日本旅行に来たある中国人観光客が「なんて高級なんだ」と感激した場所は?・・・トイレ・・・中国メディア・東方網・・・」
http://news.searchina.net/id/1674701?page=1
 <日本車キャンペーンに感謝だな。↓>
 「・・・中国メディアの一点資訊は・・・車をよく分かっている人は日系車を買い、分からない人がドイツ車を買うが、本当に分かっている人は・・・マツダとレクサス・・・を買うとする記事を掲載した。・・・」
http://news.searchina.net/id/1674697?page=1
 <そうだよー。↓>
 「中国が日本と同じ「深刻な問題」<(人口減)>に直面、「わが国はまもなく<人口で>インドに追い越される」・・・
http://news.searchina.net/id/1674698?page=1
 <そうやろな。↓>
 「日本人が作った中華料理は「中国の中華料理と全然違う! だが味そのものは悪くない」・・・今日頭条・・・」
http://news.searchina.net/id/1674706?page=1
 <おお、新しい話題である!↓>
 「・・・中国メディアの捜狐・・・記事は、中国では自動車台数が急速に増加し、駐車スペースが足りないため歩道などに無理に駐車しようとして柵などを破損することが多いと指摘。さらに運転初心者も多いため、駐車場に停めるのが一苦労だという。何度もやり直しても入らず、ほかの車にこすったり、駐車スペースが狭いのもあるのか、ドアを開けて隣の車にぶつかったりということも多いという。ひどい場合には交通事故や死傷者を出すこともあるため、「被災地のよう」というのもあながち大げさではないだろう。
 記事はその点、日本の駐車場は「利用者のことを考えた設計だ」と称賛している。駐車場の設計が合理的なので停めやすく、狭い土地を最大限有効利用していると感じるそうだ。斜めに線を入れている駐車場には、より多くの車を駐車できる利点があり、立体駐車場も多いので多少面倒ではあるが駐車場不足の解決になっていると伝えている。
 さらに、「駐車しやすさ」も指摘している。日本では多くの駐車場で単線ではなく二重線がひかれているが、これは駐車スペースの中心に停めやすくするもので、乗り降りもより安全かつスムーズにできる利点がある。記事は、中国では線を無視して駐車してしまう人がいると指摘、日本の整然とした駐車場との違いを強調している。」
http://news.searchina.net/id/1674720?page=1
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太田述正コラム#10319(2019.1.17)
<丸山真男『政治の世界 他十篇』を読む(その1)>

→非公開