太田述正コラム#9269(2017.8.10)
<改めて米独立革命について(第II部)(その13)>

 「「・・・<この紛争>の規模たるや、まさに「大陸的」だった。」
 著者が示すように、13の<英領北米>諸植民地は、アパラチャ山脈の西側の諸地を巡っての、フランス、スペイン、そしてインディアン諸部族、との間での、より大きな文脈の競争(contest)における、一つのプレヤー、でしかなかったのだ。
 <英本国との>紛争の勃発に関し、このことが、課税に係る諸紛争と並んで、決定的な要因だったのだ。・・・
 著者は、悪者にされた親英派達に対して、同情的に取り扱っている。
 彼らは、後世の人々によって、もっと良い評価が与えられるべきだ、と。
 著者は、ニューヨーク市の郊外を荒廃させた非正規戦の描写がとりわけ上手だ。
 そこでは、両方の側からの悪漢達や諸部隊が、食料を漁るために諸農家を襲撃した。
 諸残虐行為はありふれていたが、それによって、英軍の方の評判が、より下落した。
 著者は、また、「英議会に諸税を払いたくないし、さりとて、愛郷者達の、諸ボイコット、新諸宣誓、軍役、家畜の徴用、そして、切り下げられる通貨、も願い下げ」であったところの、「疎外された中立者達」の運命も、見事に描いている。
 著者は、<彼らによる>諸選択がいかに暫定的なものであったかを記す。
 「長い戦争の間の勝利と敗北の干満は、その過程で、広義の優柔不断者達に位置づけられる人々の多くを、一方の側からもう一方の側へと翻心させ、時には、暫時経過した後、また、元に戻らせたりした」、と。
 この本は、このような、辛辣な諸見解において、傑出している。
 この本の最後の3分の1は、<英本国との間の>1783年の平和諸取極めの後の<独立米国内の>政治的策動の詳細を記している。
 いかなる進路を採るべきかについての見解の一致は殆どなく、この新しい国の指導者達は、英本国当局にとって処理不可能であったのと同じ諸問題に憑りつかれたのだ。
 そのうちの一つは、諸債務を支払うために、より高い諸税をかけなければならなかったことだ。
 (いわゆる、戦争の敗者達であるところの、親英派達は、南方の成り上がり者共和国に恥ずかしい思いをさせるために諸改革を導入した、カナダにおいて、より軽い諸税を享受した。
 この本を通しての示唆は、決って圧政的であると戯画化されるところの、大英帝国が、それに対して叛乱を起こした子孫<たる米国>に比して、より啓蒙されていた、というものだ。)(f)

3 終わりに

 米国は、英本国、就中、イギリスの、嫡出子とは到底言えない代物である、すなわち、できそこないのアングロサクソンである、と、私が言い続けてきたところ、そのことを、米国人識者の少なくとも一人が全面的に認めたのことは、大変心強いものがありました。
 この彼の勇気を大いに称賛したいと思います。
 しかし、このような米国観・・まさにトランプは、そんな米国の大統領としてふさわしいと言えるでしょう・・が、日本人の過半に浸透するのは、一体、いつになることでしょうか。

(完)