太田述正コラム#10436(2019.3.17)
<皆さんとディスカッション(続x4014)>

<太田>(ツイッターより)

 「NHK大河「いだてん」序盤で失速 2月に視聴率10%割れ…」
https://www.tokyo-np.co.jp/article/entertainment/news/CK2019031602000202.html
 文中で理由が列挙されているが、どれも違う。
 唯一最大の理由は、今回のドラマの舞台である歴史が、あえて言うが、どうでもいいものなので、知的関心が掻き立てられないことだよ。
 企画者よ出てこい。
 受信料を返せー。

<35xR/QEs >(「たった一人の反乱(避難所)」より)

 なるほどね。
 人間主義ってのは、能力のある人がその能力の発揮を控えるのか。
 そもそも能力の無い人はダメってことね。

⇒そんなこと言ってないぞー。
 人によって能力差はあるけど、能力ゼロの人なんかいないの。
 誰でも、天から与えられたその能力を、何のためにどんだけ使うかを決める自由があることが前提。(太田)

 でも、能力の無い人を排除しようとすると争いが生じるけど、人間主義はこれにどのように対応するのかね?

⇒自分が何を聞こうとしてるのかが分かってるとして、前回と違って、どうして、まず自分の見解を言わないん?
 言ってごらん。(太田)

<US>

 ・・・<宋教仁? 孫文?(太田)の>活動<は>ナショナリズムをベースとした中国統一国家の建設を目指すためなのでしょうが、八方美人的な動きに見えました
 明治維新は中国革命の第一歩であり、中国革命は明治維新の第二歩である、もアジア主義的なコメントにも読めますが、パトロンの一人である犬養へのおべんちゃらにも聞こえます。
 そもそもアジア主義も方便の一つでは? と思えてしまいます。

<太田>
 
 <それ、>宋教仁の話だとして、彼の唱えた議院内閣制は、日本の政治体制におけるイギリス継受の移植を目指したものであり、一つの考え方だと思いますよ。

<US>

 誤解を与えた文章でした。
 孫文のWIKIを読んで、孫文の袁世凱、日本のアジア主義者たち、国共合作(蒋介石)とのその時その時の動きを見て八方美人的と感じた次第です。
 宋については初めて知る人ですが、22才でクーデター企画・失敗、23才から日本亡命、30才で国民党の事実上の党首で選挙圧勝、そしてその3ヶ月後には、時の権力者袁世凱(当時53才 / 一部暗殺は孫文(当時46才)との説も)から暗殺されています。
 革命家らしい駆け足の一生だなと思う一方、ますます、孫文のやってきたことに深みを感じられてしまい、孫文の犬養に対する「明治維新は中国革命の第一歩であり、中国革命は明治維新の第二歩である」も上部っつらだけのものと感じてしまった次第です。

<太田>

 USさんを含む皆さん、スライド#6の解説案です。
 昨日、内々にお示ししたものの改定版です。

               記

 このスライドは、杉山元が、1931年から1945年までのいわゆる15年戦争の間、陸軍を取り仕切り、ひいては、日本政府を取り仕切ったことを体感していただくためのものです。
 彼が、ほぼ一貫して陸軍の最重要ポストないしそれに準ずるポストに座り続けたこと、かつまた、途中から首相の大部分に彼の協力者が就いていたこと、が分かりますよね。
 しかも、彼がそれらのポストに就いていた時に、重大な出来事が必ず起こっています。
 それらの出来事は、ことごとく、杉山が首謀者として引き起こしたものである、と私は見ているのです。
 まずは、この壮大な物語の「前史」から始めましょう。
 杉山が、この物語のいわば脚本・・私はそれを「杉山構想」と名付けています・・を書いたのは、彼が軍事課長(1923年~25年)の時
https://sakurataro.org/%E6%9D%89%E5%B1%B1%E5%85%83 ※
である、というのが私の想像です。
 なお、この軍事課長の時或いは既にそれ以前に、当時商工官僚であった木戸幸一との縁を通じて、杉山は商工省に日本型経済体制構築研究を働きかけた、とも私は踏んでいます。
 また、杉山が次官になるすぐ前の軍務局長の時に商工省の外局として、日本型経済体制構築の端緒となるところの、臨時産業合理局の設置が行われます
https://www.jacar.go.jp/glossary/term1/0090-0010-0040-0030-0050.html
が、これは杉山の差し金だった可能性が大です。
 その根拠の一つは、杉山が、後、参謀次長の時に、参謀本部から大金を外部に流して日本型経済体制を完成させる研究を行わせていることです。
 さて、これからが、いよいよ「本史」です。
 杉山が、次官の時には、三月事件(1931年3月)・・陸軍挙げてのクーデタ計画だったが、当時の陸相の宇垣一成が日和って未遂に終わった・・が起こり、満州事変が勃発(1931年9月。柳条湖事件)し、参謀次長・・当時の閑院宮参謀総長はお飾りだったので次長は実質的な参謀総長・・の時には二・二六事件(1936年2月)が起こり、陸軍大臣の時には、陸軍が提案して厚生省・・日本型社会体制を構築することとなる・・が設立(1938年1月)され、日中戦争が勃発(1937年7月。盧溝橋事件)するとともに、それが本格化(1937年8月。第二次上海事件)し、参謀総長の時には、日本型政治体制であるところの大政翼賛会が設立(1940年10月)され、「昭和三十五年総人口一億を目標とす」る「人口政策確立要綱」(1941年1月)が閣議決定され、
http://www.res.otemon.ac.jp/~yamamoto/be/BE_law_07.htm
更に、大東亜戦争が始まっています(1941年12月)。
 杉山は、たまたま、その場に居合わせる巡り合わせだったに過ぎないのでは、という声が聞こえてきそうですね。
 いや、そんなはずはありません。
 軍隊では、戦闘中に指揮官が斃れたら自動的に次の指揮官が決まるように、一般将校全員に序列が付けられており、「平時」においても、皆、序列の上下を意識しているものなのです。
 杉山が、1937年4月に陸軍中将中で序列1位、陸軍全体でも(寺内寿一大将は別として・・どうして別としていいかの説明は省きます・・事実上3位にになり(コラム#10365)、その後、杉山が1936年11月に大将に昇任した(※)ところ、彼より上位だった西義一大将はそれまでに1936年8月に予備役に編入されており、また、同じく上位だった植田謙吉大将はその後1939年12月に予備役に編入された
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E8%A5%BF%E7%BE%A9%E4%B8%80
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%A4%8D%E7%94%B0%E8%AC%99%E5%90%89
結果、1939年12月の時点で、杉山は、事実上、陸軍序列1位になっています(コラム#10365も参照)。
 1937年に中将で1位になったということは、将来、陸軍大将で、つまりは、陸軍で、1位になることがほぼ確定したということです。
 振り返れば、そもそも、杉山が、1921年に大佐に昇格した後、1923年に陸軍省の中枢課(当時)であった軍事課の課長になった(※)時点で杉山は陸士同期の序列1位になり将来陸軍の序列1位になる有力候補になった、と思われるのであって、1925年に少将に昇格した後、1928年に陸軍省の中枢局である軍務局の局長になった(※)時点でその可能性が飛躍的に高まり、1930年に陸軍次官に昇格(同時に中将に昇格)した(※)時点では、ほぼ確定したはずです。
 そうであった以上、1930年以降は、杉山が陸軍のどこで何をしていようと、彼の階級以下の陸軍の将校達は、誰であれ、杉山からの指示ないし依頼に基本的に従うようになったはずなのです。
 そんな、杉山が、その後、ほぼ一貫して陸軍の最重要ポストないしそれに準ずるポストに就き続けたわけであり、そういうポストに就いていた時の杉山からの指示ないし依頼には、彼の階級以下の陸軍の将校達は、誰であれ、無条件で従ったはずなのです。
 そんな権力を杉山が振るわなかったとは考えにくく、一貫して振るい続けた、と考える方が自然でしょう。
 皇族将官ならいざ知らず、将官が権力を振るわなければ、つまりは、仕事をしなければ、たちまち淘汰されてしまったはずだからです。
 付言しておきますが、杉山が(それまでなかったポストであるところの)首都を含む内地の東半分を所管する第一総軍司令官であった時も、彼は陸軍の最重要ポストに就いていたと言えます。
 というのは、当時の陸相の阿南惟幾が杉山の協力者であったことはもとよりですが、内地の西半分を所管する第二総軍司令官の畑俊六は、(杉山の協力者であった小磯國昭同様、)杉山の陸士・陸大同期であって、杉山の協力者とまでは言えないものの、杉山のおかげで陸相になり、また、(1943年に寺内寿一と同日付で元帥になった)杉山より1年遅れてですが元帥にもしてもらっており、
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%85%83%E5%B8%A5_(%E6%97%A5%E6%9C%AC)
杉山が決めればそれに従ったはずの人物であって、杉山が、事実上、内地全体を占領下に置いていたようなものだからです。
 その杉山は、構想の最後の仕上げとばかりに、蒋介石政権からの事実上降伏申し出を政府に握り潰させ、ソ連の対日参戦意思及び参戦時期を知っていてあえて陸軍外へそれを伝えさせず、かつ、米軍による日本占領をほぼ確実化した上で、原爆投下があったため、予定より若干早い段階で終戦を決断し、日本に終戦をもたらしたのです。

<太田>

 それでは、その他の記事の紹介です。

 「高齢」者が即決勝負に強いとは、まさに驚異。↓

 「羽生、・・・一般棋戦の通算優勝回数を45回に伸ばして歴代単独1位となった。2016年に大山康晴十五世名人(故人)の持つ44回に並んでいた。NHK杯優勝は7年ぶり11回目。・・・
 一般棋戦優勝記録は大山以下、中原誠十六世名人(28回)、加藤一二三九段(23回)、谷川浩司九段(22回)と続いている。」
https://www.msn.com/ja-jp/news/national/%E7%BE%BD%E7%94%9F%E3%80%81%E4%B8%80%E8%88%AC%E6%A3%8B%E6%88%A6%E3%81%A7%E6%9C%80%E5%A4%9A%E5%84%AA%E5%8B%9D-%E6%AD%B4%E4%BB%A3%E5%8D%98%E7%8B%AC1%E4%BD%8D%E3%81%AB/ar-BBURS31?li=BBfTvMA&ocid=spartanntp

 ・・・。↓

 「小室圭さん問題、急所は祖父の「遺産分割協議」・・・」
http://news.livedoor.com/article/detail/16170104/

 米国の猿真似などせず、経営大学院も法科大学院も廃止した方がいいよ。
 学部教育だけで十分。↓

 「1年生でBEAMS社長にプレゼンも–早慶に匹敵する立教の・・・経営学科・・・」
https://www.msn.com/ja-jp/news/opinion/%E3%80%90%E6%96%B0%E9%80%A3%E8%BC%89%E3%80%911%E5%B9%B4%E7%94%9F%E3%81%A7beams%E7%A4%BE%E9%95%B7%E3%81%AB%E3%83%97%E3%83%AC%E3%82%BC%E3%83%B3%E3%82%82-%E6%97%A9%E6%85%B6%E3%81%AB%E5%8C%B9%E6%95%B5%E3%81%99%E3%82%8B%E7%AB%8B%E6%95%99%E3%81%AE%E5%AD%A6%E9%83%A8%E3%81%AF/ar-BBUQ0Hc?ocid=spartanntp#page=2

 私が、自動運転車でこれら高速道路を疾駆する日、と、免許証を返納する日等、のどっちが早く来るんだろ。↓

 「新名神・新東名きょう開通 「渋滞名所」も激変! 続く春の道路開通ラッシュ・・・」
http://news.livedoor.com/article/detail/16172047/

 日本のホワイトデーが珍しいみたいね。↓

 White Day: Japan’s reverse Valentine’s Day–A special follow-up day to Valentine’s sees men gifting women. But what might a dip in its popularity tell us about modern Japan?・・・
http://www.bbc.com/capital/story/20190313-white-day-japans-reverse-valentines-day

 クライストチャーチの事件の犯人逮捕の瞬間についての記事だが、読んでもよく分からない。
 誰か、映像を見て教えてたもれ。↓
https://www.washingtonpost.com/world/2019/03/16/this-cellphone-videos-shows-alleged-new-zealand-mosque-attackers-dramatic-arrest/?utm_term=.277615110f6f

 見出しとは違って、記事の中身は楽観的だが、甘いんでねーの?↓

 After two deadly disasters in five months, can Boeing survive? –The global grounding of its bestselling model after 346 deaths has created a genuine crisis for the company and its clients・・・
https://www.theguardian.com/business/2019/mar/16/boeing-how-big-is-crisis-two-disasters-five-months

 文明の衝突を唱えた、かのハンティントンも人種主義者でしたってオハナシ。↓

 ・・・In the 2000s, the historian Samuel Huntington wrote that “America was created by … settlers who were overwhelmingly white, British and Protestant” – and therefore the arrival of Hispanics in large numbers remained a direct threat. Huntington denigrated such immigrants as people with “dual nationalities and dual loyalties”, because of their Spanish language and Catholic religion.・・・
https://www.theguardian.com/books/2019/mar/16/el-norte-review-carrie-gibson-epic-history-hispanic-north-america

 朝鮮日報、頑張れー。↓

 「【コラム】「親日」校歌の否定、「親日」国歌の否定・・・」
http://www.chosunonline.com/site/data/html_dir/2019/03/15/2019031580112.html 

 これも、見出しはいいんだけど、記事の中身は、日本の影もない、要は旧態依然の毛沢東主義観だけだな。↓

 Maoism marches on: the revolutionary idea that still shapes the world–The west has assumed that Maoism, like Soviet communism, has been left in the dust: no European rebels these days carry a Little Red Book. But the ideology is resurgent in China and remains hugely influential elsewhere・・・
https://www.theguardian.com/books/2019/mar/16/onward-march-maoism-julia-lovell

 中共官民の日本礼賛(日本文明総体継受)記事群だ。↓

 <定番。↓>
 「日本人は礼儀正しいことで有名なのに、どうしてお年寄りに「席をゆずらない」のか?・・・中国メディアの東方看点・・・」
http://news.searchina.net/id/1676752?page=1
 <これもだ。↓>
 「列に並ぶ行為をめぐる考え方の違い「日本旅行で2回並び、2回とも同胞に割り込まれた」という中国人も・・・今日頭条・・・」
http://news.searchina.net/id/1676680?page=1
 <まあ定番。↓>
 「日本の果物はなぜ高額なの?・・・今日頭条・・・」
http://news.searchina.net/id/1676756?page=1
 <こりゃ新しい。↓>
 「日本の学校給食の衛生基準、なんと手術室クラスだった!・・・中国メディア・東方網・・・」
http://news.searchina.net/id/1676753?page=1
 <同じく。↓>
 「・・・今日頭条・・・記事は、日本人がこれほどまでに「猫」が好きな理由として、「猫のかわいい仕草が癒しを与えてくれる」ことや「日本人はストレスの多い社会で生活しているため、猫の勝手気ままな性格に憧れるのだ」と分析した。」
http://news.searchina.net/id/1676757?page=1
 <これもまたそう。↓>
 「中国人が語る「京都人と大阪人の関係は、まるで北京人と上海人みたいだった!」・・・大阪は豪放、京都は含蓄・・・中国メディア・東方網・・・」
http://news.searchina.net/id/1676759?page=1
 <これもある意味そうだ。↓>
 「・・・今日頭条は・・・「日本人女性はなぜそんなに跪くことが好きなのか」と疑問を投げかける記事を掲載し、日本人女性が魅力的に見える理由について考察している。
 記事はまず、日本人女性といえば「和服姿で髪を結っていて、淑やかで穏やか」で、夫が外出したり帰宅したりした際には玄関で送り迎えするという印象を多くの中国人は持っていると紹介。それゆえ、「食べるなら中国料理、娶るなら日本人」という言葉もあるほど、中国では日本人女性に対して好印象を抱く人は多いと伝えた。
 では、なぜ日本人女性は主題にもあるように「跪く」のだろうか。記事は、日本の伝統と大きく関係していると分析している。日本では「和服」が伝統的な服装で、茶道や花道も盛んに行われていたことから、「正座して頭を下げる」ことが、相手に礼儀や敬意を相手に示す伝統的な方法とみなされていて、その習慣が現代まで受け継がれていると紹介した。
 さらに、中国人の目に「日本人女性が淑やか」に映る理由として記事は、「語調が柔らかで、礼儀正しい」こと、「仕草が物柔らか」、「内面の人柄」を紹介している。「語調」については言語が異なっているゆえ甲乙つけがたいが、「仕草」や「内面」については周りの環境に大きく影響されることだ。中国人女性の多くは、自分の意見をはっきり相手に伝えたり、男性的な強さも持ち合わせているゆえ、多くの中国人は日本人女性は淑やかであると感じるようだ。
 結論として記事は、日本人女性の「春のそよ風」のような気質は、外面ではなく、日ごろから培っている内面から出てくるものであると主張した。」
http://news.searchina.net/id/1676754
 <同じく。↓>
 「・・・今日頭条・・・記事はまず、日本とドイツの模倣の歴史について紹介している。20世紀の中頃、日本が高度経済成長を遂げている際、日本で製造される様々な製品は「欧米諸国の製品と非常に似ていた」とし、それを写真で紹介した。確かに写真を見る限りは「模倣」と言われても仕方ないほどに似ている。また、ドイツについても過去には英国製の製品を模倣して製造していた時代があったと強調している。
 続けて記事は、どちらも他国の製品を「模倣」していた時代があったが、その「辿ってきた道は異なる」と紹介。日本の場合は「改善」を重視してきたのに対し、ドイツは「完璧さ」を重視してきたと指摘したほか、日本は人材を重視してきたのに対し、ドイツは人はミスをする生き物という前提のもと、人が関わる工程を極力減らすアプローチで成長してきたと主張。日本とドイツは共に模倣からスタートし、その後に辿ってきた道は異なるが、現在はどちらの製造業も高い競争力を持っていると指摘した。」
http://news.searchina.net/id/1676755?page=1
 <これもまたそう。↓>
 「中国の小学校、授業が終わるのは5時・・・日本人「遅すぎる!」・・・中国メディア・東方網・・・」
http://news.searchina.net/id/1676758?page=1
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太田述正コラム#10437(2019.3.17)
<ディビット・バーガミニ『天皇の陰謀』を読む(その18)>

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