太田述正コラム#7902005.7.13

<欧州における歴史的瞬間(その6)>

 (6月(11)?7月(10)HPへの訪問者数は、24198人と、前月の25565人や前々月の25258人と比べて若干目減りしました。日数の違い等を考慮して補正しても、前月より約500人、前々月より約1,000人減っており、二ヶ月続けての減少ということになります。他方、太田ブログ(http://ohtan.txt-nifty.com/column/への月間アクセス数は、816であり、前月より600弱増えています。ブログ訪問者の大部分は、最新のコラムだけを読んでいることから、上記訪問者数に、前月は200人、今月は800人弱ほどを上乗せして考えれば良いのか、とも思います。もっとも、そうしても目減り傾向は変わりません。ところが、メーリングリスト登録者数は1316名となり、一ヶ月前に比べて37名も増えています。これは、最近例を見ない大幅増であり、訪問者数の目減り傾向とは好対照です。累計訪問者数は、426,858人です。)

(2)アルカーイダ系の犯行

  ア IRAであるはずがない

 ロンドンというと、IRAIrish Republican Armyの(注13)テロを思い出す人も少なくないでしょう。

 (注13)より正確には、武力闘争を主張して1969年にIRA正統派から分裂したIRA暫定派(Provisional IRA)(http://jp.encarta.msn.com/encyclopedia_761575144/content.html。7月12日アクセス)。

 IRAがロンドンで爆弾テロを行うのは、ロンドンが「敵」英国の本拠であることと、アイルランド系の人口が多く、IRAシンパから支援を受けつつ、捜査当局に気付かれずに行動することができるからです。

 最近の例を挙げてみましょう。

1996年2月にロンドンの金融街で、IRAがトラックに積載された爆弾を爆発させ、2人を死亡させていますし、同じ月に、IRA要員が、二階建てバスに乗っている時に誤って爆弾を爆発させ、本人が死亡し、2人を負傷させています(注14)。

 (注14)奇しくも、今回の事件の四発目の爆弾が二階建てバスで爆発した場所から少し先の同じ通りでの出来事だ(http://www.guardian.co.uk/attackonlondon/comment/story/0,16141,1526575,00.html。7月12日アクセス)。

 そして同じ年の6月には、IRAがマンチェスター市の中央商店街で爆弾を爆発させ、200人を負傷させています。これはIRAが、(北アイルランド以外では)ロンドン以外の都市で爆弾テロを行った初めてのケースです。

 次が一番最近の例である2000年9月です。これはIRA本体ではなく、IRAの分派(dissidents)が起こしたものです。彼らは諜報機関M16の本部をロケット弾(手榴弾を装着)で攻撃したのですが、死傷者は出ていませんhttp://forum.ship-of-fools.com/cgi-bin/ultimatebb.cgi?ubb=get_topic;f=3;t=003155。7月12日アクセス)。

 しかし、専門家であれ一般市民であれ、英国人で、今回の事件がIRAないしその分派の仕業である可能性があると思っている人は一人もいません。

 それは、IRAであれば、一般市民を巻き添えにすることは極力避けようとしてきたし、一般市民が巻き添えになる懼れがある場合は、必ず30分以上前に予告電話を捜査当局にかけ、一般市民が避難する余裕を与えようとしてきたからです(http://forum.ship-of-fools.com/cgi-bin/ultimatebb.cgi?ubb=get_topic;f=3;t=003155(7月12日アクセス)による。もっと権威のある典拠を探した見あたらなかった。余りにも常識だからか)。

  イ 右翼の可能性もなし

 1999年に、いささか頭のおかしい一人の右翼が、自分で花火の火薬を原料につくったタイマー付の釘入り爆弾のうち二発を、ロンドンの黒人系やアジア系住民の居住地区で二回爆発させ、その後ゲイ居住区のパブでもう一発を爆発させて、合わせて3人の死者と150人以上の負傷者を出しています(http://en.wikipedia.org/wiki/David_Copeland。7月12日アクセス)。

 (以上、特に断っていない限りhttp://www.guardian.co.uk/terrorism/story/0,12780,1523526,00.html(7月8日アクセス)による。)

 しかし、今回の事件は、4回の爆発中の3回が、有色人種やゲイを対象にしたとは考えられない場所で起こっていることから、右翼がやったという可能性もまたありません。

  ウ アルカーイダ系の可能性は大あり

 他方、アルカーイダ系の犯行である根拠はありすぎるくらいあります。

第一に、そもそもオサマ・ビンラーデン自身が、<アフリカ二カ国の米国大使館を爆弾テロ攻撃した>1998年に、「英国はカリフ制の瓦解に責任がある。彼らはパレスティナ問題をつくり出した。彼らはカシミール問題をつくり出した。彼らは200万人のイスラム教徒が殺害されるようにボスニアのイスラム教徒への武器禁輸を行った。彼らはイラクの子供達を<国連の経済制裁で>飢えさせている。そして彼らはひっきりなしにイラクの無辜の子供達の上に爆弾を落としている。」と、激しい言葉で対英攻撃宣言を発していることです(http://www.washingtonpost.com/wp-dyn/content/article/2005/07/09/AR2005070901390_pf.html。7月11日アクセス)。

第二に、(元英警視総監の言によれば、)既にこれまでロンドンで8回アルカーイダ系による爆弾テロ未遂事件があったという事実ですhttp://www.guardian.co.uk/attackonlondon/story/0,16132,1525813,00.html。7月11日アクセス)。

 第三に、アルカーイダ系が引き起こしたマドリード列車爆破事件との類似性です(前述)。

ちなみに、高性能爆弾が使われた、という点でも今回の事件とマドリード列車爆破事件とは共通しています(注15)。

 (以上、http://www.washingtonpost.com/wp-dyn/content/article/2005/07/07/AR2005070702228_pf.html(7月9日アクセス)、及びhttp://www.guardian.co.uk/attackonlondon/story/0,16132,1525805,00.html(7月11日アクセス)による。)

 (注15)ただし、マドリード列車爆破事件の際は、今回の事件に使われたものよりはるかに強力な、(スペイン北部の鉱山から購入した)スペイン製のGoma2Ecoという高性能爆薬の26ポンド(12kg)爆弾13個が複数の列車に置かれ、携帯電話によってそのうち10個が爆発し、191人が死亡し1800人以上が負傷した。なお、マドリード列車爆破事件では、スペイン国内のアルカーイダかぶれが実行犯となったものの、事前にアルカーイダないしアルカーイダ関係者が外国からやってきて爆弾の作り方を教えたことが分かっている。

(続く)