太田述正コラム#10421(2019.3.9)
<ディビット・バーガミニ『天皇の陰謀』を読む(その10)>(2019.5.27公開)
<桂の次に首相になった山本権兵衛の更に次に首相になった>大隈は、1889年、頭山のギャング団の暗殺者の一人の投げた爆弾で片足を失くしていた<(注15)>。・・・
https://retirementaustralia.net/old/rk_tr_emperor_30_07_2.htm
(注15)暗殺者は玄洋社元社員の来島恒喜(くるしま つねき。1860~89年)・・「福岡藩士・・・の二男・・・。 高場乱の興志塾に学び、・・・上京し・・・頭山満率いる玄洋社に参加する。一時、小笠原諸島に玄洋社の的野半介、竹下篤次郎と渡り、同地に送られた朝鮮開化党の金玉均と過ごし、朝鮮の政治改革について語り合った。その後、大隈重信の条約改正案に反対し・・・大隈を暗殺<しようとし、>・・・彼の乗る馬車ごと爆弾を投げつけ、右足切断の重傷を負わせた。・・・来島の死後、後の首相となる広田弘毅の父・広田徳平により、墓碑が作られた。大隈襲撃には月成功太郎(広田弘毅の岳父)も計画に加わっていたが、老母、妻子を持つ月成の身を欺き、単独で決行した。また、博多の玄洋社墓地(崇福寺)にも墓があるが、勝海舟によって谷中霊園にも墓が建てられた。同墓はその後、頭山満によって建て替えられた」
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%9D%A5%E5%B3%B6%E6%81%92%E5%96%9C
「崇福寺<は、>・・・福岡藩主黒田家の菩提寺。・・・臨済宗大徳寺派の寺院。同派三道場の一つ。」
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%B4%87%E7%A6%8F%E5%AF%BA_(%E7%A6%8F%E5%B2%A1%E5%B8%82)
高場乱(おさむ。1831~91年)。「福岡藩の藩医<の家に生まれ、>・・・男として育てられた。・・・10歳で(男として)元服。なお、この元服は藩に受理された公的なものである。・・・1873年・・・私塾興志塾(通称「人参畑塾」)を開設、医業の傍らで教育にも携わる道を選んだ。・・・頭山満・・・の他にも後に玄洋社の主要なメンバー・・・はいずれも興志塾で学んだ<人々だ>。・・・来島恒喜が大隈重信へテロを仕掛け自殺したことには衝撃を受けたようで、これを「匹夫の勇」・・・と評した書簡が残っている。・・・<彼女>の墓碑銘「高場先生之墓」は勝海舟が書いている。」
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%AB%98%E5%A0%B4%E4%B9%B1
⇒玄洋社をギャング団とはよくも言ってくれたものです。
となれば、廣田弘毅だって、ギャング団あがり
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%BA%83%E7%94%B0%E5%BC%98%E6%AF%85
ってことになってしまいます。
大隈襲撃事件は、大隈自身が島津斉彬コンセンサス信奉者ですから、これは、玄洋社系の人々の間の、そして、玄洋社系と大隈との間の、二重の内ゲバだった、というのが私の認識です。
高場の存在と事績は興味深いものがあります。
どうやら、医者であれば、女性でも藩士になれたようですが、高場自身、もっと注目されてよい、明治初期の女性たる教育家ですね。
また、勝海舟と、彼とは全く世界観の異なるはずの、高場や来島、との関係が何に由来しているのか、気になりましたが、どなたか、調べていただけるとありがたい。(太田)
・・・大正天皇の六人の助言者のうちの首領である貞愛親王は、桂首相が誕生した際に就任した、国璽尚書の重要職務<(注16)>を辞任し、その地位を平民に譲り渡した。・・・
(注6)国璽尚書の重要職務(!)は、内大臣府出仕
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E4%BC%8F%E8%A6%8B%E5%AE%AE%E8%B2%9E%E6%84%9B%E8%A6%AA%E7%8E%8B 前掲
のことを指しているものと思われる。
1916年10月15日――山縣が工作して寺内大将率いる陸軍内閣が成立した6日後――の蒙古による侵略のさ中、大正天皇の六人のうちの最も若い親王が、奉天に到着し、張作霖政権の終了を目論む陰謀を隠密裏に取り仕切った。それは、孝明天皇の顧問である朝彦の十番目の弟の閑院親王で、彼はその後の1932年から1940年まで、昭和天皇の陸軍参謀長をつとめることとなる。・・・
https://retirementaustralia.net/old/rk_tr_emperor_30_07_3.htm
⇒閑院宮載仁親王の邦語ウィキペディアや張作霖の邦語/英語ウィキペディア
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%96%91%E9%99%A2%E5%AE%AE%E8%BC%89%E4%BB%81%E8%A6%AA%E7%8E%8B
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%BC%B5%E4%BD%9C%E9%9C%96
https://en.wikipedia.org/wiki/Zhang_Zuolin
には、そんな話の片鱗も出てきません。
いずれにせよ、そういう陰謀めいた話・・引用しませんでしたが、張作霖暗殺未遂を含む!・・に皇族が関わるわけがありません。(太田)
紹介したい箇所がありませんでした。↓
https://retirementaustralia.net/old/rk_tr_emperor_30_07_4.htm
(続く)