太田述正コラム#829(2005.8.20)
<郵政解散の意味(その2)>
郵政民営化についても、マクロ的に見れば、日本の経済高度成長をもたらした日本型政治・経済体制を支えた柱の一つが「世界最大の銀行たる郵貯などがかき集めた郵政マネーを国家が中心となって公共事業に投資して回転させていくという」システムなのだから、「日本の経済力をつぶそうと思ったら」このシステムは破壊しなければならない、という米国の対日大戦略(http://nikkeibp.jp/style/biz/topic/tachibana/media/050811_kaigai/前掲)に屈したものであり、ミクロ的に見れば、米「保険業界」の強い要求を踏まえた米国政府の「日本の郵貯・簡保<の>官業としての優遇措置を廃止せよ」との「圧力」(関岡前掲書133頁)に屈したものにほかなりません。
いずれにせよ、現在の日本における最大の問題は、繰り返しになりますが、日本の弥生モードへの切り替えが、日本の主体的意思によってではなく、他国の意思によって、他国の利益のために行われつつあることです。
その根底には、日本が戦後60年も経っているというのに、吉田ドクトリン・・外交や安全保障を米国に丸投げする国家戦略(=保護国化戦略)・・をいまだに廃棄していない、という問題があります。
私は、グローバル化した現代世界においては、日本は自らを弥生モードに抜本的かつ恒久的に切り替える以外に生き延びるすべはない、と考えています。
しかし、弥生モードへの切り替えが即米国化でなければならない、ということはありませんし、いわんや、それが米国の利益のために米国の指示に従って実施されるようなものであってよいはずがありません。
もとより、私自身、日本を弥生モードに切り替えるためには、日本型政治・経済体制をアングロサクソン的な政治・経済体制に転換して行くことが不可欠である、と考えていますが、その具体的なあり方は、あくまでも日本が衆知を結集して自らの意思で決定した上で、整斉と自主的に実施に移していくべき筋合いのものだ、と思うのです。
3 有権者はどうすべきなのか
では、今回の総選挙で有権者はどうすべきなのでしょうか。
イデオロギー/宗教政党である共産党・社民党・公明党は論外として、政党としては、
a 米国の指示に盲従して弥生モードへの切り替え路線をつきすすむ「改革派」候補者、古き良き縄文モード時代の追憶にしがみついている「守旧派」候補者、及び両者の中間的な「ノンポリ」候補者、の三種類の候補者(自民党籍の無所属候補を含む)を擁する自民党、
b 古き良き縄文モード時代の追憶にしがみついている「守旧派」候補者のみを擁する国民新党(鈴木宗男元議員が立ち上げた新党大地は国民新党の友党と考えてよかろう)、
c 基本的に自民党と同じ三種類の候補者を擁する民主党、
という不毛の三択しか与えられていない日本の有権者は、まことにお気の毒であるとしか言いようがありません。
それはそれとして、私が皆さんに訴えたいことは二点です。
まず、不在者投票でも何でもいいから投票を行って投票率を上げていただきたい(注5)ということと、無所属の候補者でもかまわないので、広義の外交・安全保障問題についてしっかりした識見を持った候補者に投票していただきたいということです。
(注5)そもそも、一日も早く、インターネットによる投票制度を導入すべきだ。インターネットバンキングが普及している現在、セキュリティーの問題はクリアできるはずだ。そうすれば投票率は飛躍的に上昇することだろう。(http://www.rieti.go.jp/jp/columns/a01_0100.html(8月19日アクセス)参照)
前者は、日本の政治の弥生モードへの切り替えの前提条件・・自民党の瓦解ないし野党化・・を妨げている大きな要因の一つである公明党の弱体化につながるからですし、後者の意義は申し上げるまでもないと思います。
最後に、比例票をbに投じようとされている方に老婆心ながら申し上げておきますが、bは「宗主国」米国の意向に逆らう候補者のみを擁している以上、遅かれ早かれその勢力は消滅に向かうことでしょう。