太田述正コラム#8392005.8.28

<米国に吸い込まれつつあるメキシコ(続)(その1)>

1 始めに

 メキシコは米国に吸い込まれつつある、と申し上げましたが、これを米国サイドから見てみましょう。

2 米国でのメキシコ系の現状

米国では、2003年にヒスパニック(中南米系)が黒人を人口数で追い抜いたばかりであり、中南米系と黒人は、それぞれ米国における少数民族として第一位と第二位を占めています(コラム#149)。

 2002年の米国勢調査によれば、中南米系の人口は3,740万人で米国の全人口の13.3%ですが、そのうちチカノ(メキシコ系)は66.9%を占めている(http://www.census.gov/population/socdemo/hispanic/ppl-165/slideshow/02show.ppt#308,2,Population Size and Composition。8月27日アクセス)のですから、メキシコ系の話を、中南米系全体の話でほぼ代替できると考えて良いでしょう。

 さて、2004年に行われた調査によれば、(中南米系を除く)白人の一家族当たり資産の中位(メディアン)は88,651米ドルですが、これは中南米系の7,932米ドルの11倍、黒人の5,988米ドルの14倍であり、しかもこのところ、白人と中南米系・黒人の差は拡大傾向にあります。

 例えば、白人の自宅所有率は74%に達していますが、中南米系・黒人は47%にとどまっており、財産と言えば車だけという家族も少なくありません。

(以上、http://www.guardian.co.uk/usa/story/0,12271,1330360,00.html20041019日アクセス)による。)

 今度は資産ではなく所得について、アジア系(注1)も視野に入れて比較してみましょう。

 

(注12000年の米国勢調査によれば、アジア系の人口は1020万人であり、米国の総人口の3.6%を占めており、その三分の一がカリフォルニア州に住んでいる。アジア系の中では、人口の多い順に、支那系・フィリピン系・インド系・ベトナム系・韓国系・日系(以下略)だ。

1999年の一家族あたりの所得の中位は、全体としては40,816米ドルであるところ、白人44,366米ドルに対し、アジア系はこれを上回る51,205米ドルに達している(注2)のに対し、中南米系は30,735米ドル、黒人は27,910米ドルであり、資産ほどではありませんが、中南米系のふがいなさは明らかです(注3)。

 (注2)アジア系の中では、一家族あたり所得の多い順序は、日系・インド系・<中略>・パキスタン系・韓国系・ベトナム系だ

 (注3)一家族当たりの統計数字を見るときに注意しなければならないのは、米国に流入してきたばかりの家族では、夫婦共稼ぎや子供の数が相対的に多い傾向があることだ。だから、一家族当たり資産や所得で見る以上に中南米系の一人当たり資産や所得、或いは賃金は白人に比べて低い、と考えるべきだろう。

 

 (以上、http://english.chosun.com/w21data/html/news/200412/200412170021.html20041218日アクセス及びhttp://prorev.com/statsec2.htm(8月27日アクセス)による。)

 犯罪データについては、間接的なものですが、次のようなものがあります。

 警察の検問にひっかかるドライバーは白人・中南米系・黒人の間で差はなく、約9%です。

 ところが、このうち逮捕される人は、白人2%・中南米系5,2%・黒人5.8%という、中南米系にとって芳しからぬ結果が出ています。中南米系にとってもっと芳しからぬ結果が出ているのは、検問にひっかかったケースのうち、本人ないし車が捜索を受ける割合であり、白人3.5%・中南米系11.4%・黒人10.2%という次第です。

(以上、http://www.washingtonpost.com/wp-dyn/content/article/2005/08/25/AR2005082501567.html(8月27日アクセス)による。)

以上から、今のところまだ米国で多数を占めている白人から、中南米系ないしメキシコ系がどんな目で見られているか、容易に想像できます。黒人と違って自分の意思で米国にやってきたくせに頑張ってないね、しかも悪いことをしているのが多いな、といったところでしょう。

(続く)