太田述正コラム#9912005.12.8

<徒然なるままに(その1)>

「第2回 まぐまぐBooksアワード」の投票が、21日まで行われています。

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1 天声人語のススメ

 私のホームページの掲示板で、読解力を上げるには、朝日新聞の天声人語等を毎日他人と読み比べするとよい、と何度も言ったことが、何を偉そうに、と読者の皆さんの不興を買っているようです。

 実は、5年生の息子に、彼が寝坊しないで起きた時には日本経済新聞の春秋欄を読ませて、何が結論なのか考えさせているのです。塾通いをしている息子の勉強を全く見てやっていなかったので、一つくらい手助けをしてやろうと始めたのが3ヶ月ほど前です。

 これが大いに効果を挙げ、息子の読解力がついてきたように思うので、皆さんにもお勧めしているのであり、他意はないのですぞ。。

 さて、春秋欄なんて前には読んだことがなかったのですが、息子の「採点」をするために読み出してから弱ったのは、私にも、筆者が何を言いたいのかわからないことが時々あることです。

 そういう場合に、息子には次のように説明しています。

 「筆者の頭の中が混乱したまま書いた、できの悪い文章も中にはあるだろうが、日本には連歌の伝統がある。連歌は何人かで行うものだが、一人が書く文章でも連歌的に少しずつ話のテーマをずらしながら書きつづっていくことがある。筆者が何を言いたいのかわからないのは、連歌的な文章である場合が多い。いずれにせよ、できの悪い文章も連歌的な文章も塾の試験や受験には出ないので心配するな」と。

 お前のコラムはできの悪い文章と連歌的な文章ばかりですって?スミマセン。

2 ホロコースト否定論オタク

いやはや、こんなに日本人のホロコースト否定論オタクの方々が沢山おられるとは夢にも思いませんでしたね。このところ、私のホームページの掲示板への投稿やブログへのアクセスが増えていますが、その主たる理由がこれらの方々の投稿でありアクセスであるかと思うと複雑な気持ちです。

しかも、日本人のホロコースト否定論オタクは、ユダヤ人の感情に全く配慮せずに、聞きかじりだけで、ガス室で殺されたユダヤ人はいないと断言されたり、ホロコースト否定論にも耳を傾けるべきだと宣ったりされる方々ばかりですが、彼らは、それがどんなにアブナイ火遊びであるか、全く分かっていないと来ているのです。

ある読者に至っては、ホロコースト否定論の雄、アーヴィング(コラム#969)の英国での裁判と、まだ始まってもいないオーストリアでの裁判とを取り違えた挙げ句、その誤りを指摘されると、どこで行われようと学説の決着を裁判で図ろうとするのはけしからん、と開き直る。

そもそも、裁判がどこで行われるかは極めて重要です。

アーヴィングは、自分はホロコースト否定論者ではないのに、ホロコースト否定論者だと本の中で断定されたとして、その本の著者に対し裁判を提起しました。

アーヴィングが、ホロコースト否定論が禁じられているオーストリアの裁判所に、こんな訴えを提起していたとすれば、彼は敗訴した場合に、ホロコースト否定論者として逮捕され起訴される危険がありました。

他方、アーヴィングが、米国の裁判所にこの訴えを提起していたとすれば、逮捕・起訴の懼れこそありませんが、原告であるアーヴィング側が被告たる相手方の著書の誤りを証明しなければならかったでしょう(典拠省略)。

だからこそ、アーヴィングは英国の裁判所に訴えを提起した(コラム#970)のです。そうすれば、逮捕・起訴の懼れがない上に、被告たる相手側がその著書の正しさを証明しなければならないからです(典拠省略)。

米国や英国では、誰もアーヴィング等の唱えるホロコースト否定論を裁判の俎上に載せたことなどないというのに、アーヴィングはあえてホロコースト否定論批判を裁判で封殺しようと図ったのです。

 しかし、アーヴィングの目論見ははずれ、アーヴィングは敗訴してしまいます(コラム#970)。

(続く)