太田述正コラム#1005(2005.12.17)
<豪州での「民族」紛争から見えてくるもの>
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1 始めに
現在オーストラリア(豪州)の人口は約2,000万人ですが、そのうち白人は92%を占めています。
かつて豪州はアングロサクソン中心のいわゆる白豪主義の国でしたが、1947年に世界中の人々に広く門戸を開き、爾来本国英国と同様、多文化主義を掲げて現在に至っています。
1947年以降の移民は150カ国から約600万人にものぼり、豪州の現人口の四分の一以上は、外国で生まれた人々だ、ということになります。
2 豪州での「民族」紛争
その豪州で「民族」紛争が起こりました。
ことのきっかけは11日に、シドニーの南方20マイルの町で、レバノン系(アラブ系)の青年達が、海水浴場でアングロサクソン系の白人の監視員2人を殴った「事件」です。もっとこの「事件」はわずか30秒で終わり、監視員のうちの一人が眼の下に小さな切り傷をつくっただけのことでした。
ところが翌日、このニュースに怒った酔っぱらいのアングロサクソン系の白人5,000人がこの海水浴場付近にやってきて、警官やアラブ系の人々を攻撃し、それから、数日間にわたって、この町を中心に、アラブ系(キリスト教徒もいるが、大部分はイスラム教徒)とアングロサクソン系白人の間で小競り合いが続き、店舗や車が壊されたりしました。
しかし、ニューサウスウェールズ州(State of New South Wales)が急遽法令改正によって警察等の権限を大幅に強化したこともあって、現在紛争はおさまりつつあります。
この紛争について、先般フランスで起こった暴動と同様、差別問題が背景にある(注1)という見方をする外国メディアもありましたが、豪州では、これはそんな「高尚な」話ではなく、どちらも反権力的な女性蔑視主義者達ばかりであるところの、片や浮浪青年、片や酔っぱらいのスキンヘッドやネオナチ、の間のたわいもない喧嘩に過ぎないという見方が一般的です。
(注1)1996年には、アジアからの移民の受け入れ停止を掲げる人物が連邦議員に選ばれ、その後、彼の政党がクィーンスランド州議会選挙で得票率11%を獲得するということがあった。また、現在のハワード豪連邦首相は、英国による豪州植民地化の過程で原住民(Aborigine)が蒙った災厄に対する謝罪を頑として拒み続けており、4年前には、不法移民を捕縛・追放するため軍を投入して国際的批判を浴びた。更に同首相は、最近イスラム系テロリスト対処のために反テロリスト法令の強化を図ろうとしている。
これらを、アジア系やアラブ系移民の中には、彼らに対する差別だと受け止めるむきもある。
3 この紛争から見えてくるもの
(1)国際的トラブルメーカーのイスラム教徒
豪州のこの紛争でも、一方の当事者はやはりイスラム教徒です。今回、非イスラム教徒たるアジア人どころか、黒人も全く登場していません。
紛争の中心となったのは、イスラム教徒とかアラブ系と言っても、レバノン系の移民のようですが、彼らの失業率は、豪州人の平均の二倍に達し、就いている職も低賃金のものがほとんどです。それに彼らは攻撃的で暴力的であり、犯罪率も高いのです。
(以上、http://news.bbc.co.uk/2/hi/asia-pacific/4521442.stm、http://www.nytimes.com/aponline/international/AP-Australia-Racial-Unrest.html?pagewanted=print(どちらも12月13日アクセス)、http://www.taipeitimes.com/News/editorials/archives/2005/12/15/2003284536(12月16日アクセス)、及びhttp://www.nytimes.com/2005/12/16/international/asia/16australia.html?pagewanted=print(12月17日アクセス)による。)
これだけイスラム教徒は世界中でトラブルメーカーになっているのですから、やはりイスラム教そのものに問題がある、ということにならざるをえません。
(2)アングロサクソンの差別意識
もともと英本国の流刑地としてスタートした豪州植民地は、豪州英語が、英本国の庶民の英語と極めてよく似ていることからも分かるように、豪州は庶民の国です。豪州のアングロサクソンの人々は、(もちろん例外はあるものの、)エリートも含め、英本国のエリートのような寡黙・謙虚・賢明(コラム#84)・洗練といった「美徳」を持ち合わせていない、というのが、私がこれまで彼らと接して得た印象です。
おかげで、彼らを通してアングロサクソンの本質やホンネが透けて見えてくることがあります。
ところが今回は、豪州の話だからという気安さがあったためか、英本国のガーディアンが、本件に関する記事(http://www.guardian.co.uk/australia/story/0,12070,1667659,00.html。12月16日アクセス)で、めずらしくぽろりとアングロサクソンのホンネを漏らしてくれました。
アングロサクソンたる豪州人も英国人も、「地球上の他のあらゆる民族、とりわけ色の黒い人々に対し、確固たる優越感(an unshakeable conviction of ・・・superiority over all other nations on earth, especially the swarthy ones.)を抱いている」(注2)・・と。
(注2)私は、アングロサクソンは、西欧文明(人)を含め、自分達以外の文明(人々)を等しく野蛮と見なしてきた、と(コラム#3、165、335、356、632、667等で)何度も指摘してきたが、書かれた典拠に遭遇したのはこれが初めてだ。アングロサクソンは、色の黒い人々(インド人・アラブ人・黒人等)及びその文明は、更に一段低く見ている、とも私は思ってきたが、記すのは控えてきたところ、この記事はこのことまではっきり記している!
この「民族」紛争の一方の当事者たるアングロサクソン系の豪州人達は、本国のアングロサクソンが心中深く隠している差別意識を、激高し、酔っぱらった勢いで、眼に見える形でわれわれの前にご開帳してくれた、という次第であり、私としては彼らに感謝したい気持ちで一杯です。