太田述正コラム#11013(2019.12.29)
<映画評論64:わたしは、ダニエル・ブレイク(その2)>(2020.3.20公開)
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[ブレグジットとは何か]
一、背景
(一)文明論的背景
アングロサクソン文明側のプロト欧州/欧州文明に対する嫌悪。(コラム#省略)
(二)戦後における背景
「米国への移民はメキシコや西インド諸島から、欧州への移民は中東・サブサハラ・西アジアから来ている。1970年には米国の人口に占める外国生まれの割合は約5%だったが、2015年には約14%にまで上昇した。同様のことは英国でも言える。1971年には約6%であり、2015年には約13%にまで上昇している。それに伴って所得格差も進行した。・・・
コロンビア大学教授であるジェフリー・サックスは、・・・その部分的原因は米国にある、としている。米国の軍事政策が移民を増加させた。ラテンアメリカでの米国の麻薬戦争は大きな暴力を生み、難民を米国に流入させた。1980年代の中米でのコントラは米国の隣国を不安定化させる要因となった。米国は中米・カリブ海での小規模武器の提供者であり、組織犯罪のハブであり、米国大企業の利益のために民主的な政府を不安定化させたりしていた・・・欧州への難民流入に関しても、近年のアフガニスタン戦争、イラク戦争、2011年リビア内戦、CIAによるイエメン介入、CIAによるソマリアへ介入などこれら全てと関係がある。」(γ)
二、原因
(一)英国における移民流入増加と財政悪化
「仮にEU法が無ければ、EUからの移民の約75パーセントは<英国>で労働許可証が発行されないことがわかっている。分野別では、例えば<英国>の農場で働くEU移民の96%、小売業で働くEU移民の94%が<英国>のビザ基準を満たしていない。」などとも。
<かかる状況下、>2004年にポーランドやその他東欧諸国がEUに加盟し、<英国>への移民数が増加した。・・・
<そして、>2008年に顕著となった世界金融危機以降、<英国>への正味の移民数は<更に>増加し<、>・・・実質収入は圧迫され、公的セクターの拡大は停滞している」(γ)
(二)EUにおける英発言権低下と負担増大
「<政治統合に至っていない現在の>EU<は、そ>の政策の多く<が>選挙と無関係な人々で構成される欧州委員会(EC)で形作られる<(注4)ところの、>・・・非民主主義な組織である<が、>・・・<英国>が欧州経済共同体(EEC)に1973年に加盟したときは<英国>は20%の投票をもっていた<けれど、>2015年では・・・EC<において、>・・・その半分未満となっている。・・・
(注4)「欧州委員会は計27人の「欧州委員」による合議体であり、・・・各委員は加盟国政府により1国あたり1名ずつが指名されているが、委員は委員会においてはそれぞれの出身国を代表するものではない(ただし実際には出身国の利益を代表する行動が見られる)。」
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%AC%A7%E5%B7%9E%E5%A7%94%E5%93%A1%E4%BC%9A
<その結果、英国>は2009年から2014年の間に576のEUの法案に反対したが、<そのうち>485法案はその他の国の賛成多数で・・・立法化され<てしまっ>た。
<これらの法案を含め>2010年以降、EUは約3500の法案を適用して<おり、>このEUの新たな法規制によって生じる<英国>のコストは年間76億ポンドになると見積もられている<が、>EU加盟国数の潜在的拡大を考えれば、<英国>がEU内での政治的影響力を十分に発揮できないことで被る損失は今後<、更に>大きくなる可能性がある。・・・
<また、英国>はEUの予算に貢献しているが見返りが少ない。2013年度にはEUには約170億ユーロ支払っており、一日あたり約3500万ポンド支払っていることになる。だがEUからは63億ユーロ分しか支払われない。正味の貢献額はドイツに次いで2位である。」(γ)
三、ブレグジット推進者のタテマエ
離脱派のリーダー格となったボリス・ジョンソン前ロンドン市長<(当時)>や<英>独立党(UKIP)のナイジェル・ファラージ党首<(当時)>は、「EUを離脱することで<英国>の主権を回復させ、出入国管理を厳格化させることができる」という主張を行っ・・・た。」(γ)
⇒英国は、ユーロ圏(注5)加盟を行わず、また、EUの政治統合にも反対であった(γ)以上、早晩、ブレグジットは避けられなかったところ、その時期が、移民の流入増大への危機感によって早められた、と言うべきだろう。
(注5)EUは、・・・[金融・財政部門の改善が自国の力のみでは達成出来ない可能性のある]<加盟>諸国へ・・・金銭支援と引きかえに緊縮財政政策や構造改革を施行するよう要求<するが、>・・・このようなことは・・・<米>国で<すら、各州との関係で>ありえないことである。・・・財政連邦主義を採る・・・<。独立時に政治統合がなされたところの、米国、>で<すら>、経済が低迷している州は連邦政府からの自動的な経済援助を受ける仕組みになっている<というのに・・。>」(γ)
https://ja.wikipedia.org/wiki/PIIGS ([]内)
なお、そもそも、英国が「ユーロ圏加盟を行わず、また、EUの政治統合にも反対であった」のは、上述の文明論的背景がそうさせていた、というのが私の見解であるわけだ。(太田)
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(続く)