太田述正コラム#1048(2006.1.17)
<男女比率をめぐる諸問題(その2)>
(メーリングリスト登録者数は、むしろ目減り気味だというのに、ブログへのアクセス数は、新記録を連日更新している、という不思議な状況が続いています。
なお、私のホームページの掲示板でも活発な議論が行われているので、ご参照下さい。
21日のオフ会(於事務所。1400?1730目途)への出席予定者は現在4?5人です。後一声、どなたか出席される方はいらっしゃいませんか。)
(2)ノルウェー
企業の役員の40%以上を女性にしなければならない、というノルウェーでのアファーマティブアクションの話を昨年(コラム#872で)行ったところですが、そのフォローアップをしておきましょう。
昨年後半にEUの450の大企業を対象に行われた調査によれば、女性や非白人の幹部の数が極めて少ないことが分かりました。この450社うち英国企業は75社ですが、そのうち女性がトップに就いている企業は2社だけでしたし、非白人がトップに就いている企業は、450社中英国のボーダフォンだけでした。
問題が一番鮮明に現れているのはドイツです。
昨年は、ドイツ史上初めて女性のメルケル(Angela Merkel)首相が誕生し、しかもドイツの大卒者の約半分、連邦議会議員の三分の一、そして博士号取得者の三分の一が女性だというのに、ドイツ株式市場上場の最大手30社で女性の取締役はわずかに、約半年前に就任したばかりの一人を数えるだけなのですから・・。
ノルウェーでもビジネススクールの学生の40%は女性です。それなのに、どうして女性の企業幹部は少ないのか、という問題意識が今回のノルウェーでのアファーマティブアクションをもたらしたのです。
しかし、ノルウェー以外の欧州諸国の、しかも女性の間では、このノルウェーの試みに批判的な声が多いと言えるでしょう。つまり、企業の世界だけに女性差別が残っている、というわけではないのであって、単に女性には、企業におけるキャリアの追求よりもバランスのとれた生活を追求したい人が多いからにすぎない、と言うのです。
ノルウェーでも、政治家の圧倒的多数は、この試みに賛成しているものの、企業で働く人々の90%はこの試みに反対していると言われています。
とにかく、この試みの結果、2年間で対象たる519社の700名の取締役が男性から女性に切り替えられる予定であり、これは人口わずか450万人のノルウェーでは大きな数字です。
その結果が吉と出るか凶と出るか、注目されるところです。
(以上、http://www.nytimes.com/2006/01/12/international/europe/12oslo.html?pagewanted=print(1月13日アクセス)による。)
3 男性が少なすぎるケース
以上は、女性が不足しているケースでしたが、最後に、男性が不足している所の話をしましょう。
チェチェン共和国において、ロシア中央政府の息がかかった民兵の司令官であって、チェチェンの事実上の首相職を勤める、イスラム教徒で29歳のカディーロフ(Ramzan Kadyrov)は、うち続く内戦により、男性が多数死亡した(注2)ため、現在、チェチェンの男女比率は、91対100と男性が少なくなってしまっていると指摘し、「シャリアによれば、それが可能な男性は四人の妻を持たなければならないこととされているが、私もそうあるべきだと思う」と一夫多妻制を推奨する発言をしました。
(注2)内戦により、1994年以来、20万人の死者が出ている。
モスクワにいるイスラム教の指導者達も、ロシアが直面している人口減少問題を解消するためにも、一夫多妻制が推奨されるべきであり、(一夫一妻制を定めている現在の法律の)法改正が行われるべきだ、とカディーロフ発言を擁護しました。
(以上、http://www.guardian.co.uk/chechnya/Story/0,2763,1686350,00.html(1月15日アクセス)による。)
(完)