太田述正コラム#10662006.1.31

<解明されつつある人間の秘密(続)>

 (本篇は、コラム#932の続きです。)

1 人間の交尾期の謎解明さる

動物の中で、人間だけは雄はもとより、雌までも(自分の)交尾期が分からない不思議な存在だと(コラム#932で)申し上げたところですが、つい最近まではそんなことはなかった、ということが明らかになりました。

チェコの研究チームが、排卵日前後には女性のわきがの臭いが一番低くなることをつきとめたのです。それ以外の期間は、わきがの臭いが強くなるため、臭覚に敏感であった大昔の男性は、興ざめしてその気がなくなったと考えられる、というのです。

この同じ研究チームは、既に、女性は排卵日前後には嗅覚が鋭くなり、やはり嗅覚に敏感であった大昔には、並み居る男性のうち、最も遺伝学的に優性(dominant)な者を選び取ることができたと考えられることも明らかにしています。

(現在でも、沢山の男性の脇にガーゼを挟んでおいてそのガーゼを次々に女性に嗅がせると、排卵日前後に限って、女性は最も優性な男性、すなわち最もセクシーなわきがの臭いを持つ者、をあてることができたとのこと。)

(以上、http://news.bbc.co.uk/2/hi/health/4614842.stm(1月16日アクセス)による。)

2 出産・育児はアタマを良くする

 今度は米国の研究チームの成果です。

 彼らが、二種類のネズミと人間を対象に行った実験によれば、これまでの常識とは正反対に、出産・育児は脳を活性化し、その効果は長期間残る、ということが分かったのです。

 まず、妊娠・出産・産後のホルモンの変化は脳に刺激を与え、いくつかの領域における脳神経単位(neuron)のサイズを大きくし、女性はより感覚系が鋭敏になります。(子供の居場所をわずかな臭いと音でつきとめるためです。)

 また育児は女性にとって、全く新しい、感動的で大変な経験であるだけに、その脳を革命的にと言ってよいほど活性化します。

更に、これも従来の常識には反し、40台で子供を産み育てた女性は、一般には脳の機能が低下し始める時期に脳が再活性化されるためか、それよりも若く子供を産み育てた女性より長生きすることも分かりました。

この研究チームは、哺乳類が卵生動物に比べて、大きな進化を遂げることができたのは、この出産・育児の脳活性化効果によるのではないか、と考えています。

残念ながら、男性は出産するわけにいきませんが、育児に積極的に協力すれば、そうしない男性に比べて、脳が活性化することも分かりました。

(以上、http://observer.guardian.co.uk/uk_news/story/0,6903,1686984,00.html(1月16日アクセス)による。)

3 男性は女性より復讐好き

 最後にもう一つ。

 別の米国の研究によれば、被験者とサクラ達(被験者はサクラであることを知らない)にゲームをやらせ、サクラのうち一名がインチキをするとそのサクラが軽い電気ショックを加えられる、という実験を行ったところ、男性の同情(empathy)を司る大脳の部位の活動レベルは変わらず、快楽(pleasure)を司る大脳の部位の活動は活発化するのに対し、女性の場合はその正反対であることが分かりました。

 この男女差は、生まれつきのものか、生まれてから獲得されたものなのかはいまだ定かではないものの、歴史的に見て、もっぱら男性が、社会的ルールに違反した者を処罰する役割を担ってきたのはなぜかが、この実験結果から説明できそうです。

 (以上、http://www.nytimes.com/aponline/science/AP-Schadenfreude-Study.html?pagewanted=print(1月19日アクセス)、及びhttp://www.slate.com/id/2134380/(1月20日アクセス)による。)