太田述正コラム#1097(2006.2.27)
<中共のネチズン達の戦い(その4)>
4 エピローグに代えて
中共のネチズン達の戦いについて書いていると、思わず力が入ってしまいます。
彼らは、支那の自由・民主主義化のために、最も可能性が残されているネットを駆使して情報の収集と意見の表明に努めているのに対し、私は残されたほとんど唯一の手段であるネットを使って日本の米国からの「独立」・・主権の「回復」・・のために、情報の収集と意見の表明に努めているからであり、人ごととは思えないからです。
日本は自由・民主主義国だというのに、私の場合、どうしてネットがほとんど唯一の手段なのでしょうか。
第一に、私が収集・紹介したい情報の典拠は、主として英米のメディアの記事・論説であり、日本のメディアとは違って、英米のメディアの場合、重要な記事・論説がネットに積極的にアップロードされているからです。
また第二に、私としては第二第三の著書の出版や、雑誌等への更なる執筆やTV等への出演をして、上記典拠を踏まえた意見表明をして行きたいのは山々であるものの、私の意見に対するニーズが少ない・・そもそも、日本が米国の保護国であるという認識を大部分の日本人は持っていない(注3)・・ために、事実上これらの道は閉ざされているに等しいからです。
(注3)日本が吉田ドクトリンを墨守している限り、実質的に(安保条約の相手国たる)米国の保護国であると言うべきところ、形式的にも米国の保護国である証拠が米軍駐留経費の負担(いわゆる「思いやり」)だ。
拙著「防衛庁再生宣言」(日本評論社)の中で、日本は1960年の改訂日米安保条約のおかげでようやく形式的には米国から独立国と認められ、米軍駐留経費の負担を完全に免れるに至ったが、金丸信が1978年に負担を復活させてしまい、日本は形式的にも米国の保護国に逆戻りした、と記した(48?51頁)ところだ。しかし、1971年に調印された沖縄返還協定をめぐり、本来米国が払うべき米軍基地の原状回復補償費・・広義の駐留経費・・400万ドル(当時約12億円)を日本側が極秘に肩代わりしたことが明らかになった(http://www.mainichi-msn.co.jp/seiji/gyousei/news/20060210k0000m010101000c.html。2月10日アクセス)以上、この時点をもって、既に日本は形式的にも米国の保護国に逆戻りしていた、と言うべきだろう。
かてて加えて、在沖海兵隊司令部のグアム移転経費の大半を日本が負担するというとんでもない方向で現在日米両国政府が交渉中だ(http://www.asahi.com/politics/update/0208/001.html。2月8日アクセス)。
耳タコかも知れないが、何度でも言わせてもらおう。
外国の軍隊の駐留経費を負担する国は、その外国の保護国であると世界に公示しているに等しい。にもかかわらず厚かましくも日本は「独立」国であると僭称している。そんな国は、私の知る限り、古今東西、現在の日本だけだ。(かつて日本の植民地だった韓国だけは、(日本ほどではないが)嫌々日本の例に倣わせられている。)いわんや、その外国(米国)の軍隊がその本国内(グアム)に駐留する経費を負担するようなことがあれば、日本は保護国どころか、米国の植民地に名実ともに転落する。
この話は改めてじっくり論じたい。
しかも、吉田ドクトリン下で発症した日本人の痴呆症(拙著48頁)はとめどもなく進行し、私がいくら日本は米国の保護国であると力説しても、だからどうしたと開き直る人が、これまた大部分です。
ですから私としては、私がネットにアップロードする情報や意見によって、少数の痴呆症がまだ重篤化していない日本人に覚醒してもらうためにも、日本が、ネット情報・意見がもっともっと重視される社会になって欲しいと願っているのです。
しかし遺憾ながら英米では、情報・意見の媒体として、ネットが既存メディアに取って代わるような存在になることはない、という結論が出つつあるように見受けられます(http://news.ft.com/cms/s/384be1be-9eb1-11da-ba48-0000779e2340.html(2月18日アクセス)、及びhttp://www.guardian.co.uk/Columnists/Column/0,,1712592,00.html(2月19日アクセス)。
こういうわけで、支那が自由・民主主義化するのが早いか、日本が「独立」するのが早いか、私は今、焦燥感に駆られています。
(続く)
コラム楽しく読んでいます。
>支那が自由・民主主義化するのが早いか、日本が「独立」するのが早いか、私は今、焦燥感に駆られています。
大田先生は中共の滅亡が以外に早いとお考えのようですね。崩壊は北京オリンピックそれとも上海万博ですか。早いのは歓迎します。