太田述正コラム#11022006.3.2

<中共経済の脆弱性(その2)>

 中共経済が工業製品を開発する意欲と能力に欠ける経済であることの証拠が、海賊版製品の横行です。

 世界の海賊版製品の70%はアジアでつくられていますが、そのうちの大部分は中共製であり、中共だけで海賊版製品市場は3,000億米ドル規模に達していると考えられています。

 中共は、アディダスの靴やグッチの腕時計から始まり、最近では、ドイツ製のリニアモーターカーまで模造した(注3)、と話題になりました。

 (注3)ドイツ企業のトランスラピッド(Transrapid)の全面的支援の下で、上海でリニアモーターカーが営業運転を始めたのは2004年だが、その12月に、上海のトランスラピッドの整備場に深夜、中共の技術者達が侵入し、車体の測定を行ったために一悶着が起きた。案の定中共は、先般、国産のリニア開発に着手したと発表した。

 

 これに懲りず、フランス等の企業であるエアバス(Airbus)は、中共がエアバスの旅客機A320150機購入する見返りとして、型式が古く小さな旅客機組み立て工場を中共に設置することに同意しましたが、中共は、早くも手回し良く客席150から200の旅客機の開発計画を公表しています。

 ですから米国政府は、ボーイング社に、中共に組み立て工場を設置することを禁止しています。

 中共当局は、昨年までに、欧米並みの特許権等工業所有権を保護する法制を整備しましたが、これは中共の企業間で工業所有権をめぐる争いが激化してきたためにやむなく行ったものであり、いずれにせよ、法制が整備されたからといって、裁判上も特許権等が保護される保証は全くありません。

(以上、http://service.spiegel.de/cache/international/spiegel/0,1518,402464,00.html(2月27日アクセス)による。)

 最後にもう一点、支那の歴代王朝との違いで忘れてはならないことは、現在の中共経済の(大幅な出超をもたらしているところの)貿易依存度(輸出入総額の対GDP比)の異常な高さです。

 1980年から2001年までの間、米、日本、インド、ドイツの対外貿易依存度は、いずれも14%から20%の間で推移しているというのに、中共では、1980年代初頭の対外貿易依存度は「グローバルスタンダード」の15%程度であったところ、その後うなぎのぼりに上昇し、2002年のには50%を超え、2003年には60%、そして2004年には、80%近くにまで上昇しているのです(http://j.peopledaily.com.cn/2005/09/10/jp20050910_53424.html2005年9月11日アクセス)。

4 異常な中共経済

 このような視点で見ていくと、中共経済の異常なところは枚挙の暇がありません。

 ・1999年から2003年にかけてのデータによれば、インドの6つの主要産業分野(自動車からテレコムまで)の投資収益率(return on investmentROI)は、それぞれ中共に比べて80%から200%高い。

 ・規制・国際貿易・財政政策・法などの観点から、中共の経済的自由度は、世界127カ国中下から三分の一くらいという低さであり、東欧諸国の大部分やインド・メキシコより低く、ビルマとベトナムを除く、東アジア諸国のいずれよりも低い。

 ・中共経済の純粋な民間部分はGDP30%に過ぎないが、社会主義経済から脱して間もないまだ国有企業だらけのインドでさえ、政府部門はGDPの7%にとどまる。

 ・2004年の中共の大富豪100名のうち半分近くは不動産開発業者だった。

・汚職でつかまる役人の数はうなぎのぼりであり、汚職役人の若年化が進行しており、また、地域官署全体が汚職まみれとなっていたケースも増えている。

・経済格差が拡大する一方であり、今や中共は、世界で最も貧富の差の大きい国の一つになった。米国では5%の家族が国富の60%を所有しているが、中共では1%以下の家族が国富の60%以上を所有している。このこととも関連し、中共において、低所得地域である農村部の教育は荒廃してしまったし、中共の医療システムの公正さはブラジルやビルマ以下という烙印を押されるに至った。(病人の半分はカネがなくて医療を受けられなくなっている。)

(以上、http://www.foreignpolicy.com/story/cms.php?story_id=3373&print=1(3月2日アクセス)による。)

(続く)