太田述正コラム#11082006.3.5

<ブッシュ三題噺(その2)>

一般国民には国政に関する選挙権が認められていなかったが、昨年末に国会(連邦国民評議会)の定数の半数に対し国民の参政権が認められました。しかし、その参政権は限定的なものであり、有権者は各首長が選出した計2000人程度に留まる見通しであり、政党は禁止されています。

人口は約250万人ですが、在来のアラブ人たる国民はその20%を占めるに過ぎません。

ア首連の面積は8万3000平方km近くありますが、その大部分は砂漠であり、人口は都市に集中しています。

そのア首連の主要産業は石油掘削・輸出であり、日本がその最大の輸出先です。

ドバイはア首連中、人口も面積もアブダビに次ぐ大首長国であり、近年は、中東における金融センターとしての地位を占めるとともに、世界最大の人工港ジェベル・アリーと、国際ハブ空港として有名な24時間空港であるドバイ国際空港を持ち、中東地域の人と物の流れの中枢、中継貿易都市となっています。

更に、ジュメイラ・ビーチの人工島に建設された世界最高級の高層ホテルであるバージュ・アル・アラブなどの高級リゾートホテルや中東地域最大のショッピングセンターの建設、世界最大の人工島群である「パーム・アイランド」など、各種観光資源の開発に力を注いでおり、世界中から観光客が訪れています。

つまり、ア首連、就中ドバイは、中東の香港であり、シンガポール類似の都市国家なのです。(法治主義は確立しているけれど、自由・民主主義化が不十分である、という点も共通です。)

違うのは、香港とシンガポールは英国が長期にわたって直接統治したけれど、ア首連は、英国によって長期にわたって間接統治されたという点と、ア首連は産油国である、という点だけです。

 (以上、http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A2%E3%83%A9%E3%83%96%E9%A6%96%E9%95%B7%E5%9B%BD%E9%80%A3%E9%82%A6、及びhttp://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%89%E3%83%90%E3%82%A4(どちらも3月5日アクセス)による。)

 このドバイのジェベル・アリー港の港湾管理を行っている会社が、ドバイの、ドバイ首長(emir of Dubai)国が所有するDPWDubai Ports World)です。

 このDPWは昨年、米国の港湾管理会社であるCSXからその(米国以外の)国際港湾管理部門を購入し、中共・オーストラリア・ドイツ・ヴェネズエラの港湾の管理を既に開始しています。

 では一体、港湾管理会社とはいかなる会社なのでしょうか。

 港湾管理会社は、港湾当局(public port authority。通常地方政府であることが多い)の委託を受けて、港湾で貨物の荷揚げ作業等、すなわち輸送船からコンテナを降ろして列車やトラックに積み込む作業とそれに関連する業務を行う会社です。

 関連する業務としては、関連事務と、クレーン(gantry crane)や施設の維持、荷揚げ要員の人事教育・港湾労組との労働交渉、更にはクレーンの増設があります。長期契約の場合は、埠頭の増設やこの埠頭の付属道路、更にはコンテナの野積場の増設等に携わることもあります。

 また、安全面では、港湾警備当局に安全計画を策定・提出する立場ですし、税関当局とも種々調整をしなければなりません。

 (以上、http://www.slate.com/id/2136768/、及びhttp://www.slate.com/id/2136783/(どちらも3月4日アクセス)による。)

 このように長々と、「アラブ首長国連邦/ドバイ」及び「港湾管理会社」についてご説明してきたのは、英国の港湾管理会社であるP&OPeninsular & Oriental Steam Navigation Company)がDPWによって68億米ドルで買収されることとなったところ、P&Qが米国内6港の港湾管理権を有していることが現在米国で朝野を挙げて大問題となっているところ、そんな米国は極めて異常である、ということを皆さんご理解いただくための下準備なのです。

(続く)