太田述正コラム#1119(2006.3.12)
<防衛施設庁談合事件等に思うこと(続x3)>
1 始めに
このところ、ようやく防衛施設庁官製談合事件の成り行きが、私の思惑(注1)通りの進展を見せていることをうかがわせる記事が散見されるようになったので、この際、ご紹介しておきましょう。
(注1)私の思惑とは、施設庁官製談合システムが、建設・土木業界で普遍的に行われている民民談合システムに寄生していること、防衛庁ぐるみの天下りシステムの一環として行われていること、全中央官庁が官製談合システムを含む天下りシステムを持っていること、国会議員が施設庁官製談合システム(ひいては全中央官庁の天下りシステム)に寄生していること、の4点が明らかになり、これらにメスが入れられることだ。(2(1)に掲げた、本件に係るこれまでの私のコラム参照。)
2 記事と私のコメント
(1)取材攻勢
本件については、これまでコラム1065(2006.1.30付)、#1067(2.15に萬晩報転載)、1070、1071、1076、1077(2.11付。2.16に萬晩報転載)と書きつづってきましたが、この間、2月6日から23日にかけて、新聞・TV・通信社・週刊誌にわたるマスコミ7社から取材を受けました(注2)。
(注2)このうち、私のコラムの読者である防衛庁関係者から私を紹介されたのが4社、萬晩報を見たのが1社、インターネット上の検索で私のコラムを発見したのが2社だ。私のコラムの読者にマスコミ関係者は何名もいるが、彼らは自社の同僚等には情報を教えないとみえる。いずれにせよ、インターネット上の情報を、今でもマスコミ関係者が余り活用していないことが分かる。
(http://money4.2ch.net/test/read.cgi/seiji/1128414022/l50。3月9日アクセス)
きちんとフォローしているわけではないけれど、私から取材したことは、これまでのところ直接紙面等に反映されてはいないようです(注3)。
(注3)施設庁談合事件ではなく、海上自衛隊秘密漏洩事件で取材を受けた別の1社は記事にしてくれているのだが・・。「元防衛庁審議官の太田述正氏は「1998年ごろ、行政系システムの議論をしていた際、 行政系でさえウィンドウズではダメだという意見はあった。 同盟国でさえ互いにスパイしあう世界の現状からすれば、米国製OSを使うのは危険という正論だ」と振り返る。」(東京新聞2006年2月27日朝刊22面)
しかし、そんなことはともかく、下掲の各種報道から見て、事件の成り行きが私の思惑どおりの方向に進展している様子であることは心強い限りです。
(2)民民談合の普遍性
産経新聞が、「防衛施設庁東京防衛施設局が14日に予定している陸上自衛隊松本訓練場(長野県)土木改修工事の入札について「建設会社に天下った東京防衛施設局のOBらが、落札予定企業を決めている」との談合情報が・・東京防衛施設局や共同通信に寄せられた・・通報者は・・共同通信社に・・「OBが『今回はこの企業をチャンピオン(落札予定企業)にしましょう』と話し、9日に決まった。8000万円くらいの工事だ。事件があるのに信じられない」と話した。通報者は落札予定企業名も明かした。」と報じました(http://www.sankei.co.jp/news/060311/sha001.htm。3月11日アクセス)。
この通報が事実だとすると、いくら何でもこんな状況なのですから、施設庁OBが「官」として動けるわけがない以上、この報道は、民民談合情報であり、民民談合がちょっとやそっとでは根絶できないことを示しています。その一方でこの報道は、民民談合への批判が関係者の間でも強まっていることも示しています。
(3)防衛庁ぐるみ(内局の関与)
内局の関与については、朝日新聞が先鞭を切り、「施設庁次長や防衛庁契約本部長など幹部職で退職した元<内局>キャリア職員」が内局秘書課が、施設庁建設部建設企画課を通じて斡旋する形で、土木・建築会社に天下ったり、公益法人と兼務したりしている、と報じました(http://www.asahi.com/national/update/0307/TKY200603060341.html。3月7日アクセス)。
次いで東京新聞が、元施設庁幹部が、「防衛庁の内局から<官製談合で一旦決定した>受注配分を変えるように要請を受けたことがある」と語ったという検察情報と、別の元施設庁幹部が、「技術審議官のもとには政治家や政治家秘書、防衛庁内局などから特定の業者を推薦するような話があり、施設庁側に持ち込んでいた」と語ったとする独自取材情報を報じました(「http://www.tokyo-np.co.jp/00/sya/20060311/mng_____sya_____008.shtml。3月11日アクセス」。
私の呼びかけに答えてくれたわけでもないでしょうが、施設庁のOB達((4)も参照)がようやく重い口を開きつつあるようです。
(4)全中央官庁ぐるみ(会計検査院も)
毎日新聞は、本来談合に目を光らせなければならない会計検査院が、そのOBを施設庁に頼んで土木・建築会社に天下りさせていると、以下のように報じました。
「<取調中の>元技術審議官、生沢(いけざわ)守容疑者(57)が・・会計検査院の課長の天下り先をあっせんしていたことが分かった。当時<の>検査院の人事課長・・の要請を受けたもので、生沢容疑者らが大手総合建設会社(ゼネコン)の子会社に受け入れを要請し、実現させたという。施設庁関係者は「検査の懐柔が狙いだった」と証言して<いる。>」(http://www.mainichi-msn.co.jp/today/news/20060312k0000m040140000c.html。3月12日アクセス)
「98年10月15日の衆院決算行政監視委員会。旧防衛庁調達実施本部(調本)を巡る背任・汚職事件を受け、会計検査院の疋田周朗院長(当時)が答弁に立った。逮捕・起訴された上野憲一被告(66)が、検査院OBらの再就職を防衛関連企業にあっせんし、検査院側が旧調本の不正経理を把握しながら報告書に盛り込まなかった点を「なれ合い」と批判されたことを受け「批判を真摯(しんし)に受け止める。今後、公正性に疑念を持たれないように努めたい」と語った。 ところが、検査院は姿勢を変えていなかった。ある省庁の元首脳は「その後、検査院から『天下り先が見つからない』と相談を受け、公益法人への再就職をあっせんした」と証言。今回表面化した施設庁を使った天下りも、国会答弁から約4年後のことだった。」(http://www.mainichi-msn.co.jp/shakai/jiken/news/20060312k0000m040141000c.html。3月12日アクセス)
(5)国会議員の寄生
ついに、本丸にとりついた感があるのが、東京新聞の下掲の報道です。
「防衛施設庁の土木・建築工事をめぐる官製談合事件で、入札指名や施設庁担当者との面会など、建設業者からの要望を伝える国会議員の陳情メモが、施設庁建設部に大量に保管されていたことが明らかになった。陳情には施設庁幹部の特定企業への天下りを求めるものも多数あったという。施設庁では以前から天下りの受け入れ実績を基に違法な受注配分が行われており、東京地検特捜部は、議員側がそうした事情を知りながら陳情した可能性もあるとみて、詳しく調べているもようだ。・・関係者によると、業者の要望を伝える議員側からの陳情には、入札の指名に入りたいとする内容や施設庁幹部との面会申し込み、天下りの受け入れ希望が多数あったとされる。メモには陳情の日時、議員や秘書の名前と業者名、要望内容などが記され、建設部で大量に保管していた。面会には議員秘書が同行することもあり、メモには業者と秘書の名刺のコピーが添付されたものもあるという。関係者は「施設庁の幹部には国会議員の紹介がないとなかなか面会できない。天下りOBが有用なのは施設庁に先輩として出入りできるからだ」と証言している。一方、議員の陳情は施設庁に直接行われるだけでなく、防衛庁内局が取り次いで施設庁に伝えるケースもあったという。・・このため特捜部では、議員側の陳情に配分結果の変更を求めるものがなかったかどうかについても、慎重に調べを進めるものとみられる。」(http://www.tokyo-np.co.jp/00/sei/20060312/mng_____sei_____001.shtml。3月12日アクセス)
この話が大化けすれば、自民党政権がこの夏までに倒れる可能性も絶無ではない、と私は密かに思っているのですが、どうでしょうか。
(続く)