太田述正コラム#11422006.3.24

<アングロサクソン論をめぐって(その1)>

<読者の問題提起>

太田述正 先生

いつもメルマガを配信してくださってありがとうございます。

興味深い選りすぐりのニュースと鋭い分析を、日本語で、また無料で配信していただいていることに大変感謝しております。

 掲示板で何度かお邪魔いたしました小坂亜矢子(ハンドルネーム:ayako)と申します。

今回はどのコラムについてとも申し上げられないので、メールでお便りさせていただきました。

 フランスの暴動について書いておられましたが、フランス人はイギリスやアメリカのようなアングロサクソンのやり方(=グローバルスタンダード)に抵抗しています。けれどもフランス人には「それではどうしたらいいのか?」という対案が全くありません。模索しているところだと思います。

 フランスがイギリスなどのやり方に抵抗しているのは確かだと思うのですが、イギリスについては私自身まだわからないことが多いです。太田さんのご紹介されていたマクファーレンの『イギリス個人主義の起源』も読んでみました。イギリスでは伝統的に、日本では「恥知らず」といわれてもおかしくないような価値観がまかり通っていたようにしか思えませんでした。

 (マクファーレンは次のような仮説を証明しました。「少なくとも十三世紀以降のイングランドにおいて、大多数の庶民は、親族関係および社会生活において自由奔放な個人主義者であり、地理的および社会的に著しく流動的で、経済的には「合理的」であり、市場志向で欲ばりで、自己中心的であった(第6章の最後の段落、268ページ)」)

 結局、フランスとイギリスの一番大きな違いは、「王が国民を略奪したかどうか」だったように思いました。イギリスには略奪がありませんでした。

 しかしイギリス人は、国外で激しく略奪を行いました。アイルランドは一番の被害者ですよね?

 いろいろあちこちに書かれたものを読んだ結果、現在のところ、アングロサクソンの価値観は以下のようなものではないかと思うにいたりました。

 「アングロサクソンのやり方は徹底的で冷静で手段を選ばない金儲け主義であり、暴利をむさぼることを恥としない価値観である。合法ならばなんでもやってよい。他人がどうなろうと自分に都合のいいように法を変えることに躊躇しない。違法であってもごまかしきれるか罰則が軽いならやってよい」

 アングロサクソンはこのような価値観を持っているといってよいのかどうか、まだはっきりとした自信が持てませんがあまりにも酷いような気がしますけれどももしも以上のような価値観であるなら、ここから何を学べばよいのでしょうか。太田さんがおっしゃるのは、アングロサクソンのやり方をよく理解して、対策を立てよということでしょうか。

 野球の件でもわかりましたが、日本では、チームワークが大切にされ、チームの各人が最大限に生かされるようお互いに気を配ります。この日本のやり方を破壊して、「各人がただ徹底的にベストを尽くせばそれでよいのだ(=個人主義)」と太田さんがおっしゃりたいのではないと思うのですが

 感想というより質問になってしまっているので、掲示板に投稿すればよかったのかもしれません。

もしも必要でしたらご遠慮なく掲示板に転載なさってください。

 長々と申し訳ございませんでした。

 これからもメルマガを楽しみにしております。

 なにとぞお身体ご自愛ください。

<私の答え>

 メールありがとうございます。

 お言葉に甘えて、コラムで取り上げさせていただくことにしました。

 最初に、ぼやきです。

 私のアングロサクソン論については、少数ながら、強い関心を持つ読者がおられることはうれしい限りです。

 しかし、私のコラムのもう一つの柱である軍事論については、その相変わらずの反響の少なさには頭を抱えています。

 読者の島田さんのご厚意でブログを始めてから、コラムごとの人気がリアルタイムで分かるようになったのですが、軍事に関わる話でも、防衛施設庁の不祥事のような社会部マターには、萬晩報効果もあってアクセスが殺到しても、在日米軍再編のような政治部マターを載せると、てきめんにアクセスが急減するのですから・・。

 今週、ブログへのアクセスが300を超えたのは、22日と24日だけですが、これはWBCを取り上げた「色もの」のコラムのおかげです。WBCでの日本の優勝は、社会部マターであってかつ愉快な話であり、その上(にっくき(?))韓国がからんでいるから皆さんの人気があるのでしょう。

 アングロサクソン論(文明論)だって、それほど人気があるわけではありませんが、コメントは結構これまでも寄せられています。軍事論(安全保障論)の人気が、一層ないのは仕方ないとしても、コメントぐらいいただかないと、コラムを続ける意欲が萎えてしまいます。防衛庁関係者の皆さん、軍事オタクの皆さん、社会的貢献のつもりでコメントを!

 お待たせしました、そろそろ本題に入りましょう。