太田述正コラム#11632006.4.4

<米日欧 北朝鮮の体制変革へ揃い踏み(その1)>

1 始めに

 ついに米国、日本、欧州(EU)は、北朝鮮の体制変革に向けて、足並みをそろえたと言ってよさそうです。

 この結果、中共と韓国の北朝鮮核施設空爆反対と対北朝鮮経済支援のおかげで核廃棄の決断を一寸延ばしにしてくることができた北朝鮮は恐惶を来していますが、韓国もまた、その対北朝鮮姿勢の抜本的見直しを余儀なくされています。

 

2 米日欧 北朝鮮の体制変革へ揃い踏み

(1) 米国

 昨年の9月に、六カ国協議が再開された頃から、米国は北朝鮮の違法活動を止めさせる措置を実行に移し始めました。

 すなわち米国は、ケシの栽培/ヘロイン「輸出」や覚醒剤メタフェタミン(Methamphetamineの製造・「輸出」、米100ドル札の偽造・行使やタバコの偽造・「輸出」、禁制品のサイの角・象牙の密輸、金やダイヤモンドの密輸、禁制兵器の販売、そしてマネーロンダリング、を止めさせるための措置を執り始めたのです。

 その皮切りが、9月15日に公表された、米国による、マカオの銀行(Banco Delta Asia)に対する制裁措置の発動です。北朝鮮のために、偽造ドル札の受け入れを含むマネーロンダリングを行ってきた、というのです。(http://72.14.203.104/search?q=cache:M0Mq8TofMQIJ:www.ustreas.gov/press/releases/js2720.htm+Banco+Delta+Asia&hl=ja&ct=clnk&cd=6。4月4日アクセス)

 次いで米国は、大量破壊兵器の拡散に関わったとして、北朝鮮の8つの商社に対して制裁措置をの発動しました。

 翌10月には、赴任した新駐韓米国大使が「北朝鮮は犯罪国家(criminal regime)だ。・・外国の通貨偽造を行った国としてはナチスドイツに続いて二つ目だ。」と発言し、韓国に衝撃を与えます。

 11月には、北朝鮮が、米国がこれら制裁措置を解除しない限り、六カ国協議には復帰しないという声明を出しました。

 そして、今年の1月になると、米国は、一時的に北朝鮮宥和政策をとったものの、ついに本格的に北朝鮮の体制変革に乗り出した、という評論が出現した(注1)のです。

 

 (注1)1月18日付のアジアタイムス評論は、それまで、偽造ドル札と覚醒剤の主要搬入先の一つでしかも北朝鮮製が日本のメタフェタミン「市場」の4割方を占めているというのに、日本がほとんど何の対策もとってこなかったことや、北朝鮮製の偽造ドル札が1980年代後半に出現し、1990年代に入ってからは北朝鮮製であることが判明していたにもかかわらず、その額が国際通貨市場に混乱を起こすような規模ではないこともあって、米国自身ずっと見て見ぬふりをしてきたことを指摘し、にもかかわらず、米国は違法行為を止めさせる政策を打ち出したのであるからして、米国の政策転換は明らかだ、とした。

 もっとも米国は、まだこの時点では、北朝鮮の違法活動を止めさせるための諸措置は、単に長期にわたって行われてきた捜査活動が実を結んだ時点でとられた、というだけのことであって、核問題をめぐる六カ国協議とは何の関わりもないことだ、という姿勢を崩していませんでした。

(以上、特に断っていない限りhttp://news.ft.com/cms/s/6d37c530-70c8-11da-89d3-0000779e2340.html20051220日アクセス)、http://www.atimes.com/atimes/Korea/HA18Dg01.html(1月18日アクセス)、http://english.chosun.com/w21data/html/news/200601/200601180017.html(1月19日アクセス)、及びhttp://www.nytimes.com/2006/01/29/international/asia/29korea.html?pagewanted=print(1月29日アクセス)による。)

(続く)