太田述正コラム#11722006.4.9

<今年中にも対イラン攻撃か(続々)>

1 対イラン攻撃の準備を進める米国

 この前(コラム#1085、1086で)本件を取り上げてからというもの、米国による対イラン攻撃論はエスカレートするばかりです。

2月20日付東京新聞電子版は、サウディの有力紙アルワタンに、ブッシュ政権が米軍によるイラン国内での極秘の情報収集活動を活発化させるとともに核施設などへの空爆計画の策定に本腰を入れ始めた、という記事が掲載された、と報じました(http://www.tokyo-np.co.jp/00/kok/20060220/eve_____kok_____001.shtml。2月21日アクセス)。

 次いで、27日付で米フォーリン・ポリシー誌の電子版に掲載された論考http://www.foreignpolicy.com/story/cms.php?story_id=3416&fpsrc=ealert060328。3月30日アクセス)で筆者のシリンシオン(Joseph Cirincioneは、ブッシュ政権関係者から聞いた話等から、米国による対イラク攻撃は必至である、と記しました。

 そして国連安保理事会は3月29日、米国等の慫慂に基づき、イランに対し、30日の期限を切ってウラン濃縮を中止するように促す議長声明を発出しました(http://www.slate.com/id/2139516/。4月8日アクセス)。

 4月に入ると、4月3日付けのクリスチャンサイエンスモニター電子版で、英デイリーテレグラフ紙の記事を引用する形で、英国政府が、米国による対イラン攻撃は必至であると見て、攻撃が決行された後の善後策を話し合う部内会議を3日に行う、という報道(http://www.csmonitor.com/2006/0403/dailyUpdate.html。4月4日アクセス)がなされました。

 更に4月9日付の讀賣新聞電子版は、8日付の米ニューヨーカー誌に、米政府関係者の話として、ブッシュ政権が米軍によるイラン国内での極秘の情報収集活動を活発化させるとともに核施設などへの空爆計画の策定に本腰を入れ始めた、というハーシュ(Seymour Hersh)記者(コラム#772)による記事を掲載した、と報じました(http://www.yomiuri.co.jp/world/news/20060408it16.htm。4月9日アクセス)。

2 攻撃を受けて立つ気のイラン

 イランは、3月31日から4月初頭にかけて、世界の石油輸出の三分の一が通過するペルシャ湾入り口のホルムズ海峡で、「偉大なる預言者(Great Prophet)」(注1)と銘打った海軍演習を実施し、艦上から発射し秒速100メートルで魚雷のように水中を進んで敵の艦船を攻撃するミサイル(仮にソナー(音響探知機)で探知できても回避するのは困難!)(http://www.yomiuri.co.jp/world/news/20060403i311.htm。4月9日アクセス)、固定翼・回転翼航空機から発射できる「超水平線」ミサイル、やはりレーダーに映らず走行しながら正確にミサイル射撃ができる「超近代飛行ボート」等を誇示しました。

 (注1)「高貴なる預言者(Noble Prophet)」とする報道(http://www.guardian.co.uk/Columnists/Column/0,,1743778,00.html。3月31日アクセス)もある。いずれにせよ、イスラム教の預言者(ムハンマド?)はこわもてだ。

 

これは、攻撃されたらイランは、長距離ミサイルによる中東の米軍基地等への反撃(コラム#1086)のほか、ホルムズ海峡で米軍等の艦船にこのような反撃も行うから石油市場は大混乱に陥るぞ、と言っているのです。

 また、米ワシントンポスト紙は、米情報筋の話として、攻撃されたらイランは、世界中でテロ攻撃を行うだろう(注2)、と報じました。

(以上、特に断っていない限りhttp://www.slate.com/id/2139516/(4月8日アクセス)による。)

 (注2)他方、米国側は、イラン内の少数民族が蜂起することを期待している(http://www.guardian.co.uk/Columnists/Column/0,,1743778,00.html。3月31日アクセス)(コラム#7721086)。